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2009年11月25日 (水)

果たして円安誘導がデフレ解決の手段になり得るのだろうか(?)

月曜のTVタックルを見ていてひっくり返りました。K女史が日本経済再生論をぶちあげているのですが、その中で何と、円を110円くらいに誘導し固定すべきだと言うのです。そうすれば輸出産業が潤ってデフレが改善されると思っているようです。

昨年末、米発の金融危機が勃発した時に、経団連の御手洗会長が言った「各国に呼びかけて円安誘導しよう」というコメントに近いものがあります。日本経済の中心にいる人達のセリフとは思えないのです。日本のポジショニングが分かっているのでしょうか。

K女史も、財政出動の為の国債を日銀に買わせればよいと言ったところまでは良かったのですが、それ以上あまり深く突っ込んで行かない方がいいのかも知れません。どんどんボロが出るようです。そもそも日銀の国債買入額は決して少なくはありません。先進国ではアメリカに次いでかなりな額を既に買い入れているのです。

政府の言いなりになって無制限に国債の買入をするのは、中央銀行の独立性という意味からも抵抗が強いのは当然です。従って日銀券発行残高と同量を国債購入の目安とするという日銀ルールも分からないでもありません。平時ではそれでいいのではないでしょうか。

世界同時不況の今は平時とは言い難いので、そのルールを少し変えてもらう必要はあるかも知れません。その場合は日銀の立場を立てるだけの大義名分が必要なのですが、その点で「日銀は国債買い取れ派」に説得力があるとは言い難いのです。政府が闇雲に国債を買い取れと日銀に命令するのは民主主義国家として、いかにも乱暴です。

そういう点で非常事態を演出し易い政府紙幣の発行が有効なのですが、推進派の高橋教授の不自然すぎる逮捕劇と共に、いつの間にかたち消えになりました。一体何があったのでしょうか。

話は円安誘導説に戻って、世界第二の経済大国で、商品競争力が世界一の国がそんなあこぎな事をしては品位に関わります。第一周りが許す筈がありません。中国でさえアメリカ企業との摩擦が顕在化して来ています。為替レートは競争の原理に任せるのが平和でフェアなのです。もっとも円安で輸出が増えれば、その分円高に振れ戻されます。

さらに、輸出ばかりに目が行っているようですが、日本の場合は輸出マイナス輸入の純輸出は長年に渡って1%台を推移していているに過ぎません。従って、国全体で見れば為替変動の影響は殆ど受けないのです。輸出依存度が高い中国や韓国のように為替変動に敏感になる必要などないのです。その証拠に1ドル360円から80円まで上がっても何か大きな問題があったでしょうか。むしろマクロ的に見て国益の方が大きかったような気がしますが。。。

ところで円安誘導の意味は、円高圧力がかかった時に日銀がドル買いの為替介入をするという事なのですが、これ以上ドルを増やすリスクは考えないのでしょうか。増えたドルは遊ばせておく訳にも行かないので高金利の米国債購入に向かいます。それはそれでアメリカは喜ぶかも知れませんが、いたずらに外貨準備高を増やす事は、米のデフォルトの危険性が叫ばれている今、限りなくリスキーなのです。

さらに、当ブログで前にも言っていますが、貿易はゼロサムゲームです。日本だけが儲かる事は許されません。今回の危機で貿易の矛盾や危険性を学んだ訳ですから、内需拡大方向に物事を考えるのが筋ではないでしょうか。その場合、有利なのは間違いなく円高です。いえ、輸出を切り捨てろと言っている訳ではありません。

そもそも今回の不況は円高で日本の商品が売れなくなった事が原因ではないのです。米中心に世界の需要が20〜30%も消えた事が問題なのです。従って例え円安になっても、逆インセンティブ(プレミア付き)をつけて売っていたような魅力ある耐久消費財の輸出量が伸びるという事は考え難いのではないでしょうか。

さらに日本の輸出の70%以上を占める資本財や生産材は、為替レートの影響は受け難いのです。相手は買わないと生産が出来ない訳ですから無理してでも買わざるを得ません。その輸出相手の生産量が落ちてしまったのでは、いくら輸出品が優秀でもどうしようもないのです。

結果的に経済効果の薄い円安より、相対的国力アップとなる円高を重視すべきだと思うのですが、円高の場合、輸入品の物価は確実に下がります。給料が上がらない今は消費者にとって、それは大きな救いではないでしょうか。いたずらな円安は低賃金下での物価高を招き、それこそ日本は沈没してしまいます。

人の揚げ足取り、あら探しはあまり感心した事ではありませんが、政府に提言したり、本当に日本の為を思うなら経済の初歩的な事くらいは勉強して発言すべきだと思われた方、クリックをお願いします。

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コメント

こんにちは,EV三男です。


>果たして円安誘導がデフレ解決の手段になり得るのだろうか(?)

