ニュー・シネマ・パラダイス
先日「私が選ぶ映画ベストテン」を当ブログで公開したところ、カミさんから「よく恥ずかしげもなく、あんな素人っぽい評価が出来たわね」と言われてしまいました。浅はかなキャラがバレバレになるというのです。
いやあ、そこまで考えていなかったので、一瞬ドキッとしたのですが、そう言えばそうかも知れません。折角オブラートに包んでいたキャラを見透かされてしまうリスクを冒す必要は全くないのです。
さらにニュー・シネマ・パラダイスも見ていないのに映画を語るのはまずいんじゃないの、と言われました。その通りかも知れません。迂闊でした。私もそこまで評価の高い映画を見る事に躊躇はないので、機会(WOWWOW等の放送)があったら是非見ようと思っていたのです。
よくしたもので、10月2日の金曜日にNHKハイビジョンで完全版が放送されました。早速ポテト(?)を持って、カウチに陣取り、見る気満々で大作の鑑賞に臨んだ事は言うまでもありません。
小説においてはビジュアルの世界は読む側で勝手なイメージ作りができますが、映画の世界は情報は全て与えられるという制約があります。その分感情移入は難しいのです。しかし感情移入出来ない映画に価値はありません。特に恋愛ものはそれが全てではないでしょうか。
そういう意味では、この映画は残念ながら私の感性から少し外れるのです。ディテールに微妙な、少しづつのずれがあり、それが時間と共に広がって行きます。泣ける筈のキスシーン集大成ラストでは、いかに映画とは言え、好きでもない人とキスするのは苦痛だろうなあ、となってしまったのです。
こんな事を書くと、何て無粋な奴、と思われるかも知れませんが、感性は理屈ではありません。そう感じちゃったらお終いです。そう感じさせない為の演出が必要なのですが、どうしても私のツボには入って来なかったのです。
以下に違和感を羅列します。
トト役を幼年期、青年期、壮年期と、それぞれ個性的な3人が演じます。私にはどうしても同一人物には見えなかったのです。少なくとも青年期と壮年期の差は特殊メイクの方がよかったのではないでしょうか。
あの薄のろだったボッチャが議員になって彼女の夫になっているところはどうしても納得出来ません。議員はどこの国でもその程度かもしれないので100歩譲ったとしても、決して受け身的な性格とは言えない彼女が、いくら激しく求愛されたとしてもボッチャを選ぶ事は100%あり得ないのではないでしょうか。
そもそも未開国じゃあるまいし、トトの実家が引っ越していない事を思えば、二人とも相手を探す手だてが全くなかったというのは言い訳にしか聞こえません。すれ違いのシーンもベタで陳腐です。
肝の部分である30年ぶりの帰省という実感が伝わってきません。30年のブランクは浦島太郎的衝撃を伴う筈なのですが伝わってこなかったのです。アルフレードの死に対しても他人事のようです。肝心要の彼女と再会のシーンもなぜかときめきません。あれだけ愛し合っていて、あっさり諦めるのも変です。
監督自身が、大向こう受けする映画を作ろうという大それた気持ちはなかったのではないでしょうか。粋な小品くらいのつもりだったのかも知れません。そう思ってみればなかなか良く出来た映画です。
こういうものの見方は私の職業から来るのかも知れません。デザイナーは作品がユーザーに評価されなければ存在価値はないのです。そういう点でデザインも映画も基本は同じではないでしょうか。脚本やコンセプトを具現化する骨格も大事ですが、細部の煮詰めにこそ命が宿ります。
さらに純粋芸術と大きく違うところは自分の価値感を押し付られないところです。何億円の価値があると言われても、ちっとも欲しくない絵画があるように、映画も見る側が主体ですから、良い悪いは個人的評価で差し支えないのです。評論家や多くの人が評価していても、私はそう思わない、と言える勇気を持つ事が大事なのではないでしょうか。
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コメント
この映画はなんといってもエンニオ モリコーネの音楽の旋律美でしょう。この映画が感動を与えたのは美しい音楽も大いに寄与したのではないでしょうか。
先日タイのクラシックギターの第一人者 Ekachai Jealakulのコンサートがありこの映画の「Love Theme」を演奏してました。大いに満足しました。
投稿: けいしくん | 2009年10月 6日 (火) 01時04分
エンニオ モリコーネの曲でしたか。道理で雰囲気出ていました。
彼の曲は昔よく聴きました。荒野の用心棒もそうでしたよね。懐かしいです。
投稿: 田中 徹 | 2009年10月 7日 (水) 00時33分