クルマは電気製品か(?)
昨日のブログの続きになりますが、どんどんエレクトロニクス化して、さらに電気で動くようになった自動車はいずれ電機メーカーでも作れるようになると、ある経済系評論家が言っていました。
確かに電子系部品が増え、エネルギーは燃料電池、レシプロエンジンの代わりにモーターで駆動するようになれば、もはや電気製品ではないかという疑いを抱く気持ちも分からないではありません。実際に、昔では考えられない分野まで電気屋さんのテリトリーは広がっているのです。
最近の車で言えば、サスペンション(懸架装置)やABS(アンチロックブレーキシステム)、4輪駆動車の駆動力の配分もコンピューター制御になっていますし、キャブレターなんて燃料噴射になったとうの昔から電子制御されています。随所に死角をなくす為のカメラが設置され、接近物検知の為には赤外線センサーやレーダー、魚群探知機でお馴染みのソナーまで備わるのです。
インテリアにはエアコン、メーター、カーナビ、AV機器がところ狭しとレイアウトされ、さらに照明、シートやウインドウの動力、果てはスライドドアやルーフの開閉に至るまで電動と来れば電気屋さんの活躍する場面が非常に多いのは確かなのです。
それらを一台分3000メーターにも及ぶワイヤーハーネス(電線)で複雑に絡み合わせて集中的に制御するなんて事は我々車屋には全く手に負えません。コンセプトカー一台作るのも電気屋さんとの共同作業にならざるを得ないのです。
だからと言って電気屋さんに車が作れるかと言えば、それはあまりにも車の事を知らなさすぎます。全ての電気系デバイス(装置)はコンピューターで制御されますが、コンピューターはプログラミングしなければ用をなしません。
そのプログラムは長年の自動車屋の経験の積み重ねと膨大なデータ分析によるノウハウがものを言うのです。さらにブラックボックス化されたコンピューターの中味は、優秀な技術者と莫大な時間をかけたとしても、解析するのは極めて困難です。従って、アナログによる経験値を持たない電気屋さんにはプログラミングは出来ません。
さらに衝突安全性と剛性、軽量化の矛盾する要素を高い次元でバランスさせたノウハウの塊のようなボディは車屋にしか設計出来ない事は明らかです。電気屋さんにとってカメラのボディを作る事は大して難しい事ではなかったようですが、車だけはそうは問屋が卸さないのです。
従って、車作りの経験の乏しい発展途上国の新興メーカーも同じ条件ですが、簡単に高性能、高品質のクルマを作る事など出来る訳がありません。同じ理由でビッグスリーでさえハイブリッドカー一つ満足に作れないのですから。
日本はそういう意味でも非常に優位なポジションにいます。世界一のエレクトロニクス技術と世界一の開発力を持った自動車がコラボレート(共同)して更に先へ先へと進んでいけば、当分の間、どこも追いついて来られそうもないというのが実情なのです。
(PHOTOは矢崎操業のワイヤーハーネス展示用サンプル)
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