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2008年6月25日 (水)

経営者の資質(3)

その後、多少の紆余曲折を経て、その見た事もないシルエットの車は完成しました。精巧に出来たモックアップモデルを前に、本田宗一郎は嬉しそうに目を細め「俺の車だ」と言ったのが印象に残っています。

発売された車は当初月間3千台の販売目標を大きく超えて、1万数千台を長きに渡って記録し続けました。ニューコンセプトが若者を中心に受け入れられたのです。

その車の名は「ホンダ シティ」マッドネスのムカデダンスTVコマーシャルも強力にバックアップ、当時一世を風靡したのを記憶している人も多いのではないでしょうか。Photo

その年のモーターショーの会場です。出展されたシティの傍に食い入るように見つめるイタリア人がいました。不世出の天才デザイナー、ジョルジョ ジウジアーロです。

彼の最高傑作の一つである”いすゞ117クーペ”に触発された事もあり、美大卒業後いすゞに入社した私ですが、ホンダの先進的で活発な社風に惹かれ、転職して数年、足下にも及ばないと思っていたジウジアーロをして「自分もこういう車を作りたかった」と言わしめるとは、117を江ノ島で初めて見て圧倒されていた、いすゞ入社直前の私に想像出来る筈もなかったのです。

それにしても本田宗一郎の慧眼には驚かざるを得ません。当時のスタイリングの常識を覆す、高く短いシルエットの車を見て、最初は戸惑いながらも、結局はジウジアーロ同様、先進性を見抜いたのです。

さすが一代でホンダを世界一流企業にした人です。高等小学校しか出ていませんが、正に70歳を過ぎても衰えぬ感性の人でした。


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