インホイールモーター電気自動車のポテンシャル
プリウスが既に記録的な18万台のバックオーダーを抱え、月5万台(輸出を併せて)の量産体制でさえ、とても追いつかないと言われています。政府のエコひいき政策もあり電気自動車やハイブリッドカー始めエコカーが、やたらもてはやされていますが、過大な評価を受けたり、間違った解釈をされたり、黎明期に特有の混乱があるようです。
一番馬鹿げているのはクリーンディーゼル神話を信じている事です。欧州一流メーカーや有名ジャーナリストが推している事もあり、一般のユーザーには判断し難いかも知れません。排ガスの毒性が圧倒的だという点だけでも十分失格なのですが・・・
電気自動車の場合、インホイールモーターが万能であるような論調が一部にあります。理論的には確かにポテンシャルがあるのですが、実態を少し分析してみたいと思います。
メリット
1)ダイレクト駆動の為、各車輪ごと駆動力のコントロールにより積極的な
姿勢コントロールなどが可能で横移動、その場旋回などのコントロールも可能です。
2)駆動系が室内に影響を与えない為レイアウトの可能性は圧倒的で、スタイリングの自由度は高い、反面スタイリングに機能的必然性を与え難いという点で、デザイナーにとっては、やり難いテーマとも言えます。
デメリット
1)現時点では防水・防塵が完全ではありません。将来的には解決出来るとしても、時間とコストがかかりそうです。さらにシステムが複雑で、モーターの数だけインバーターが必要となります。各モーターを
関連付けるECUには、かなり高度な電子技術が要求されるのではないでしょうか。
2)モーターにトラブルあった場合の制御に課題があります。(4輪にモーターを 取り付けた場合、トラブルを起すモーターの組み合わせ+加速・減速・左右旋回 +路面状況などの組み合わせ膨大)。
3)ブレーキを内側に納めるため、現状は19inc〜20incのホイールに対応しなければならず、軽量の車の割に、バネ下重量の増加が問題です。
4)大電力供給の為、従来にない配線の耐久性も検証する必要があります。
その他電気自動車についての問題点
300V〜400Vの電圧を使うことになるので取り扱いには
細心の注意が必要です。感電したら命が危なく、またショートさせたら車1台の
全焼は免れません。
リチウムイオンバッテリーの充放電はBMS(バッテリーマネージメントシステム) で管理しないと急激に機能低下のリスクがあります。(1千万円分のリチウムイオンバッテリー を半年で駄目にした例がある)
ユニットさえあれば、走らせることは自体は難しい事ではありませんが、商品として高いレベルでの完成車を想定すると、補機類は大変重荷になります。ブレーキのサーボにバキュームポンプ・エアコンコンプレッサー・パワステ用モーター、ヒーコンのモーターなどでバッテリーを消費、特に内燃機関からの熱が期待出来ないヒーターの熱源が問題です。三菱i MiEVは1充電で160kmと言っていますが、真冬の北海道でヒーター全開だと 半分の走行距離になってしまうのです。
以上の事から電気自動車と言えども未だ発展途上であり、レイアウト、駆動方法が千差万別で単純な評価は難しいのですが、何より電池のコストが問題である事は言うまでもありません。
これまで散々時間をかけて改良を重ねてきたこの問題が、一朝一夕に解決出来るとも思えず、電池のみに頼る電気自動車より、当分はエンジン併用のハイブリッド車の優勢が続くのではないでしょうか。
という事は、ハイブリッド技術を持たない車メーカーは、今後、存続が限りなく厳しくなるかもしれないと思われた方、クリックをお願いします。
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コメント
電気自動車にも解決すべき問題点が多いのも事実であると、私も考えます、
1、バッテリの重量、寿命、エネルギー密度、安全性
2、高効率モータについては、永久磁石を使用する同期モータが採用される傾向があるようですが、ネオジム磁石のキュリー点が低く、熱減磁が80度程度で始まってしまう点が心配です、インホイル型の場合はディスクブレーキ等の高熱を発する部品の近くに配置することになり、モータの冷却が必要ですが同時に塵埃から守るために密閉せざるを得ず、なんらかの解決が必要です。
今、ネオジム磁石ばかりがもてはやされていますが、本来ならば、サマリウム・コバルト磁石を使用した同期モータを採用したいところです、サマリウム・コバルト磁石は、キュリー点が高く、熱減磁の問題についてはほとんど気にすることは無いと思われます、ただしサマリウムの入手が困難であり、量産はできないと思われます。
誘導モータではだめでしょうか、構造が簡単で、熱の問題も無く、コストも低廉です、エネルギー効率では同期モータに少し劣りますが、車はトータルバランスですので、検討の余地ありと思われます。
3、最近思うことに、どうせ新しい車を考えるのであれば、全く新しいコンセプトで考えてみてはどうかと思うようになりました、4輪独立180度回転可能なホイールにしてはどうでしょうか、その場での超信地旋回も可能な車となります、真横へ移動することも可能となれば、縦列駐車も簡単になります。
3、インホイルモータとする場合の問題として、大きなトルクが出せるかという問題があります、モーター径はホイルやアクスルの関係で制限されますので、あまり大口径のモータは使用できません、減速ギアを使用することになると思われます。
高トルクということであれば、油圧モータはどうでしょうか、エネルギー効率の観点からは全くダメと思われますが、低速からゆっくりと大トルクで回すのには油圧モータは適しています、その油圧はどうするのかというとモータで発生させておく必要がありますが、圧力を蓄える構造としておくことにより、油圧発生用のモータは1個だけ用意し、最大効率で動作させておくことも可能です、油圧モータについては、重量はある程度ありますが、比較的小型にすることも可能と思われます、問題は、高速で回転させることができるか否かです、
あまり現実性はありませんが、最近ふと考えたことです
投稿: T.N | 2011年4月16日 (土) 13時43分