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2008年11月29日 (土)

逆インセンティブ(?)

今日は最近不景気の元凶のように言われている円高について少し述べてみたいと思います。円高になると輸出をしている商品の円による取り分が減るというのが円高不況の論拠だと思うのですが、それは現実とは少し違うようです。

例を自動車にとりますと、例えば輸出の為の経費込みで原価100万円の車をアメリカに輸出したとして、レートが1ドル100円なら1万ドルプラス販売店経費と利益を乗せて末端ユーザーに売る事になります。日本側の取り分は1万ドルです。円が急激に上がって80円になったとしましょう。その場合在庫車を1台売るたびに20万円の損害となります。

これは確かに由々しき問題です。ただ、輸出の場合船で搬送しますから、一回に送る量には限界があります。従って、次の船便分は値上げして送る事が出来るのです。20万円分をドルで上乗せすれば1万2千5百ドルの原価となります。
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販売店がそのまま販売価格に乗せれば2千5百ドル高い商品となって価格競争力が落ち、販売台数が減って、ここでも問題が発生するかも知れません。日本側から見ると円高による差損は20%なのに、それを買う側のアメリカサイドに転換すれば25%もアップする訳です。やはり円高で良い事はなさそうです。

そう考えるのが普通の商品ですが、日本が輸出している消費財や資本財は消耗品や原材料ではありません。日本でしか出来ないような付加価値がたっぷり盛り込まれた商品なのです。従って実態は少し違うのです。さらに価格が25%アップしても20%販売台数が減れば元の木網ですが、販売努力もありますから、そこまで落ちる事は考え難いのです。

例え落ちたとしても台当たりの利益という点ではしっかり確保出来ている訳で、ケースにもよりますが1万ドルのままで売って、台あたり丸々20万円の減益になるよりは、はるかにましと言えます。1万ドルのままの場合、例え販売が25%アップして円高前の売り上げが確保出来たとしても、薄利多売はとどのつまりは部品メーカーへの圧力になるのです。良い事は何もありません。

一方アメリカはと言うと、もう随分前からアメリカ製の車を売る場合、希望の販売価格では売り難い状態が続いていました。そこでビッグスリーはインセンティブという形で実質大幅値引きを余儀なくされていたのです。それでも販売不振は解消されませんでした。見かねたトヨタは、驚いた事に自社製品の値上げをしてまで競争相手の援護射撃をしたのです。日本的考え方で、敵に塩を送ると言うやつです。

これが自由主義経済の市場原理に照らして正しいかどうかはともかく、言わば逆インセンティブですから、消費者の利益には大いに反します。アメリカはなぜか問題にせず黙認しました。反対に日本車が販売不振で大幅値引きして売ると、ダンピング(不当値下げ)として提訴される恐れがあります。

横道にそれましたが、要するに、逆インセンティブをものともしないくらい、日本商品は魅力があるので、多少の円高は問題にならないのです。そういう訳で今回の売れ行き不振は円高に原因がある訳ではありません。金融危機からの景気後退が原因なのです。信用収縮と資金不足で、自動車ローンが組めない状態に陥っています。アメリカ人の殆どは車をローンで買いますから、ローンが組めなければ必然的に販売台数は落ち込むのです。

この金融問題が、ある程度目処がつくまで、アメリカでは車が売れそうもありません。従って輸出だけでなく、為替レートが直接関係ない現地生産分まで生産調整をしなければならないというかなり深刻な事態なのです。

このように平時の円高であれば、輸出の問題は軽微で、輸入の利益は計り知れない訳ですから、大いに歓迎されるべきです。国益に直結し、国民はそのメリットを色々な場面で享受出来るという訳です。
メディアや評論家は、いい加減に貿易と円高に関する間違った情報を垂れ流すのはやめなければなりません。
(PHOTOはGMの人気ブランド ハマー 重厚長大の代表格 格好はいいのですが・・・)


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