日本のむさいオヤジ(2)
昔、毎週金曜日にデザイン専門学校の講師をしていた事がありました。現役デザイナーの立場から生の教材としての面白さはあった筈、と思っています。その学校からは大勢の優秀なデザイナーを輩出しました。
その話はいつかするとして、学校の往復で電車を使っていたときの話です。東京の山手線はいつもお祭り状態で人がわさわさしています。切符を買うときなどは結構血走っている人がいて危険なのです。
ある日切符を買おうと列に並んで自分の番が来たときの事です。横から30前くらいの女性が割り込んできました。「あの〜並んでいるんですけど」と言うと、「あっ、ご免なさい」と言って素直に引き下がったのです。
その後、その人と方向が同じだったのですが、構内を歩いている時に、その女性が連れの人に向かって「むさいオヤジがいてね」と憎々しく言っているのを聞きました。
誰の事か最初は分からなかったのですが、話しの内容から自分の事のようです。えっ、俺はむさいオヤジなのか(?)軽いショックを受けました。
それからしばらく経って、また山手線の切符自販機前です。今度は50歳くらいの女性でした。強引に割り込んで来たので、「ちょっとちょっと」と言いながら肩に触れたのです。
その人は、しぶしぶ引き下がりながら大きな声で「何も叩かなくってもいいじゃない」と言うではありませんか。いえいえ私は軽く触れただけです。
捨て台詞を吐きながらその女性は去っていったのですが、これは下手すると痴漢にでもされかねないなあと、ゾッとしたのです。成る程、女性には逆らえないのだ。その時悟りました。
女房にはとっくに逆らわなくなっていましたが、世の女性、特にそれまで接する事のなかった熟年女性に対する免疫がなかった事を思い知らされたのです。
そうか、世のオヤジが妙にいじけたり、ツッパったりするのは、これが原因かもしれない。何となく自分もカテゴリー的に属するであろう哀愁のオヤジ族に親近感を覚えざるを得なかったのです。
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