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2011年10月 7日 (金)

内需主導の日本型経済モデルを活かせ。

高額所得者と高収益企業に対する大減税をするだけで日本はアジアで圧勝できる。
(中略)

筆者は、シンガポールや香港のような、高額所得者や多国籍企業の中枢機能を日本と取り合っている国をよく知っているが、都市のインフラストラクチャーや文化的な魅力度では依然として日本が圧倒的にすぐれいている。

全国に張り巡らされた鉄道網、都心を中心に良質な不動産物件、極めて質の高いレストランの数々、人々の高いモラル、四季折々の豊かな自然など、アジアの都市とは比べものにならない重層的で豊かな生活が日本にはある。

結局、圧倒的に不利なのは税制だけなのである。この税制さえ、他のアジア諸国並にすれば、日本は容易にアジアの成長を享受する中心になれるのだ。そんな簡単なことがなぜできないのか。筆者は非常に無念に思っている。(金融日記/藤沢 数希)

この人の記事は、凄く参考になり、いい事を書いているのも数多くあるのですが、この記事だけは残念です。日本がいい国だというのは確かなのですが、「アジアで圧勝 出来る」は穏やかではありません。むしろ不適切です。日本くらいの世界屈指の経済大国で技術大国、さらに潜在供給力世界一の国が、貿易でアジア諸国相手に 本気になってはいけないのです。

日本の経済的危機を脱出する意味で、まずアジアの成長を日本に取り込む、という考えは分からないでもありません。しかし、その後どうするのか、あるいはその結果、アジア諸国が将来的にどうなるのか、という視点が欠けています。

貿易はゼロサムゲームですから、日本が黒字になれば、必ずどこかの国が赤字になるのです。それを続けていけば、通貨を統一せずともギリシャのような国が出て来る可能性に考えが及ばなければいけません。

その結果、見捨てる訳にもいかないので、金銭的に救済するというのではモラルハザードを起こし、貿易黒字分も吹き飛ぶのです。すなわち、貿易でGDPを上げようなどというのは、さもしい貧乏国の幻想に過ぎません。すればする程、世界が安っぽく平準化するだけです。

従ってドイツや韓国のように、貿易の比率(対GDP)が高い事はハイリスクなのです。海外の経済的変動の波をもろに被ります。2008年以降の世界で起きている事や、ユーロで失敗しているEUから学ぶべき事は多いのです。

さらに、この人の言う企業に対する圧倒的(?)な税負担に関しても、消費税の還付などにより実質は税率程のものではない事は明らかです。その証拠に日本の企業は240兆円も内部留保を溜め込んでいます。もっと上げてもいいくらいではないでしょうか。

そもそも、経済大国は内需大国でもあります。米の全盛期では個人消費のGDPに占める割合は70%もありました。中国がちょっと前まで30%程度でしたから、その差が豊かさの差でもある事は明らかではないでしょうか。因みに日本は60%を少し切るくらいです。

という事は、安定的発展を得るには貿易依存度を出来る限り減らす事が肝要と言えます。2010年の日本は輸出は67兆円、輸入は61兆円ですが、仮に輸入を日本には乏しいと言われる資源系のみに絞った場合、30兆円程で済みます。

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その場合、輸出も30兆円にすれば平和(純輸出ゼロ)です。必然的に輸出品の内訳は高くても売れる高付加価値分野に特化されて行くでしょう。為替に一喜一憂せず、コス トで頑張る必要もなくなる訳ですから言う事ありません。それでも経常収支的には所得収支の黒字が年10兆円程もあるので、黒字基調は変わりません。

GDP的に言えば、増えも減りもしない事になりますが、輸出で消えた37兆円分の産業は「どうしてくれる」(笑)という事になります。輸入業者もタマがなくなっては商売になりません。

拙ブログをお読みの方はもうお分かりでしょうが、その分は内需に廻せばいいだけです。よく需要がないと言いますが、その場合は国が買えばいいだけです。

いわゆる公共事業です。消えた分の公共投資(真水)をすれば乗数効果で有効需要が37兆円以上になり輸出分をカバーするくらいは容易な事です。その結果はGDPが7%以上も増える事になります。凄い成長ではないでしょうか。

