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2009年5月23日 (土)

コメントに対する回答

疾風三号さんコメント有り難うございます。お陰でいい勉強になります。当ブログは政治経済に特化したブログではありませんので、貴兄のような、専門的コメントが入る事は稀です。折角コメントしていただいたので、殆ど誰も見ないであろう過去のコメント欄へのコメントで返すのではなく、本文で紹介したいと思います。

私は経済の専門家ではありませんから、ちゃんとした経済談義が出来るかどうか甚だ心もとないのです。ただ、少しの常識力と、自動車業界には多少精通するところもありますので、それをベースにある程度の記事は書けるかもしれないと思って書いています。当然中には間違いや、思い込みで書いてしまう事もあるでしょうから、その辺は気軽に指摘していただきたいのです。

さて、5月18日の「先進国中一番経済成長率が悪い国の通貨が独歩高とは(?)」に対する
疾風三号さんのコメントです。(青色文字)

債務残高は問題なしとする見立てには全面的に同意します。
ですが、日本の長期金利がここまで低く抑えられている点については
少し私と違う認識なのかな、と感じますので、以下に私の見解を述べます。

我が国はデフレが15年続いているわけですが、
その事が長期金利を低くさせている最大の要因なのだと思うんですね。
デフレでは現金でそのまま保持するか、現金に次いで安全パイである
国債を買うのがベストな選択となりますので。
それによって長期金利が上がり難くなっているわけです。
※貨幣愛に囚われ、現金を大量に保持する人らにとって
財・サービス価格が低下する一方のデフレは楽園ですから

正におっしゃる通りだと思います。国債を買っている人、機関が誰かを見れば明らかです。
ただ、国と日銀が大半を購入している現状では民間の機関投資家による国債購入はせいぜい30%くらいですから、影響力はさほど大きくはなく、デフレ下でなくとも大幅な長期金利の上昇要因にはなり難いのではないでしょうか。いずれにしても世界一安心して買える国債である事には変わりありません。

逆にインフレターゲットによりデフレを脱却しインフレ基調が鮮明となるなら
国債から株式市場へとマネーが流れ込み、国債価格は下落し、
株高へと移行するわけです。それは極めて自然な流れなのですが。
インフレ期待=景気回復期待のため、株などのリスク資産にウェートが
傾き、国債の需要が減るために生じることになるわけです。

インフレターゲットを政策としてキチンと言える政治家がいないのが残念です。インフレが起きて国債の需要が減れば、日銀が従来の量的なルールを変えて買いオペに走ればいいと言うのは暴論でしょうか(?)

それと、ブログ主様は財政再建論者と違う立ち位置ですが
彼ら財政再建派はドーマー条件さえ無視しておりますね
本当の危機は名目成長率が利子率を下回る現在の状況なわけです。
私自身はリフレ派なのですが(まだまだ勉強段階ですが)、だからこそ
リフレ派はより大胆な積極財政+より大胆な金融緩和を求めているわけです。

全くの同感です。中途半端な国の施策によって、本来もっと成長している筈のDGPがいたずらに押さえられているのが問題です。

さて、本日もマスコミの主張と食い違い、円の独歩高が進行してますね。
このままでは、日本はアジアの普通の国になりかねないと愚考しております
我々の孫の世代には、おそらくそうなっているのではないでしょうか。

そこは私の方が楽観的なのですが、円高は必ずしもマイナス要因ではないと思っています。自国通貨高に弱い体質は発展途上の輸出依存国の特徴ですが、日本の場合、その段階はとっくに卒業しているのではないでしょうか。

その証拠にニクソンショックや1年で100円近く円高が進んだプラザ合意にも耐えて今日がある訳です。この時点で普通の国になっていても仕方がなかったところですが、アメリカの思惑は見事に外れ、さらに強力になった事実が物語るものは、言わずもがなです。

それに比べれば、リーマンショック以前の段階であれば、自動車始め、日本の誇る先端技術力は多少の円高はものともしなかった事は明らかではないでしょうか。内部留保の積み上がりが、それを証明していますが、逆に言えばその分の円高には十分耐えられた訳です。

現状で言っても、ざっと見積もって1ドル90円くらいなら、何ら問題があるとは思えません。1〜3月のマイナス成長はあくまでも在庫の調整と、アメリカ始め世界から需要が大幅に消えた事による輸出減少が原因です。勿論耐久消費財だけでなく、輸出の60%も占める資本財輸出はこういう不況には初期段階で弱いので、その辺りの影響ももろに出ていると思われます。

しかしながら資本財の需要は回復期には真っ先に戻りますから、日本の景気回復は世界で一番早いのではないでしょうか。専門家筋の間でも、今年の第二四半期はプラスに転じるとの見方が大勢です。政府が再追加の財政出動を早い時期に組めば、さらに全く違った局面が見えて来る筈です。「やらないんだろうなあ」