同感です。
外国為替の円高、円安問題、自国通貨のインフレ、デフレ問題は、
貿易、経済政策の実施結果であるところのアンバランスの顕在化にすぎません。
つまり、円高、円安の結果を見て、インフレ、デフレの結果を見て、
買い支えや、金融政策で強引に操作することは、
一時的な、緊急避難的な対処療法であり、その根本原因に対する問題解消ではないようです。
本末転倒にならないよう注意深く見守りたいですね。

現在、殊にポスト自民党の変革期のこの20年間は、戦後60年間の多くの利権を有して来た体制派と利権を持たない純粋の改革派の駆け引きがまだまだ続くものと予想されます。


>そういう点で非常事態を演出し易い政府紙幣の発行が有効なのですが、推進派の高橋教授の不自然すぎる逮捕劇と共に、いつの間にかたち消えになりました。一体何があったのでしょうか。

全く同感です。
今のような動乱期には、何があっても不思議でないのですね。
しかしながら、国債の発行も、政府紙幣の発行も、くどいようですが一時的な、緊急避難的な療法であり、その原因の根源も直さなくてはなりません。本末転倒にならないよう確り見守りたいです。
国債の発行も、政府紙幣の発行も、それらが旧体制の維持の為でなく、疲弊している国民の為に緊急避難的に使用されることを期待します。

民主党および与党には、事業仕分け等の情報公開を利用して、国民の前で腐敗政治の根源を、諸悪の根元を絶って貰いたいですね。


>さらに、当ブログで前にも言っていますが、貿易はゼロサムゲームです。日本だけが儲かる事は許されません。今回の危機で貿易の矛盾や危険性を学んだ訳ですから、内需拡大方向に物事を考えるのが筋ではないでしょうか。その場合、有利なのは間違いなく円高です。いえ、輸出を切り捨てろと言っている訳ではありません。

これも同感ですね。
貿易で稼ごうということは、いろいろな矛盾や危険性を孕んでいます。
貿易はエコの為の国際協力の場でありますので、
覇権争いの場と考えるのは、国際的に、今後は許されないのではないでしょう。
内需拡大方向に物事を考えるのが筋ですね。

その為には、現在疲弊しきっている国民の為に貧富の差を解消し、誰でも最低限の必需品を買えるようにしなければと思います。利権のない社会保障の拡充が必要ですね。

そもそも、エコな社会を考えた場合は、地産地消が、人間の健康面に於いても良いと言われてますので、
地域で生産された農産物や水産物だけでなく、その他の製品類も、その地域で生産し消費することが自然な姿ではないでしょうか。
貿易も、エコも経済一辺倒で考えるのではなく、人間の為、世界の為、地球の為と考えるのが本当のグローバリズムではないでしょうか。

総合的に考えると、私もそういう感じがいたします。


大変参考になる視点でした。
有り難うございます。

投稿: | 2009年11月26日 (木) 15時26分

>エコも経済一辺倒で考えるのではなく、人間の為、世界の為、地球の為と考えるのが本当のグローバリズムではないでしょうか。

全く同感です。そういう視点が日本人以外には欠けている様な気がしてなりません。もっとも日本人だって大した事はありませんが。。。

エゴを剥き出しにし始めた諸外国を見ると、今後が思いやられます。

投稿: 田中 徹 | 2009年11月27日 (金) 00時02分

貿易って本当にゼロサムゲームですか?
日本と韓国・台湾の貿易を考えるとそうは思えません。
日本が諸外国から輸入した原材料を加工して電子部品という付加価値の高いものにして韓国や台湾へ輸出。
韓国や台湾はその部品を液晶テレビ等の製品に組み立て更に付加価値を加えて日本へ輸出し、このような互いで付加価値を加える取引であればWin-Win足り得ると考えます。

投稿: ハテナ | 2010年4月20日 (火) 10時26分

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