備えあれば憂い無し
最近、日経新聞などでは、日本経済に関する従来の誤った概念、例えば外需依存や赤字財政に対しては、健全な記事が出始め少しほっとしているのですが、TVは相変わらず殆どが旧態依然とした、昔大学で習ったような経済理論で埋め尽くされているように思います。
更にエコノミストや有名コメンテーターが出ているにも関わらず、IMFやOECDの出す作為的、あるいは悪意に満ちた数字に対しては盲目的に信じ込んでいるようです。よっぽど無能なのか、強制されているのか、買収されているのか、事実は分かりませんが、彼らの発言を信頼して聞いている一般視聴者にとっては、大変迷惑な話なのです。
最近の放送では、日曜日のTBSサンデーモーニングで、日本の鉱工業生産指数の低下が世界一ひどいというのがありました。外需依存の弊害だと、鬼の首でも取ったかのようです。ご丁寧に他国との比較グラフまで見せられると、成る程そうかもしれないと思わせるものがあります。確かに去年の10月あたりから急降下している事は間違いありません。
そこで思い出すのが、ホンダの福井社長の話です。ホンダは2007年の時点で、近い将来の大規模リセッション(景気後退)を予測していたのです。その時点で在庫調整に入ります。ところが車は売れに売れているのです。一時的に調整の解除をせざるを得ませんでした。しかし、その間ホンダは金融界も含めた市場動向を監視する為の特別チームを作り、常に目を光らせていたのです。
2008年の10月、リーマンショックが起きた時、ホンダは再度の在庫調整過程にあり、大過を免れました。その後もF1レースからの撤退始め矢継ぎ早に手を打って、予定通り一気に経済規模を縮小させる手に出ます。勿論その影で我々のような中小企業や諸々の関係者は泣く事になりますが、本体は赤字に陥る事なく、決算内容は無傷での存在感をアピールしたのです。
更にインサイトの成功で、着実に未来への歩を進めています。では、このホンダの生産率をグラフで見るとどうなるでしょうか。正に10月前から生産縮小し、その後も急カーブで落ちている事は疑いようがありません。ただここに来てインサイトを始めとする売れっ子達の増産に入っていますから4月5月とV字回復して行く事も確かなのです。
そこで注目すべきは生産率だけでなく、在庫率です。ホンダの場合は生産率に平行して在庫率も落ちているのです。鉱工業生産指数も、それだけで評価するのではなく、鉱工業在庫指数も同時に見ないと判断を誤る事になります。つまり在庫が減らないのでは生産率を高くする意味はないのです。
日本は本当は内需主導型で、内需さえ拡大すれば殆ど周りの嵐と関係なく優雅に過ごせた筈なのに、ミスリードするマスコミや、打つ手が遅く少ない(TOO LITTLE, TOO LATE)政府のお陰で、凄い買い控えや貯蓄志向がおこり、実際には大変な事になっています。
日本全体がホンダのような動きをしていたら、何も問題はなかったのかもしれません。残念ながら大半は、あまり意味のないGDPの成長率や鉱工業生産指数等の数字に踊らされ過ぎなのですが、大切なのは表面の数字ではないという事を理解するには、あまりにも欧米型資本主義の毒が回り過ぎているのでしょうか。
そんな状況下ではありますが、ここに来て4月の日本の鉱工業生産指数は2.9%のアップ、更に5月は3.1%のアップと、ようやく回復基調になる事が報告されています。麻生さんの追加経済対策も可決の運びとなれば、多少は効いて来るでしょうから、この先何もおこらなければ(?)、日本だけは順調に回復していくのではないでしょうか。もっと大胆で斬新な財政出動が望まれます。
ところで余談ですが、G20の席上、EUがオバマさんの要請する積極財政出動に前向きでなかったのはなぜか、と、いぶかしんだのですが、どうやら大きな政府であるEU諸国には出すべき財政出動の為の原資がないのです。高福祉社会は貯蓄率が低く、いざと言う時に間に合いません。英国では長期国債への応札割れが起きているそうです。どうりで財政出動に後ろ向きの訳です。
つくづく、この時の為に、という訳ではないのでしょうが、たまたま財政赤字が多い日本は、逆に言うと税徴収が少なく、個人や企業の貯蓄率が高いのです。従って、財政出動する為の原資はいやという程あるのですが、なぜかいつも消極的な政府にはがっかりだと思われた方、クリックをお願いします。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしてるのか?(最終回)(2024.08.30)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(5)(2024.08.29)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その4)(2024.08.26)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その3)(2024.02.07)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その2)(2024.01.29)
コメント