経済は筋書きのあるドラマか(後編)
ところで日本のバブルを作ったのは日銀かもしれません。1986年頃から89年にかけて、諸銀行に対し土地への投機的な投資を指導したという説がありますが、もしこれが本当だったらバブルは人為的に作られた事になります。異常な地価高騰にも、金融引き締め気配すら見せる事はなかったのではないでしょうか。
さらに決して万全とは言えない事後処理を見ても、あえて不況になるように誘導したと考えるのが合理的かも知れません。バブルがはじけるように一気に金融引き締めという高金利政策をとり、不況下でも緩めませんでした。ゼロ金利にしたのは暫く経ってからです。既にその頃バランスシート不況に喘ぐ企業はゼロ金利等の金融緩和の恩恵に浴する事はなかったのです。
この結果、大手銀行他が破格の条件で外資に買収される事になります。さらに90年頃から日米構造協議が始まり、米は露骨に内政干渉をするようになりました。10年間で430兆円もの公共事業を押し付けるのも妙な話です。新たな価値を創造しない、主に箱ものへ巨額の財政出動をさせるのは、景気を良くする為とはとても思えません。さらに悪名高い大店法改正等があり、地方が疲弊する遠因となります。
毎年10月に来る年次改革要望書というのも、宮沢内閣の時に飲まされました。内容は郵政・司法制度・医療制度改革、金融自由化、商法改正、労働者派遣法改正といったもので、日本はじわじわと沈没を始めるのです。目的は恐らく富の収奪と需要の喪失ではないでしょうか。いくら魅力的な商品やサービスがあり、その為の生産力があっても需要がなければデフレになります。
最も従順に米に対してポチぶりを発揮したのが小泉政権である事は周知の事実となりつつありますが、この時代に一気に日本の活力が失われたのです。いつの間にか米国債の購入が膨らみ、それによって必要以上に外貨準備高が増えました。あの郵政民営化騒ぎも米の指示であった事は間違いないでしょう。
なお、2009年版要望書の概要は、
NTTの弱体化による、米資本の参入
米国の薬品や医療機器の早期の承認
現年金制度の破壊と確定拠出年金の制度(労働者の自己責任による年金制度)の推進
国境を越えるM&A促進の法律制度改革
外国人弁護士が活動しやすい司法制度改革
留農薬基準を緩める農産物の輸入規制の緩和
共済の破壊による米保険会社の参入斡旋
日本郵政公社改革による市場開放
通関手続きの標準化と免税輸入限度額の引き上げ、
となっているそうです。これらを要望と言うより実質命令している訳ですが、この厚かましさは一体なんなんでしょうか。物騒で明らかに国益に反する指示を黙って飲んでいるようでは、とても独立国とは言えません。やはり51番目の州、と言うより植民地なのでしょうか。
日本の衰退とデフレは、外圧とそれに加担する日本の政治家、官僚の手、あるいは日本国内のマスコミや一部企業に見られる非日的な力によって作られたと言っても過言ではありません。本来ならば右肩上がりは今も続いていて、恐らくは世界トップクラスの富裕国として栄華の極みを謳歌していても不思議ではないのに、一人あたりGDPは87〜93年のトップから14位にまで落ち、意識の点でも、正しいとは言えない歴史観、謂れなき挫折感を押し付けられる現実には忸怩たるものがあります。
このままで行けば、米の衰退とリンクして、そう遠くない将来に日本は国として消滅する事になりかねないのではないでしょうか。中国の高官が口を滑らせたのか確信犯的に言ったのか「20年もすれば日本などという国は地球上に存在しない」という言葉は、俄然真実味を帯びて来るのです。当時は笑っていましたがG2が既定路線の今となっては根拠なく言った言葉とは思えません。
民主党がとっている政策を見ても、亀井さん一人頑張っているようには見えますが、最終的には米に逆らえる筈もなく、かと言って提唱している東アジア経済圏構想も中身は東アジアに媚と魂を売る日本売り以外の何ものでもないのです。
この日米中の奇妙な政治的シンクロを見た時、太平洋戦争に敗れた事による歴史の必然と言ってしまえばそれまでですが、我々が意識を持ってちゃんと政治を見て来なかった事のツケとして、既に脱出不能な陥穽に嵌っているのではと危機感を覚えます。失われた10年を境に確かに何かが変わったのです。
成熟した筈の資本主義国家がいとも簡単に大不況に陥り、それを繰り返すというのは理解し難いものがあったのですが、それが意図されたものであるとするならばストーリーの筋が通って来ます。今回のアメリカの金融危機も何らかの形で予定されたものと考えた時に、情報の欠片を繋ぎ合わせたジグソーパズルは、一体何を浮かび上がらせるのでしょうか。
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