いずれにしても政府頼みのところは否定し難いのですが、Too Little, Too Late なのが頭痛のタネだと思われた方、クリックをお願いします。


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コメント

お返事どうもです。
ブログ主様のコメントがちょっと長いので
どこから手を付けて良いかアレですが。
とりあえず、目に付いた部分だけとなりますが、ご容赦を。

さて、インタゲについては、かつて自民の中でも日銀法を見直して
その際に導入させるべき、との論もありましたが、今の状況では
不可能に近いですね。私自身は自民には愛想がつきかけますが、
そう言った話が出るだけまだまだ自民も捨てたものではないな、と。
※民主政権だけは勘弁してほしいですが。

また、日銀の買いオペ拡大に云々の件に関しては、暴論ではないです。
※但し、デフレ下だからこそ許される行為ですが。
バーナンキの背理法では、もし日銀が国債を無尽蔵に買い入れても
インフレにならないと仮定するなら、国は幾らでも国債を発行でき、
日銀も無尽蔵に国債を買い入れられ、物価上昇や金利を気にせず国債を
発行でき、財政支出を全て国債発行で賄え、無税国家が成立する。
しかし現実にそれはありえず、買い取りを続ければ何時か必ずインフレになる。
と言った主張がありまして、今日銀がやるべき事は、買いオペを拡大し
流動性供給策を通じて期待インフレを高める事であり、デフレ脱却を
実現する事だと思うんですね。何時か必ずインフレになるわけですから。
故にデフレ下での買いオペ拡大は、本来あるべき姿です。
ですから、もっともっと大胆且つ激しい金融緩和を望んでいるわけです。
そうしますと、前回のコメントで述べましたように、必然的に国債から株へ
マネーが流れ込みますが、その際にどの程度まで長期金利が上がるかは
私には推測できません。ですが、確実に他の先進国の水準に近づきますね。
因みにヘリマネでも良いと思います。一頃話題になりました政府紙幣とかですね。
尚、非常に興味深い発言を日銀の審議委員である須田美矢子氏がされてて
ヘリマネをやれば、場合によってはハイパーインフレになる、と極論を述べてて
でもこれ、裏返せば確実にデフレ脱却する、と効果を認めているわけですよね。

※と言っても、銀行券ルール・日銀の独立性を盾に篭城作戦をとる彼らを
説得するのは容易ではありません。ほとほと困り果てております。。。
実は円の独歩高となっているのはここが一番のポイントなわけですが
ロシア・ニュージーランド・スイスでは既に自国通貨の売り介入をしており
米国・英国・ECBは量的緩和を実施し、事実上の通貨切り下げ競争になっており
翻って我が国は金融政策を半ば放棄した状態であるが故の円高なんですね
勿論、日銀も3月に買い入れを発表しておりましたが、飯田泰之先生が指摘
(米英リフレ政策発動と日本の現状)したように、なんちゃって金融緩和にすぎず、
各国が流動性供給策にひた走る中、日銀が各国と足並みを揃えないが故の
円の独歩高である、と認識して良いと思います。
ですから、日本のGDPがドイツよりも下回っても、米英の倍以上の落ち込みでも
為替レートを決定付ける交換比率に何らの影響もなく、円だけが上がることに。
早い話が、お金を刷ったか刷らないかの違いなんです。
先の大恐慌の際もそうでしたが、各国は自国通貨を切り下げて、被害拡大を
阻止しており、主要国で最悪の落ち込みとなったのは、ここが原因なんですね

また、円高のマイナス要因に関してなのですが、今回の日本経済の落ち込みは
Y=C+G+I+(X-M)の式で、まずXが急減した事によりIが落ち込み
XとIの落ち込みにより雇用調整が発生し、必然的にCも減り、
ドイツよりも落ち込む事になりました。
ここでGを増やしてみてもXの半減とI(設備投資)とC(消費)の落ち込みが激しく
よほどの財政政策の拡大をしなければYを増やすのは不可能に近いわけですね
また、その際には金融政策の支援が必須となりますが、ポリシーミックス政策を
通じ、必然的に通貨(円)が減価され、Xの落ち込みも下支えられると思います。
企業サイドのインタビュー記事がありますので貼ります。

http://s04.megalodon.jp/2009-0523-1419-53/osaka.yomiuri.co.jp/eco_news/20090522ke01.htm?from=sub
日本のニュースサイトはすぐにリンク切れとなりますので、保存しておきました。
インタビューの中で片山社長が述べておりますが、最早異常な円高で
やっていけなくなってしまったのですね。こうなると先述のように設備投資が減り
国内需要に悪影響が出てきてしまうわけです。
シャープに限らず、日産もタイへと生産拠点を移し、ソニーも国内3拠点を閉鎖し
東芝も国内生産から撤退し、IHIは国産から韓国産へ切り替える動きを見せており
今後もこの流れは変わらないのではないかと思います。むしろ拡大しそうです。
こうした企業サイドの動きは確実に設備投資を減らし、失業増を齎し、所得を引下げ
今回の激しいGDPの落ち込みに繋がるわけです。

