望月の欠ける日
昨夜は中秋の名月、お天気がよかったので綺麗な明るい月が見えました。毎年この日には、「この世をば 我が世とぞ思う 望月の 欠けたることも なしと思えば」と詠んだ藤原道長の句を思い出します。栄華を極めた者だけにしか理解の出来ない歌のようです。
ところで栄華を極めると言えば、トヨタ自動車がブランドイメージを下げました。いえ、企業のブランドランキングの話ですが、世界8位の座から今年11位まで後退したそうです。例の捏造リコール騒動が大きく響いたのでしょう。ちなみに自動車部門ではトップの座をキープしています。
そうそう、トヨタと言えば先日気になるニュースを耳にしました。
トヨタ・日産、韓国製部品を本格調達へ (2010年9月18日14時33分 読売新聞)
トヨタ自動車、日産自動車など国内自動車大手が、割安な韓国製部品の 本格調達に乗り出すことが18日、分かった。
韓国・ソウルで今月29日から開かれる見本市に参加し、韓国の大手部品 メーカーと商談会を行う。国内自動車大手は円高で国際的な競争力が低下しており、 韓国から部品を輸入して製造コストを引き下げる。今後、部品の海外調達が 各社に広がれば、自動車メーカーを支えてきた国内の系列部品会社が打撃を 受ける恐れもある。
おいおいおい、それはないだろう。。。国内の部品メーカーは、これまでどれだけクライアントの無理を聞き、乾いた雑巾を絞るようにして協力してきたか、知らないとは言わせませんよ。
いつかは浮かぶ瀬もあると、クライアントを信じて頑張ってきた部品メーカーは泣いているのではないでしょうか。ちょっと理不尽な感じは拭えません。
そもそも日頃私が書いているような事を否定してしまうような言動もいただけないのです。日本メーカーは円高でも十分競争力があります。あの、リーマンショックのあおりで車が売れなかった2009年でさえ世界で2000万台近くを売り、シェア30%を占めたのです。
これは勿論世界ナンバーワンです。しかも質量ともにです。どこかの国のような、安売り、でトップの座についた訳ではないのです。高付加価値と高性能、先進性で勝ち取った座です。大いに誇っていいのです。
ここに至るには長い苦難の歴史があった事を忘れてはなりません。80年代の日米貿易摩擦や85年のプラザ合意による超円高から、やむなく海外進出しますが、その反動は日本国内の空洞化というリスクを生みます。部品メーカーの身であっても海外進出のリスクを取らざるを得ない状況は悲壮感さえ漂うのです。
さらに明らかな内政干渉と言える年次改革要望書や、トヨタリコール問題のように根も葉もない圧力をかけてくる、ずるいアメリカや、コピーを何とも思わない国が束になって日本に奸計を仕掛けます。
それでも日本の自動車メーカー船団の一角は崩せませんでした。それは長年かけて培ってきたノウハウや集大成された要素技術、膨大なデータに裏打ちされた電子部品のプログラミング等々、部品メーカーとコラボして擦り合わせに擦り合わせを重ねて築いてきた、世界に誇るシステムが完成しているからこそ、ではなかったのでしょうか。
そのシステムの一角を自ら崩すような今回の行為は、いかにコスト優先とは言え疑問を感じざるを得ません。しかも相手は長年、日本を快く思わない考え方から100%もの関税をかけて日本製品を遠ざけてきた国なのです。
長い付き合いの部品メーカーを粗末に扱い、品質や調達上の、あるいは忠誠度の点で、安定感に疑念を抱かざるを得ない相手と組むというのであれば、極めた栄華も陰ります。今宵燦然と輝く望月も、近い将来欠ける事になりかねないのです。
円高や世界的経済パラダイムの転換時に、世界一のメーカーを含む日本の自動車メーカーは、途上国との争いになる不毛なコスト競争を避け、より高付加価値産業へと移行するチャンスと捉えるべきではないでしょうか。
その為には気心の知れた部品メーカーとのより綿密な「擦り合わせ」が不可欠なのですが、途上国や日本を必ずしも快く思わない国、企業との連携で、それが上手くいく事は長い目で見てもあり得ないだろう。と思われた方、クリックをお願いします。
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コメント
やっぱり韓国製部品を選択・・・民主党はこの件に関してコメントあるのかしら。(無関係なのかなー)。C国>K国>日本の順で大事にしている予感がする。流石なる民主党,莫迦な振りして祖国産業を有利に誘導でなければ良いのですがね・・・N社は既に外国経営センスのメーカーなのでしょうがない感じがしますが,T社もエンジンは既に海外製を搭載しているらしき様子。頑張って日本車
投稿: 心配性君 | 2010年9月23日 (木) 04時07分