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2011年11月22日 (火)

時代を逆行させてはいけない。

N2

(河口湖紅葉祭りでのライトアップされた紅葉/2009年11月撮影)

今日はTPP の話に戻ります。

TPP に賛成している人の中に、日本は貿易をしなければ経済成長しないと思い込んでいる人が有名大学の教授クラスにいる事が吃驚なのですが、大学でも、そのように教えているのでしょうか。

基本的な事を整理します。日本の貿易依存度(輸出プラス輸入額÷GDP)は、先進国の中でも米に次いで低く、多い年でもせいぜい30%程度です。近年の輸出マイナス輸入の純輸出は平均でGDP 比2%、最近では1%程度ですが、これがGDP にカウントされる訳ですから、経済成長には殆ど寄与しない事が分かります。

Gdp

逆に1%しかないから経済成長しないのでは(?)と言われるかも知れませんが、60年以降の高度成長期でも純輸出はマイナスの時もありました。さらに純輸出が伸びそうになると米から為替(85年のプラザ合意)や日米貿易摩擦などで叩かれましたから、高度成長時代にも成長に大きく貢献したという事実はありません。

円高に嫌気した企業は海外に出て行き、そこで得た利益は、再投資という形で現地に還元されました。課税の問題もあり企業が利益を国内に戻し始めたのはごく最近なのです。しかも3兆円規模と決して多くはありません。

従って、日本が経済成長したのは、GDP の60%近くを占める個人消費の大きさを見ても分かるように内需主導と言えます。インフラ整備などの公共投資を軸とした財政政策の上に民間が設備投資して発展して来たのです。バブル崩壊の90年までは、ですが。。。

そもそも輸入と輸出が対GDP 比で各々10%台の国が経済大国というのは、どういう意味なのかを考えて欲しいのです。米などをみても個人消費がGDP の70%を占める内需大国です。貿易に関しては赤字のイメージしかありません。

貿易(輸出依存)によって成長しているケースとしては、中国が分かり易いのですが、13億人もいて、個人消費はGDP の35%程です。それに対して、固定資本形成(住宅投資、設備投資、公共投資)の比率は45%とずば抜けて高いのです。

安い人件費で海外から投資を呼び込み、製品を輸出して経済成長する経済モデルと思われていましたが、それよりはるかに固定資本形成が大きいというのは歪な経済構造を示します。不動産バブルの懸念が払拭出来ない所以です。。いずれにしても純輸出(4%くらい)の経済成長(8%)に占める割合は50%程度ですから、貿易を過大評価する訳にはいかないのです。

それに対して日本型経済モデルは、石油や鉄、レアアースなどの資源を輸入(GDP比で5%程度)しますが、後は国内で調達した物と技術で製品を生産、主に国内に売るというスタイルです。

他の輸入品は日本企業が海外に持つ子会社からの逆輸入品や安い食糧などが大半を占めます。デフレになる訳です。因に自動車などの輸出が目立ちますが、耐久消費財の輸出は全輸出の20%にも達していません。

要するに、国内で物を作る為に、一部特殊な物を除いて殆どが国内で調達可能なのです。そういう国が貿易に頼らなければならないという発想自体がナンセンスではないでしょうか。

つまり、物を作っても支払いの95%以上は国内に払う訳なので、生産量が増えれば、増えた分の流動性さえ確保すればいいのです。その結果が経済成長に結びつくのですから中央銀行の仕事としてはこれ以上楽なケースはありません。

ところがこれが、大量の輸入に頼らなければ生産が出来ない韓国のようなケースだとどうでしょうか。韓国の輸入は対GDP 比で45%にもなりますが、逆に国内では69%(100−45÷145)しか作れない事になります。

これは凄い話です。その45%の物を輸入するには、少なくとも45%の物を輸出しなければ、貿易赤字で経済が成り立たなくなるのです。韓国が輸出に血道を上げる理由がそこにあります。

従って、製品は国内向けより海外向けを優先せざるを得ず、国内供給が慢性的に不足します。結果は海外より国内の価格が高くならざるを得ません。さらに輸出を優先するあまり為替を通貨安に誘導しますから、コモディティの輸入物価が上がり、インフレの進行を止められないのです。