あと、日本の先端技術に関してなのですが、ブログ主様は別ですが
よくある安い中国産には敵うわけがない、故に日本人の工賃を減らして云々ですが、
これは間違いなんですよね。
(そももそ彼らは国際競争力を絶対優位でしか見てない時点でおかしいわけですが)
生産コストは、賃金コスト・資本コスト・原材料コストから成り立ちますが
片山社長も仰るように、驚異的な技術を我々は持っていて、技術革新によって
生産性を高め、単位生産コストを引下げる事で、少々の”差”なら埋めてこれましたが、
最早これ以上は不可能だと結論付けています。(苦笑)
この異常な円高ではどうにもならないんですよねぇ。。。

また、広義のマンデルフレミング効果もありまして、仮に財政支出の拡大で補うにしても
円高がより進む事で効果が相殺されてしまいます。
ここで留意すべきは、通貨高が問題ないのであれば広義のMF効果は存在しないわけです
言い換えれば、自国通貨高は現在の状況では足枷になる事を立証します。
※勿論、リカードの中立命題もありますが、政府もマスコミも全く認識していないようです。

因みに、内閣府のマクロ計量モデルによりますと、円安は確実にGDPの
押し上げ効果があることが確認され、今は少しでもXの減少を食い止め
付随する設備投資と個人消費の減少を食い止める事が肝要であり
同時にポリシーミックス政策により、内需を下支えし、また、甘っちょろい金融政策をとる
日銀のスタンスを徹底的に批判し、日銀の甘さが結果的に齎した円高を是正し、
以って国民の負託に応えるべきではないでしょうか。

長くなりましたが、最後に世界の名目GDPの伸びと、私がよく通うサイトを。
http://www.shinseibank.com/trust_info/jstock/imgs/03_imgs_07_01.gif
80年代のアジア諸国を知る私には、本当によく成長したと実感します。
韓国なんかも、それはそれは貧しくて・・・
時代は本当に変わったものです。

http://d.hatena.ne.jp/Yasuyuki-Iida/
http://d.hatena.ne.jp/tanakahidetomi/

もし宜しければ、リフレ派に加担してください(苦笑)
ジワジワ増えてきておりますが、まだまだ弱小勢力です(苦笑)
周囲へは簡潔に説明するために<財源が無ければお金を刷ればいい>
と説明してます。大抵の人はこれで納得してくれますね。
<財源が無ければお金を刷れ>を合言葉に、今後も布教活動に勤しみます
その際にですね、インフレが止まらなくなるって反論もあるんですが
その時には<故にインフレターゲットでガチガチに嵌め込む>と答えると
これまた大抵の人は納得してくれますね。

投稿: 疾風三号 | 2009年5月23日 (土) 17時12分

疾風3号さん、丁寧な解説有り難うございました。基本的なスタンスは私と大きく違わないと思うのですが、何しろこちらは経済知識が不足しております。ついていくのが大変なのです。ちょっと勉強する時間を下さい。おっしゃっている事が、ちゃんと理解出来た時点でまた取り上げさせていただきます。いずれにしても民主党だけは願い下げですね。

投稿: 田中 徹 | 2009年5月23日 (土) 20時47分

そうですね、結構通ずる部分があるかと思いますので、比較的あっさりと首肯していただけるのではないかな、と思ってます。
MF効果についてはこちらに解説が載ってます
http://keizaijouhou.com/2006/03/post_2058.html
他にもいくつかネット上に辞書があります。
私もよく利用してます。

経済ってあまり難しく考える必要も無いと思うんですね。
要はどうしたら国民所得が増えるか、ですから。
そうするとY(国民所得)=C(消費)+G(政府支出)+I(設備投資)+(X(輸出)-M(輸入))の式を眺め
現在より円安になってX(輸出)が増えれば国民所得が増える、ついでに企業も現時点より設備投資が増える、とか、その程度で良いのだと思います。
※所謂財政出動のみでは、円高となり、効果が相殺されてしまいます。

最初は私もご迷惑かな?とも思いましたが
なるべく1人でも多くの人に現状(惨状ですが)を理解してもらい、なるべく普通の国がしている普通の経済政策を望む声を大きくしたいと感じまして。

私から以上です。
ではでは。

投稿: 疾風三号 | 2009年5月23日 (土) 21時29分

あ、言い忘れてしまいました。
経済に興味の無い周囲の方へは
<財源が無いならお金を刷ればいい>
これは非常に効果的ですので、是非とも広めてください。

投稿: 疾風三号 | 2009年5月23日 (土) 21時33分

本当にマスコミのせいで、日本の真の姿が一般国民に見えていない事が最大の問題です。いくらお金(政府紙幣も含めて)を刷れば良いと言っても、理解してもらうのは並大抵の事ではありません。
当ブログでも、少しでも間違った経済概念に気付いてもらう事が出来ればと思って書いています。
今後とも宜しくお願いします。

投稿: 田中 徹 | 2009年5月23日 (土) 22時05分

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