ところが、それだけではデフレギャップの解消にはなりません。供給量自体が増えた訳ではないからです。ただ、国内の個人消費が増えるという事は給料アップに結びつき、乗数的に消費が増えますから段階的にデフレギャップ解消に向かうのではないでしょうか。

勿論、そんなかったるい事でなく、財源を国債の日銀引き受けで捻出し、財政出動とセットで公共投資を行うのが手っ取り早い事は言うまでもありません。輸入を大きく増やさなくても内需が拡大出来る、垂直統合型産業を多く持つ国は世界でも稀です。

G20で見渡しても、今や日本くらいしかないのではないでしょうか。その実力を遺憾なく発揮すればいいのですが、出し惜しみしている現状には隔靴掻痒の感を禁じ得ません。

正しい経済の実態さえ認識すれば日本の再生は早いのですが、相変わらず外需依存にしか目が行っていない政府や産業界を見れば、見通しは決して明るくはないと言わざるを得ないのです。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

文部科学省は6日、東京都と神奈川県の上空から9月に航空機で測定した放射性セシウムの分布を地図にまとめて公表した。
東京都内では、奥多摩町の北端で土壌中のセシウム濃度が最も高く、
1平方メートルあたり6万~10万ベクレル、放射線量は毎時0.2~0.5マイクロシーベルトだった。
9月14~18日に放射線検出器を搭載したヘリコプターを使い、セシウムの沈着量と放射線量を上空から測定した。

最も高かった奥多摩町北端の放射線量は、「ホットスポット」と呼ばれる
千葉県柏市や松戸市周辺と同レベルだった。葛飾区や江戸川区の東部などでも周辺よりわずかに高い地域があった。
23区内や多摩東部の大部分、神奈川県のほぼ全域は、
セシウム濃度が1平方メートルあたり1万ベクレル以下、放射線量が毎時0.1マイクロシーベルト以下だった。
今回で関東1都6県と福島、宮城、山形の分布図がそろった。
福島第1原子力発電所から放出されたセシウムが、原発から南西方向に帯状に広がり、
薄まりながら首都圏まで到達して土壌に沈着している様子が明らかになった。

政府は航空機による東日本ほぼ全域の汚染地図作製を目指している。
今後、北は青森まで、西は愛知、岐阜、福井の各県まで範囲を広げて測定する。
これまでの地図は文科省のウェブサイト(http://radioactivity.mext.go.jp/)で公開している。

http://www.nikkei.com/news/headline/article/g=96958A9C93819695E2E4E2E6918DE2E4E3E2E0E2E3E39180EAE2E2E2

投稿: デマの原発安全神話を拡散させた責任から逃げる愚作 | 2011年10月 7日 (金) 20時01分

≫投稿:福島を含む東部列島、関東などは、土壌(ドジョウ首相ではない)検査を徹底的に検査すべし・・・ですよね!学校は列島全域でやるべき。
投稿: 青うさぎ | 2011年10月 6日 (木) 10時37分

≫投稿: 政府は航空機による東日本ほぼ全域の汚染地図作製を目指している。
今後、北は青森まで、西は愛知、岐阜、福井の各県まで範囲を広げて測定する。
これまでの地図は文科省のウェブサイト(http://radioactivity.mext.go.jp/)で公開している。
投稿: デマの原発安全神話を拡散させた責任から逃げる愚作 | 2011年10月 7日 (金) 20時01分

・・・なるほど、測定は遅まきながら進んでいる様ですね。放射能対策・・・学校の校庭土壌入れ替え/耐震校舎への改築等の災害復興とか、漁場/農場再開発で、内需を大幅にUPして国民の希望と安心感を発生させ、災害復興国債を大発行すれば、将来は明るい・・・ですよね!急げドジョウ野田さ~ん!

投稿: 青うさぎ | 2011年10月 8日 (土) 02時14分

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