ナメリア国物語(1)
昔々銀河系の彼方に、とてもきれいな水球という星がありました。その殆どを水に覆われ、3割程度の地上には緑が生い茂り、人々は豊かな生活をしていたのです。その星には沢山の国がありましたが、長い間の戦の結果、ある大国が勝ち残りました。ナメリア合集国です。その国は資源にも恵まれ、水球の盟主として長い間君臨したのです。
ナメリア国民は余りに長期に渡って繁栄し、栄華を極めた為にお金に対する感覚が麻痺していました。借金をする事が当たり前になっていたナメリアは、気がつくと膨大な財政赤字を溜め込んでいたのです。その額は今の日本円に換算して6000兆円と言われています。貿易赤字も途方もない数字です。
更に宇宙カプセルローン事業にも失敗して400兆円くらいの不良債権を抱える事となります。返済能力が無い人に貸してしまった事が原因ですが、ローン等を証券化した金融ビジネスにも欠陥がありました。投資銀行が発行していたそれらの金融商品が世界的に売れなくなり、膨らませ過ぎていた肝心の金融ビジネスが破綻してしまったのです。
その結果、信用収縮が起こり、お金が回らなくなります。当然国民は借金して物を買っていましたから、耐久消費財の売れ行きがパタッと止まってしまったのです。元々業績が悪かった宇宙船産業がここに来て破綻寸前となり足を引っ張ります。悪い時には悪い事が重なるのです。これで世界中がひっくり返りました。特にナメリアに大量に輸出をしていたチョイナやチャバンは生産を大幅に減少させる事になります。短期契約社員は首を切られ連日マスコミを賑わす事になるのです。
そんな中、ナメリア国民の期待を一身に集めて新大頭領が誕生しました。カラク ノルマ氏です。ノルマ氏はチャレンジを旗印に勇躍ピンクハウスに乗り込みます。やる気満々だったのです。ところがナメリアの実態を部下から聞かされて真っ青になります。TDSという金融爆弾を抱えているらしいのです。その発行残高はこれ又途方も無い5000兆円だと言うのです。さすがにノルマさんもここまでひどいとは思ってもいませんでした。
自分の力の限界を就任一日で感じる事になります。しかし後へは引けません。何とか格好をつけなければならないのです。価値を下げた新札の発行とか色々考えましたが、どうもピンと来ません。世界からの反発も怖いのです。ある日一つの結論に達しました。やはりお金を溜め込んでいるチョイナとチャバンに頼るしかないというものです。それで駄目なら、腹をくくろう。。。
そこでクルリー外務長官を密命を帯びた特使として差し向ける事にします。彼女だったらうまくやってくれるに違いないという確信がありました。昔彼女の夫はチャバンをいじめた経験があります。脅かせばいくらでもお金を出すチョロい国と聞いていたので、彼女も二つ返事で引き受けたのです。
一方のチョイナは反抗的な態度を示したり、かと思うとナメリアの金融機関に投資したりと、したたかに動いて扱いづらいのは分かっていました。でも自分や自分の党に資金提供をする大事なパトロンでもあります。話せば分かってもらえるかもしれません。いずれにせよこの二つの国からある程度の数字を叩き出さないとナメリアの未来はないのです。不退転の決意で交渉に臨もうとするクルリーさんの目がキラッと光ったのをノルマさんは見逃しませんでした。(続く)(この記事はあくまでもフィクションで事実に基づいて書かれたものではありません。)
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