本当に韓国国民は気の毒なのですが、日本などと競争する為に安売り合戦をし、そのツケが回って経常収支が赤字になり通貨危機を招くドツボに嵌っていると言えます。先日も日韓通貨スワップ協定の限度額を引き上げましたが、日本が尻拭いをしなければ破綻してしまう構造、経済モデルといえます。

例によって話があさっての方向に飛んでいますが、貿易で経済成長すると言うのは中国のような発展途上国の場合はあり得ます。しかし、人件費が上がったのでは投資が引き揚げますから、どこかの時点で外需依存から個人消費が主体の内需拡大策に転換しなければ継続的高度経済成長は望めないのです。

それを可能にする為の条件は、外交力でも資金力でもありません。国内で高い内製率を達成する為の技術力と裾野の広い垂直統合型の産業構造です。国内市場の大きさも重要ではないでしょうか。1億人くらいの人口は必要かも知れません。ここはアバウトです。(笑)

その条件を満たす国はどこでしょうか。世界広しと言えども、筆者には日本くらいしか思い浮かばないのです。だから安心して内需を拡大しましょう。岸さん。(笑)

TPP に話は戻りますが、(笑)日本も戦後は経常赤字国でした。国民の血と汗と涙で赤字を減らし、輸入の対GDP 比を縮小して来たのです。TPP はそれを逆行させる事に他なりません。

つまり輸出も増えるかも知れませんが、5%でしかない海外依存が国際水平分業などによって飛躍的に増え、発展途上国並になり自立の芽を摘まれる、これが一番恐れなければならない事ではないでしょうか。

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コメント

≫ TPP に賛成している人の中に、日本は貿易をしなければ経済成長しないと思い込んでいる人が有名大学の教授クラスにいる事が吃驚なのですが、大学でも、そのように教えているのでしょうか。

・・・多分、セミナーの教授が学生へ指導するテーマにはなり得る(難しいので教授もビビる)でしょうが、経済学の教科書には無いかもしれませんね!過去の出来事を整理し、統計し、法則を見つけるのが”象牙の塔の学問”の様ですから。
・・・激動する国際社会の中での”生きた経済学・・・日本編”としては、貴ブログが世界一でしょう。
・・・”生きた経済学・・・理論編”ではいうまでも無く、三橋貴明氏で間違いないでしょう。

以下、TPP/グローバリズム盲信(猛進)の影響への考察

過去のの20年間は、グローバリズムの名を借りた、米国/中国をも巻き込んだ国際金融機関があれこれ出来事を引き起こし、何でもありの混沌世界を創作し”間抜けな柔らかい土”を耕して世界の富を独り占めしている気がします・・・貧富の拡大が世界的に広がっている現実。英国経済、産業界では、米国が入り込んで英国資本の自動車会社(過去には沢山あったので書ききれない)/飛行機製造会社(ビッカース、デ・ハビランド、ハンドレページ、イングリッシュ・エレクトロニック、サンダース・ロー、スーパーマリンその他マイルズ等)が殆ど消滅して来た過去60年を見れば明らかです。日本の自動車業界には、軽自動車枠は不当なので、撤廃せよ・・・なんて言って来るでしょうね、大丈夫である訳ない・・・でしょう?

≫ 国内で高い内製率を達成する為の技術力と裾野の広い垂直統合型の産業構造です。国内市場の大きさも重要ではないでしょうか。1億人くらいの人口は必要かも知れません。
・・・なので、国内の労働力で充分に対応可能。外国から移民1000万人案は合法的な侵略に繋がる危ない提案であり、在日外国人への選挙権もあげては駄目・・・海外でも移住者の選挙OKの国家は皆無です。欧州各国で移住者が権利ばかりを主張して内戦状態寸前の様子ですね。
内需拡大、流動性確保、食料自給率維持又はUP,日銀が100年債権発行でデフレ/東北復旧の資金つくりが有効と思われます。

投稿: 青うさぎ | 2011年11月22日 (火) 04時38分

青うさぎさん。あまり持ち上げないで下さい。
プレッシャーに潰されて書けなくなるじゃないですか。(笑)
1000万人移民受け入れ、とんでもない売国政策です。これに賛成してる議員もTPP 賛成派に負けないくらいのBKD です。
日本は日本だけで立派にやって行けます。

投稿: 田中 徹 | 2011年11月22日 (火) 19時41分

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