日本再生のシナリオ(2)
その原因の一つは企業のモラルハザードにあります。配当と役員報酬、内部留保を増やして労働分配率と仕入れを極力抑えるやり方は、優秀であるにも拘らず文句を言わない日本人には通用するのでしょうが、決して賢明な方法とは言えません。角を貯めて牛を殺す事になりかねないのです。消費が伸びない大きな原因の一つと言えます。
もっと大きな問題は、政府、日銀が経済音痴で景気浮揚策が打てない事です。有り余る資金を持ちながら有効に使う手だてを知らないのです。挙げ句の果ては国内に環流しない大量の資金は海外に向かい、世界のバブルを手助けしてしまったのです。超低金利と相まって今回の金融バブル崩壊の遠因は日本にあると言われています。
勿論国際的な経済の枠組みの中で日本だけ勝手な真似は出来ません。バランスを見ながらの国際協調は重要です。持てる国が持てない国を助けるというような事も、道義的意味合いだけではなく経済の循環という視点からも必要な事なのです。しかしながら日本がやってきた事は米国偏重政策でした。アメリカの顔色を見ながらの外交政策は国民やアジアを向いていたとは言い難いのです。
ジャイアンの前に牙を抜かれたスネ夫君は従わざるを得なかったのかも知れません。恐らく政治家に対するプレッシャーは、我々一般人の想像を絶するものがあるのでしょう。しかし、もう言い訳は沢山です。戦後60余年、いい加減に被占領、植民地支配から独立してもいいのではないでしょうか。
軍事的背景はないかもしれませんが、世界に大きく貢献出来る経済力と、技術力をカードに、何処の国とだって対等な交渉をする事は出来る筈です。これはあくまでも政治家、官僚の意識の問題なのです。官民一体となったバックアップ体制が出来ていればジャイアンだって迂闊な事は出来ないのではないでしょうか。
話は横道にそれましたが、今回のような経済危機に対しては、その理不尽な外圧を極力排除して、ひたすら内需を拡大するしかありません。その具体策として最近巷間では、小泉竹中組とは異にする財政出動、思い切ったばらまきが有効であると言われています。莫大な貯蓄、経済力を担保した紙幣増刷はアメリカのようにインフレを誘発する心配がないからです。それは商品の供給力とリンクするのですが、幸いな事にインフレにならないだけの魅力的な商品を生み出す力が国内にはあります。
すなわち国内だけでも価値の供給力を十二分に有しているので、海外に依存する必要がないという訳です。だからと言って原材料始め消費財を海外から買う事に問題はありません。貿易収支が例え赤字でも借金して物を買い続ける事が可能な事はアメリカの例で明らかです。技術力、製品力のバックボーンがある国は信用力で莫大な借金だって可能なのです。
莫大な財政、貿易赤字を抱えていても、アメリカは今回のように強欲になり過ぎなければ、もっと長きに渡って豊かさを謳歌し続けられた筈です。勿論基軸通貨がドルであるという事が、その一大根拠ですが、それよりも大きな要素は世界一の軍事力を背景とした信用力なのです。
その信用力が莫大な借金を可能にして来た事は確かな事だと思われます。従って世界が貸せるだけの資金を持っている間は安泰と言えるのです。(続く)
(PHOTOは日本のアナリスト第一人者、故佐々木秀信氏の著書 残念ながら氏は昨年の10月に58歳の若さで急逝されました)
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