何の為の貿易なのか、よく考えよう。
昨日のブログで、日本と韓国の自動車の単価に関して、国内売り上げも含めた総売り上げを総販売台数で割るという乱暴な計算をしましたが、中央日報の記事から正確な数字を発見しました。
昨日はトヨタと現代自動車との比較でしたが、今日は韓国車対日本車の輸出車の出荷価格になり、対比と言う点でより正確です。但し、実際の販売価格はこの上にディーラーの経費や利益が20%程度上乗せになります。
それによると今年上半期の韓国車の平均輸出単価は1万3499ドルと、前年同期比13.9%上がり、半期別では過去最高になったそうです。一方の日本車平均輸出単価は同時期で2万2387ドルですからパーセントにして、日本車の60.2%が韓国車という事になります。
日本円にして70万円の差というのは、同じカテゴリーでは考え難い事から、やはり低価格車メインというのが正しい解釈ではないでしょうか。従って韓国車を直接の競合相手というのは無理があります。FTAで韓国車の対米輸出が増えたとしても、日本車への影響は限定的ではないでしょうか。
ただ韓国車の単価が13%も上がったという事は、高付加価値への移行と考えられますから、日本車もより高付加価値へとシフトする必要があります。すなわち競合相手がいないハイブリッド車や超高級車、高性能車などをメインにして、米国内生産との差別化を図る事が肝要です。
(左側の数字が台数/月 日本銀行ワーキングペーパーシリーズより)
昨日、対米自動車輸出に関しては、日米貿易摩擦で紆余曲折があったと書きましたが、分かりやすい資料を見つけましたので添付(上)します。月単位になっていて年単位としては分かり難いですが、流れは非常によく分かります。
85年のプラザ合意の後も勢いの衰えない対米輸出ですが、87年当りから下り坂なのは明らかに日米貿易摩擦の影響です。脅しに屈して自主規制の成果が出たのではないでしょうか。(笑)
96年当りからはアメリカの IT バブルで景気が良かったせいか上向きに転じます。この頃には現地生産が軌道に乗っていて、2007年頃の全盛期には現地生産と輸出を合わせて600万台という、日本の国内販売に匹敵するような量になります。
それがリーマンショックで激しく落ち込む訳ですが、それでもなお盛り返そうというパワーには脱帽せざるを得ません。ただ、これがリーマンショック前まで盛り返せるかと言えば、甚だ疑問なのです。
韓国車にしても、米自動車産業を食う程だと、摩擦が起きるのは必定ではないでしょうか。オバマさんは同じ量のアメ車を韓国にも買ってもらうと言っている訳ですから、数を大幅に増やす事は墓穴を掘る事になりかねません。
では、なぜ韓国は米と農業などの犠牲を承知でFTA を締結するのでしょうか。そこには輸出産業偏重の産業構造があります。貿易依存度が対GDP比で90%前後もある発展途上型貿易立国の歪な姿が浮かび上がって来るのです。
日本から技術と資金を、自ら積み上げる事なく得た韓国は必然的に裾野産業が育っていません。内需の規模が小さい事もあり、設備投資にも積極的ではないのです。従って開発と組み立ては国内で出来ても、素材や製造装置は海外に依存せざるを得ません。
自動車の場合、鉄鋼以外は国内での調達率が上がって来ていますが、エレクトロニクス関係、特に液晶テレビや携帯電話などは部品の対外依存が意外に高いのです。その証拠に対日貿易赤字が年間3兆円もあります。迂回貿易と言われる所以です。
エネルギー系に加えて資本財、生産財、さらに知財の輸入がなければ経済が成り立たない構造故に、外貨を得るため国内より海外での販売を優先せざるを得ません。簡単に言えば輸入品に支払うドルを得る為に輸出をする構造なのです。
政府も実態を把握していますからウォン安誘導をします。その結果は価格競争力という点で日本とは比較にならず、海外で華々しく販売展開はするものの、見え方とは裏腹に台所は火の車というのが偽らざるところなのです。
経常収支もウォン安のため黒字にはなり難く通貨不安を常に抱えます。またウォン安で輸入品の物価が上がり、国内はインフレ不況に晒されるのです。しかも後からはより低価格を売りにする中国が迫って来る訳ですから、内心穏やかではありません。
何が何でも輸出に活路を見出すべく、各国とのFTA に奔走しているいうのが実態なのです。本当は身の丈にあった内需主体の構造に転換すべきですが、見栄っ張りの国民性故に難しいかも知れません。
しかし、このままだと、いずれ成り立たなくなる可能性が高いのですが、今回の通貨危機にもまた日本が資金援助でもするのでしょうか。BKD 民主党ならやりかねませんが、国民の賛同は得られません。
と思っていたら、これだ。。。また尻拭いをしたようです。電撃的に既成事実を作ったのは反対を恐れたのでしょうか。水面下で通じているのでしょう。きしょいなあ。(笑)
