« グローバリゼーションの罠(3) | トップページ | 過激派都知事の四選については(?) »

2010年10月25日 (月)

リーダー・オブ・ワールドエンタープライズ

ホンダの伊東孝紳社長のインタビュー記事が顔写真付きで日曜日の日経新聞に出ていました。私がいた当時と大きく変わっていない若々しく、意志のある顔つきは、今後のホンダを象徴しているようで、なかなか頼もしいのです。

209001s 記事では他社との提携よりホンダのオリジナリティを重視し、絶えず本田宗一郎時代の精神(中小企業精神?)に立ち戻ろうとする姿勢がよく出ていました。ホンダDNA健在振りに大いに安心させられます。

そもそもホンダという会社は、若さと発想力が売りで、その結果がニッチ(隙間)と言われる市場を開拓してきました。時には時代に対し、先取りが過ぎて失敗する事もありましたが、コンセプトの斬新な商品を続々と市場に投入する事は、正にデザイナー、エンジニア冥利に尽るのです。

私の8年間のホンダ在籍時代に、伊東社長は車体設計部門に属していた関係で、デザイナーの私と仕事上の付き合いは頻繁でした。当時、彼は未だ入社して間もなかったのですが、何人かいる印象に残るホンダマンの一人と言えます。

谷田部に一緒に風洞実験のため出張した時に、エンジニアの割には頭が柔らかく、ユーモアを解する人間だという事が分かったのですが、エンジニアにありがちな理詰めで押してくるタイプではなく、協調の中に答えを見いだして行くタイプとでも言った方が適切かもしれません。

体も大きく、いかつい見え方とは裏腹に、人なつっこい笑顔はワールドワイドに展開するホンダビジネスに適しているのではないでしょうか。彼は記事の中で、円高に関しては世界中にある工場をうまく融通し合えば、大きな問題はないと言っていました。

正にこの言葉にこそ、日本経済の抱える矛盾への答えが集約されているのですが、周りが騒ぐ程、当事者達は円高に対して神経質ではないのです。世界中に生産拠点を持つという事はそういう事です。因みにホンダ車の国内販売は全生産量の15%に過ぎません。

また、別の記事ですが、記者の「ホンダは世界企業だから、社内公用語は英語にしないのか」の問いに、「日本人の会社で英語が公用語などという事はあり得ない」と、一刀両断に切り捨てていました。いいですねえ。気持ちいい限りです。

記事の締めくくりは「私が最も望んでいるのはFTAだ」でした。輸出企業経営者としては当然ではないでしょうか。FTA はホンダと日本にとっては大きなメリットかあるのです。それは裏返せば、輸入国のデメリットでもあります。

誰かのメリットは、間違いなく他の誰かのデメリットになります。利権でも絡まない限り、欧米先進国と言えども競争力ある日本とのFTAを本気で望む国があるとは思えません。

私がホンダを去るときに、「韓国や、行く行くはアジアの国々の自動車デザインをサポートしたい」と言うと、伊東氏はデザイナーは、そのような自由な発想と行動が出来てうらやましい、と言っていたのが印象的でした。

それから20余年の月日が流れ、私はその時に言った事を実践し、ホンダに残った彼は、驚いた事に「世界企業ホンダのナンバーワン」まで上り詰めたのです。実に感慨深いものがあります。是非ホンダらしさで一暴れしてもらいたいものです。

日本の経営者はまだまだ健全だ、少し日本の未来に安心したと思われた方、クリックをお願いします。

|

« グローバリゼーションの罠(3) | トップページ | 過激派都知事の四選については(?) »

自動車」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« グローバリゼーションの罠(3) | トップページ | 過激派都知事の四選については(?) »