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2010年10月20日 (水)

グローバリゼーションの罠(2)

日本企業が生産拠点を世界に求めて、得をしたのは明らかに相手国です。日本には年間で数兆円(昨年は3兆円)しか利益が還元されませんが、相手国は世界トータルで200兆円の売り上げ、すなわちGDPが増えるのです。

その結果、周辺に経済強国=軍事強国を作ってしまう事になります。未来永劫仲のいい国同士ならまだしも、下手をすると敵にだってなりかねないのです。国家単位で見て、あまりいい防衛政策とは思えません。

ただ、経済的結びつきで利害関係が一致すれば、切っても切れなくなる事も確かです。例えば日中の場合、レアアースを中が輸出、日本で生産財に加工、中で組み立てて再度輸出、日本企業が日本製品に搭載して中国などに販売というような図式がありますが、こういうパターンが増えれば、相手を無闇に攻撃するなどという事は考え難くなるのです。

今現在は、日中あるいは日韓関係として、そういう意味での経済蜜月関係は続いていると見るべきです。従って、もし紛争が起きても、長期に渡る事は考え難く、経済界からの圧力は早期の解決を実現させるでしょう。

しかし、未来永劫このパターンが続く事もあり得ません。賃金の上昇や、材料の変化等によって、もろくも崩れるのは歴史的事実です。日本人は妙に楽観的ですが、やはり海外と付き合う事のリスクは政治的なものも含めて、極めて高いと言わざるを得ないのです。

従って国内に十分な需要さえあれば、海外リスクを取る企業は激減する筈です。しかも世界市場での一番大きなマスは中進国に取って代わられます。薄利多売の量産品生産では採算が合わなくなるのが先進国として自然の成り行きなのです。

尤も、日本のような技術先進国においては、高付加価値商品、あるいは高精度資本財、高性能生産財などは放っておいても売れますから、不毛なコスト競争に巻き込まれなくても十分な外貨を稼ぐ事は可能です。

一方、資源輸入では円高のメリットを受けて年々対GDP比は下がる傾向にあります。省エネ化、リサイクルが進んだ日本では、せいぜい5%程度に過ぎないのですが、極端な話、この5%を何らかの形で稼ぎ出せば、それ以上の外需は必要ない事になります。

例えば日本の場合、貿易収支を所得収支が上回る事が何年も続いていますが、10兆円前後もある所得収支は、輸出に頼る構図を限りなく減少させます。という事は、もう何年も前から貿易等による外需に頼らなくてもやって行けるだけの体制が整っていると言えるのではないでしょうか。

純輸出が1%程度しかない国が、グローバリゼーションの名の下に、世界を過剰に意識する必要は全くないのだ、と思われた方、クリックをお願いします。

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