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2009年7月 2日 (木)

日本の足を引っ張る民間エコノミスト

某証券会社のチーフエコノミストが書いた記事を見て仰天しました。大分意識が変わって来ていると思っていただけに、未だ民間にこういう人がいるのかと思うと驚いてしまいます。内容は日本の財政赤字についてですが、よく言われていた事の蒸し返しで特に新味はありません。

面白かったのは日本政府を株式会社に例えている事です。以下抜粋です。
政府を「株式会社日本」と考えた場合、赤字になればそれなりのコスト削減をしなくてはならないはずだ。民間企業ならリストラ、賃金カット、不採算部門の整理など、赤字を解消するためにあらゆる努力を行う。政府としても、公務員の手当や政治家の数を見直したり、不要となった特殊法人の整理など、やるべきことは山ほどある。

 官の合理化をやったうえで、消費税引き上げなどの負担を国民にお願いするならいいのだが、まだやるべきことをやっていない。ここにメスを入れ、まずコストのかからない政府にしなくてはならない。お金をかけずに打てる対策もたくさんあるはずだ。

まず政府を株式会社に例える事に、そもそも無理があります。政府は産業ではありません。お金を稼ぐ事は出来ないのです。又、その必要もありません。国民から税金を徴収する、あるいは国債などで資金を徴用する事によって、国の運営が出来るのです。

従って、必要があるかどうかはともかくとして、政府のバランスシートを作るとすれば、常に大赤字です。どちらにしても国民のお金を使う一方ですから黒字になり様がないし、溜め込んで褒められる性質のものでもありません。有効に沢山使うのが正しい政府と言えます。

それが何か不都合でもあるのでしょうか(?)日本の税収は他の先進国に比べるとかなり少なめです。取るべき所からしっかり取っていないという問題はありますが、とにかくGDP比10%前後というのは少ないのです。足りない分は増税か国債発行しかありません。

なぜ財政赤字に対する勘違いがあるのかと言うと、税収を収入と考えるからではないでしょうか。国民にとっては支出以外の何ものでもありません。そうです。税金も国債も国民が額に汗して働いて得た収入から出しているのです。

致命的に違うのは税金は戻って来ませんが、国債は償還期が来れば戻って来る事です。しかも少ないかもしれませんが金利までつきます。この国債分が税金で取られると思ったらゾッとするのではないでしょうか。国民の貯蓄はあっという間に底をつくかもしれません。何より、いざという時にはどうにもならなくなるのです。

消費税を上げる前にやるべき事はあるだろうというのは、基本的に賛成です。天下りを何度も繰り返し、一人で何億円も溜め込む高級官僚の話は、事実だとすれば確かに無駄と言えます。消費に向かわないお金を、乗数効果を生まない、建設的でない仕事をする事によって溜め込むのは経済効率が悪いからです。

そこは改善するとしても、公務員に支払うお金を節約する意味はあまりないのではないでしょうか。結局日本国内で廻すお金はトータルが同じなので、誰が使っても経済効果は同じだからです。そんな節約方向で考えるより、無駄を有効な支出、例えば福祉の充実とか、に変える方がお金は活きるのではないでしょうか。

さらに、国内に眠る莫大な金融資産の内、800兆円近くもあると言われている世界一の現金貯蓄を動かせば、大変な経済効果を産みます。それが国債の発行というかたちであっても、国内で資金移動する限りは問題があるとは思えません。

それとこのエコノミストのもう一つの大きな誤りは、
日本はそもそも巨額の財政赤字を抱えているため財政面からの景気対策が一番効きにくい上に、経済の拡大を通して財政赤字を解消できる期待もしにくい——ということになる。景気対策の名の下に行われるさらなる財政赤字の拡大は自殺行為であり、このままでは身動きが取れなくなってしまうという危機感を持たざるを得ない。

なぜ財政面からの景気対策が効き難いのか、具体的説明がないのでよく分かりませんが、日本には巨大なデフレギャップが存在している事を忘れているように見えます。デフレギャップがある以上、財政出動や量的緩和以外にどういう処方箋があるのか聞いてみたいものです。財政出動は間違いなく効くのです。問題は、定額給付金のように少な過ぎては効かない事です。

更に酷いのは
このまま財政赤字が増え続けるということは、国民の代理人たる政府が、国民から預かったお金をきちんと管理できないということでもある。そういう国が発行する債券には買い手が付きにくいのが普通だから、債券価格は下がる(金利は上がる)だろう。

 これまで日本は、金利が低いから財政赤字が大きくてもなんとかなっていたが、金利が上がればスパイラル的に財政赤字も大きくなる。財政赤字の巨大さが海外投資家に嫌われて為替も円安になり、経済にダメージがあるので株価も安くなる。一般国民にとっては、購買力低下と資産価値低下のダブルパンチを受けることになり、生活水準の引き下げを余儀なくされる。そんなシナリオが予想される。

と言うのですが、全く意味が分かりません。日本の長期国債の金利は常に安定して世界一低い1%台をキープしています。なぜなら世界一の金持ち国故に、凄く安全で人気があるからです。どこかの大国みたいに4%近くまで上がって、買い手がつかないから中央銀行が買うという悲惨な事になった試しがないのです。もっとも日本の場合は、これだけの技術力、供給力があってのデフレです。買い手がつかなければ日銀が買っても問題があるとは思えません。

さらに、世界一の財政赤字がある割には円高基調は底堅く、輸出産業が四苦八苦しているのではなかったのでしょうか(?)円安になれば輸出産業が潤って、経済にダメージがあるどころか、息を吹き返す筈なのでは。。。

こういう全く逆の事を言うのは、何か意図があるのか、本当に分かっていないのか計りかねるのですが、与謝野さんも、ちょっとこういう考え方に近いのかもしれないので、とっても不安だ、と思われた方クリックをお願いします。

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