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2011年1月22日 (土)

二兎を追う日本は二兎を得る

1月19日(ブルームバーグ):野村総合研究所のリチャード・クー主席研究員によると、米欧で信用バブルの崩壊・資産価格の下落によるバランスシート調整が長期化する中、日本は1990年から苦しんできたバブル崩壊の後始末からの「出口問題」に直面している。菅直人第2次改造内閣が取り組む財政再建には、まず企業部門の支出を促し、日本経済を支える主体を政府から民間部門に移すことが必要だという。

クー氏(56)は18日午後、都内で講演し、今や「日本の問題は企業部門だ」と述べた。80年代後半のバブル期に膨らませた借金を90年から2005年にかけて返済し終えたのに、「人類史上」かつてない低金利の下で「まだ相当の貯蓄をやっている」と指摘。「借金に対するトラウマ」を抱える企業が「借り入れ意欲を高め、支出を促す政策が必要だ」と主張した。

企業が借り入れによって家計部門の貯蓄を活用するようになれば「景気も良くなるし、税収も増える」ため、単年度で約44兆3000億円に及ぶ「財政赤字も相当落とすことができる」と主張。資金が退蔵されないため、国内総生産(GDP)が下押しされず、「増税もできる」が、現状は「まだ全然そこまで行っていない」と語った。

リチャード・クーさんは信頼出来る情報提供者としての、数少ない外人の一人ですが、今回言っている事は少し違うような気がします。日本は90年代初頭からのバランスシート不況の出口にさしかかっているというのは、その通りです。

おそらく銀行や企業の不良債権処理は終わり、設備投資に向かってもおかしくないところには来ているのでしょう。しかし、このデフレ不況下で民間にリスクを取れというのは無茶です。過剰設備を持つ現時点では最低限の事しかしないのではないでしょうか。

さらに巨額内部留保がある現在、大企業による設備投資は融資を特に必要としません。融資を必要とするのは、体力のない中小企業ですが、枠を目一杯使い切っている彼らに、その借入余力はないのです。

下の表(出展/大和総研)でも分かるように企業の有利子負債月商残高は94年をピークにGDPとリンクして減少に転じています。これは言うなれば「信用創造」機能が有効に働いていないと見るべきではないでしょうか。

Photo

一方、バブル崩壊による企業や銀行の不良債権処理は終わったとしても、個人住宅ローンは未だ引きずっていると見るべきです。ローンの長いものは35年ですから、個人の場合は2025年まで支出に限界があると見るべきではないでしょうか。そういう意味では個人消費が自立的に本格回復するのは未だ先になりそうです。

日本のような特殊なケース、言うなれば世界一の、外資に頼らない供給力と技術力を有しながら流動性の問題で供給が海外に向かざるを得ないケースは、政府の力が必要である事は明らかです。問題はその政府なのです。

政府が推進しようとしている増税を含む財政再建に関しては、クーさんの指摘通り時期尚早であると言わざるを得ません。まるで点滴を打ちながら走れというようなものです。体力が十分に回復してからでないと点滴が無駄になります。(笑)

クーさんが言うように、バブル崩壊後も日本が経済成長出来たのは、一にも二にも公共事業を中心とする財政出動(国債の発行)を続けたからです。民主党はコンクリートから人へなどと言う意味不明のキャッチフレーズで国民を目くらまししていますが、公共投資を減らした事が今日の体たらくを招いた主要因である事は明らかではないでしょうか。

当ブログでも何度も提案していますが、民間による信用創造機能が働かない時は、未完成で未成熟なインフラの再整備を含む巨額公共投資以外に日本を救う道はありません。

公共投資による乗数効果によって内需が拡大し、税収も増えます。その結果、外需依存型経済モデルから脱却し、財政再建も進む、一石二鳥ではないでしょうか。日本は二兎を追ってもいいですか。いいんです(!!)

ところが増税と財政再建のセットでは国内需要の減少を招き、増々外需依存型になり財政も悪化します。この場合は二兎を追って一兎も得られない事になるのです。現政権は正に最悪のシナリオを書こうとしています。

リチャード・クーさんも以前TVで「良質な住宅の提供を政府がやればいい」と言っていたのにも関わらず、経済状況がさらに悪化している今になって民間主導での回復を説くのは不自然です。何があったのでしょうか。。。

いずれにしても既に大勢の経済専門家が唱えている、この簡単な方法が、政治家はともかく頭のいい官僚諸氏に分からない筈はありません。だとすれば、日本は主権に関して由々しき状況に陥っていると判断せざるを得ない、と思われた方、クリックをお願いします。

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コメント

はい、今こそ公共投資だと思いますね。
コンクリートから人へは、コンクリート(公共工事)から人(雇用と所得)へじゃないとね。
まずは景気対策ですが、まったく頭が回らないミンス・・・
景気が良くなれば、ほぼ全ての問題が解決に近づくのにね。

ところで、躍進する台、韓、中ですが、またまた対日貿易赤字が増えているとか。
素材や主要部品、製造機械ではとてつもないアドバンテージが日本にはあるということですね。
自分の立場だけ、またはある意思を持った分析は、へのつっぱりにもならんです!

投稿: ASO | 2011年1月22日 (土) 01時26分

公共投資が失業対策にも一番です。
法人税を5%下げたくらいでは、屁の突っ張りにもなりません。
さらに相続税を上げたり、消費税を増税するつもりですから罪深いです。
史上最悪の内閣である事は疑う余地がありません。

投稿: 田中 徹 | 2011年1月22日 (土) 20時27分

誰もが納得できる公共投資であって、実利と未来へ向けてのプロジェクトを考えて、推進する人(チーム?)が出現すれば、それが”神風”と呼べるのでしょう・・・あてずっぽに出してみようかな?
①石油が生成出来る藻/野菜が栽培出来る大規模なプール
②太陽光パネルを敷き詰めたヘクタール単位の海上簡易浮き船パネル設備
③以上を含んだ設備を尖閣とか良さそうな陸上/海上に設置し、屈強(普通でもOK)な人を設備保管/監視要因として配備(勤務)する・・・ちょっと遅めの初夢と致します。

投稿: Carly | 2011年1月23日 (日) 07時46分

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