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2010年9月30日 (木)

「他人のふんどしで相撲を取る」事の限界

60年代のアメリカには、世界が羨む産業、生産力があり、スーパーパワーの名を欲しいままにしていました。自動車なども大きい、豪華、ハイテク(電動デバイス)と全てが揃い、貧弱な日本車と比べ、憧れたものです。

そのアメリカに翳りが見えたのは、70年代の石油ショック以降です。何とあの立派だった車が一回り小さくなり、FMVSS(FEDERAL MOTOR VEHICLE SAFETY STANDARD)のお陰で無様なバンパーが付くという、我々自動車屋から見れば信じられないような事になって行くのです。

裏返せば敵失で日本車にチャンスが訪れました。その後の集中豪雨的輸出は一気に日本車を世界の檜舞台に立たせます。欧米との直接対決なくして日本車の発展はあり得なかったのです。

特に欧州車の研究は各社とも盛んでした。ホンダの研究所にも生唾もののスポーツカーや、きらめく高級車が参考車両として常に準備されます。色々理由をつけては借り出し、楽しませてもらったものです。

話が横道にそれましたが、アメリカは製造業が斜陽化すると日本などから資本を呼び込みマイナスを補います。さらに製造業を卒業するかのように情報産業で華麗に復活を果たすという訳です。それが一巡すれば、今度は金融で巻き返すといった具合で、常に世界をリードする手ごまを持っていました。

強欲になりすぎた事で、へまさえしなければ、美味い汁を吸い続けられたのではないでしょうか。なぜなら基軸通貨ドルの価値は、日本が担保し、世界経済が発展する限り下がる事は考えられないからです。他人のふんどし(資金)で稼ぐくらい楽な商売はありません。

それが、なぜか突然自滅的にドルの価値は下がる事になります。相対的に円が上がるのは必然で、技術力、供給力を背景に円は独歩高を強いられるのです。これは世界からの強い要望とも言えるもので、日銀が為替介入したくらいでは大きな流れは変えようがありません。

一方、リーマンショックからいち早く立ち直ったかに見える中国は、無制限な元の供給で元安を維持していますが、力技にも見えかねないドルペッグは、為替が変動性である以上、いかにも無理があるのではないでしょうか。

ところが元は米からの圧力にもめげず、ドルペッグをやめる気配はありません。ここはしたたかな中国政府ですから、あの手この手で逃げ回ります。よっぽど輸出品の競争力に自信がないのでしょう。

さらに国内に目を転じれば、供給過剰の元が株と不動産に向かい、明らかなバブルを形成しています。かろうじて破裂を免れているのは政府による統制経済と、それを支える中国内に展開する外資系内需産業の供給力によるものが大きいのではないでしょうか。

その証拠にインフレ率は決して高くはありません。日米欧の合弁会社の内需への供給力という貢献度は大きいのです。言い換えれば元に信用力を無制限に付与している事になります。自動車生産台数も70%が日米欧韓で占められ、残り30%の民族資本系も何らかの形で日米欧韓の技術支援を受けているのです。

(因に2009年の販売実績シェアは日本車25%、ドイツ車19%、アメ車13%、韓国車9%、フランス車4%その他となります。)

そういう意味では他人のふんどしで相撲を取るやり方は賢明です。内需の殆どが民族資本による日本などと比較して、違いは歴然です。尤も日本は世界でも特異な存在と言えます。ガラパゴスと言われる所以です。

結局、アメリカも中国も、他人のふんどしで相撲を取る事に味をしめている訳ですから、その他人様を粗末にする訳には行かない事になります。従って最初は強気に出ても徐々に妥協に変わらざるを得ないのです。

今回の尖閣諸島問題でも、ここに至って強気にトーンダウンが見られますが、着地点を探す局面に入ったのではないでしょうか。言ってみれば「戦略的互恵関係」の深度と、日本のふんどしの重要さに気がついたのかもしれません。

「雨降って地固まる」の例えのように、抜き差しならなくなる前に関係修復して、相手の立場を尊重するようになればいいのですが。。。筋金入りの相手だけに、さてどうなる事やら。

いずれにしても日本は、米や中だけに集中するのでなく、ふんどしを細切れにしてでも、リスクの分散をきっちりやるべきだと思われた方、クリックをお願いします。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

技術を持っている事は強いんですね。

投稿: 大ちゃん | 2010年10月 3日 (日) 01時43分

そうですよ。いかに技術世界一を維持するかが肝要です。その技術をないがしろにしようとする民主党は大変危険です。

投稿: 田中 徹 | 2010年10月 3日 (日) 09時00分

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