日本経済はなぜ停滞するのか(前編)
日本経済は技術力があるのに、なぜ低迷するのか。失われた20年の正体は何なのか。(?)そういう質問を受ける事があります。現時点で軍事関係以外では、殆ど全ての分野でトップ、あるいは世界有数であり、生産資産や労働力、流通も含めた供給力も十二分にあるのに、とても不思議な現象ではないでしょうか。
その答えの一つとしては、海外への生産拠点進出があげられます。何度も言うようですが、自動車などは国内生産を遥かに上回るようになりました。2012年3月期では、震災の影響もありますが、海外1300万、国内850万台程度になると予想されます。
2008年3月期では国内生産が1150万台ありましたから、その差は歴然です。その300万台分の売り上げが国内から消えた事になります。という事は、裾野が広い産業なので影響は甚大なのです。我々のところまで資金が回って来なくなりました。(笑)いや、笑い事ではありません。
国内が不景気になる度に海外への生産移転は進んで、一人当たりのGDPは世界で20位くらいまで、国民の所得は、とうとう10年前の給与水準を下回るところまで落ちて来たのです。これがいわゆるデフレというやつでしょうか。
よく、デフレの原因は人口が減ったからだ、とか言いますが、未だ言う程減っていません。(笑)それにデフレと人口減の因果関係は立証されていないのです。ドイツなども人口は減っていますが、あれ程供給力がある国でもデフレにはなっていません。勿論人口が少ない国が全てデフレである筈もなく、無理な理屈である事が分かります。
人口構成が逆ピラミッドになっていて労働人口が減った事をデフレの原因にあげる人もいますが、それも妙な話です。デフレは供給過剰ですから労働人口が減ればインフレ圧力になる筈です。
更に老人が増えて需要が減るという考えも理解出来ません。定年を迎え、収入が減った分は現役世代が受け継ぐからです。その現役世代からは年金のお返しがあります。従ってプラスマイナスで考えた時に、大幅な人口減でもない限り、需要が大きく減る事は考え難いのです。
従って日本のデフレの場合は人口問題とは関係なく、他の原因を疑う必要があるのではないでしょうか。当ブログでいつも触れている金融問題は取りあえず横に置いて、貿易や世界との関わり方にも何か関係があるかもしれません。
まず、貿易です。政府が主導するインフラ輸出やTPPに参加して貿易収支の黒字増加による経済成長を声高に叫ぶ人がいますが、果たして、マクロ経済で見た場合に先進国が貿易で稼ぐ事など可能なのでしょうか。
それに先進国から途上国まで、その条件は同じと言えるのか甚だ疑問です。私はこれまで日本の貿易を見て来て、そんなに美味い話があったとは思えないのです。
途上国などはさかんに貿易に力を入れます。その場合、必ず貿易のパラドックスに陥るのです。貿易に力を注ぎ純輸出が増え経常収支が黒字になると、必然的に通貨高に振れます。それは価格競争力を削ぎますから、中国のように、元高は何としても避けたいという気持ちが働くのは当然ではないでしょうか。
変動相場制であるが故の為替のスタビライザー機能は、世界単位で見れば公平で欠く事が出来ないのですが、発展の途上にある場合は、目障りなもの以外の何ものでもありません。その変動を嫌って調整するのが為替介入ですが、やり過ぎると世界からアンフェアだと叩かれる事になります。
中国はドルペッグして悪びれませんが、日本の場合は政治力が弱く、やり過ぎると叩かれるので慎重にならざるを得ません。さらに為替介入をする度にドルを米国債に替えますから米国債が増えて外貨準備が嵩んで行きます。
この場合に政府は短期証券を発行し、日銀に買い取らせるのですが、日銀は同時に市場へ別種の短期国債を発行し、円の量を増やさない作業をします。これを不胎化介入と言い、短期国債発行残高が増える結果となります。不胎化しない場合は、市中に円が出回りますが、日銀はインフレにやけに神経質になのです。
この為替介入を繰り返した結果、使えないドル資産は増えましたが、国内が潤う事はありませんでした。更に、巨大な市場原理が働くので最終的に円高を止める事は出来ません。限りなく実質実効レートに近づいて行くのです。
その結果は、対外金融資産は増えてもデフレを抑制する事は出来ず、米を利するだけでした。日銀が日本の中央銀行と思えないというのは、そのあたりからも来ています。
また取り留めなく長くなりましたが、この話は大事なので、しつこく明日も続きをやりたいと思います。
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