【ソウル=伊藤裕】野田首相は19日午前、韓国の李明博(イミョンバク)大統領と大統領府(青瓦台)で会談した。
両首脳は北朝鮮の核問題などに連携して対応することを確認、日韓経済連携協定(EPA)交渉再開に向け、実務者協議を加速することで一致した。金融市場の安定に向け、お互いの通貨をやり取りする日韓通貨スワップ(交換)枠の拡大でも合意した。
現時点でのBKD の筆頭株、野田首相がやってくれました。日本にとっては紙切れでしかないウォンと世界に通用する円を5兆円も交換するのですから、BKD 以外の何ものでもありません。そんな金があるなら復興資金に廻すべきではないでしょうか。
横道にそれましたが、いずれにしても、相手の産業構造を正確に知った上で日本との比較をしてTPP を推すのであればまだしも、表面だけを見て煽るのだけはやめて欲しいものです。TPP は平成の開国ならぬ、平成の不平等条約、日米修好通商条約アゲインです。
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コメント
≫ 現時点でのBKD の筆頭株、野田首相がやってくれました。
・・・2年前から日本は朝鮮進駐軍(M主党)に支配されています。自らがB層のNHK+D通支配下のマスコミとに、洗脳されてしまった国民。ただし東北震災と原発問題を契機に目覚めつつあるのが救いです。
TPP参入を回避さえすれば希望が膨らんできます。TPPの日本への提案ははオバマ氏の選挙向け米国内でに人気とりなので、日本は東北震災とデフレを理由にして拒否すればいいだけです、米国債売却をネタにして突っ張ればOK。
ただし沖縄方面基地はちゃんと前進しないとC国R国に付け込まれます。日本は自立自尊の独立国家の気概を持って世界と対峙すれば良いだけです。
投稿: 心配性君 | 2011年10月20日 (木) 02時10分
≫ 横道にそれましたが、いずれにしても、相手の産業構造を正確に知った上で日本との比較をしてTPP を推すのであればまだしも、表面だけを見て煽るのだけはやめて欲しいものです。TPP は平成の開国ならぬ、平成の不平等条約、日米修好通商条約アゲインです。
・・・バラク・オバマ米国大統領は14日、米国を国賓訪問中のイ・ミョンバク大統領と米国自動車産業の、ミシガン州デトロイトのGM工場を訪問し、韓米自由貿易協定(FTA)を言及して、「韓国は米国に売った分だけ買う。これが均衡貿易」と強調した。アメリカ人が買う米国現地で販売される"現代起亜車"の大部分はアメリカの現地生産だ。オバマ大統領がGM職員の前で、皆さんの雇用を守り更に増やすとアメリカ民主党の支持母体である自動車組合に向けた発言や「米韓FTAで、我が国は7万人の雇用を産む」と言った意味がコレなのですね!!
ヒュンダイは、韓国投資で作ったアメリカの現地工場でアメリカの材料と労働者で作った部品や完成車をアメリカの販社で売り利益を得るが、韓国は、"アメリカの作った車"を有り難く買わねばならない・・・GM/Fordの車を韓国で何万台も裏泣ければならない・・・ビッグ3の社長共がウッシッシ!状態
・・・日本はTPPとかに加入したら、日本の自動車屋さん各社は壊滅でしょうね【小生はTPPとFTAとの違いは良く理解出来ていませんが・・・勘弁して下さい汗’’】
・・・サンケイ新聞(時々良質で客観的、TPP関連は間違い多い)、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞、日経=全社TPP推進の記事を書きまくっている売国組織BKD。M主党さんと新聞社さんは、はそろそろ吉本興業にリクルートしたら如何でしょうか?芸名は『BKD元政党、元新聞』
投稿: AZ生 | 2011年10月20日 (木) 04時02分
よくよく考えると、通貨スワップと通過スワップ協定は違うわけで、今回の件はまんざら売国ミンスというわけではないようです。韓国の金の使い方によってはIMFが出てくるわけですから。遠まわしに米国を助けるってところかな・・
まあ、借金踏み倒しでまだ返していないものが多いところが右斜め上クオリティーですが。韓国へ輸出している企業のとりっぱぐれを回避するためという大儀があるなら、早速回収に動いて次から韓国へ物を売る会社は自己責任ということでお願いします。
投稿: ASO | 2011年10月20日 (木) 18時13分
それにしても額がデカ過ぎますよ。手際も良すぎる。裏があります。
IMF にしても、日本が資金拠出している訳で、なら最初からIMF経由にした方がすっきりするのではないでしょうか。
投稿: 田中 徹 | 2011年10月20日 (木) 19時32分