デフレ経済の真ん中でブロック経済を叫ぶ。
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最近TPP に関する議論が下火になっていますが、先日久々にテレビ朝日でやっていました。珍しくまともな議論です。ある評論家が、実質、米との二国間FTA になるTPP よりも中韓との三ヶ国FTA の方が、国益に適うと言っていました。
理由は貿易量が、こちらの方が少し多いから、と言うのです。米に政治的に押し切られる事もネガティブな材料のようです。一理あるような気がしますが、果たしてそうでしょうか。
もう一人、浜矩子同志社大学教授は、いずれにも否定的です。基本的に第二次大戦の原因にもなったブロック経済(ある意味、植民地主義)に参加するべきではないと言うのです。それは逆に参加国以外に対しては差別となり、経済圏内保護主義となるからです。明らかにGATT やWTO の精神に反する事になります。
この場合に限って言えば、浜教授に理があるのではないでしょうか。何カ国かでブロック経済を形成すれば、政治力と軍事力の強いリーダー国の意のままに操られるリスクがあります。体のいい植民地化です。
その結果、死守すべき関税自主権は失われ、100年前の惨めな姿に逆戻りしかねません。その逆も感心しないのです。リーダー国となり、ルールをごり押ししたのでは今の米のように嫌われます。
日中韓でブロック経済を構築すれば、この場合はまた違った結果が出るのではないでしょうか。声の大きい方が有利です。勿論軍事力も重要な要素になるでしょう。
また、デフレの国とインフレの国が自由貿易圏を形成した場合には、どうなるのでしょうか。中韓は世界水準から見ても、かなり高いインフレに陥っています。インフレで通貨安ですから、ユーロのように通貨を統合すれば日本にも旨味があるかも知れませんが、現状のままであれば、食糧や労働集約型産業では全く歯が立たない事になります。
かと言って、高い日本の工業製品が、今以上にガンガン売れるとは考え難いのです。結局ブロック経済で利益を得るには現地生産しかない事になります。あるいは安い労働力が入って来て、空洞化、失業率がより上がる事もあり得るのではないでしょうか。デフレも間違いなく昂進します。
やはり地域ブロック経済で一番の問題は決済通貨を何にするかです。円で統一出来れば問題ないのですが、ユーロの失敗を世界が知った今、可能性は極めて小さいと言わざるを得ません。かと言って、それぞれの通貨で決済する事を想像してみて下さい。インフレの国の通貨は恐ろし過ぎます。
ではドルでしょうか?参加国でもないし、価値の安定しない落ち目のドルも、今後は適切とは言えません。ドルを選ぶならば、それを担保している円でいい、という事にもなります。堂々巡りです。
結局、決済通貨の問題を解決しない限り、経済力に差がある日中韓の三国FTA などはあり得ないのです。百歩譲っても100年早いと言わざるを得ません。
ところで、世界で唯一デフレ病の日本に処方箋はないのでしょうか。専門家の間では、既にインフレの傾向があるとか、デフレをそう問題視しない風潮がありますが、デフレとは何でしょうか。
定義は色々あるようですが、「物価の持続的な下落をさす場合」が主流のようです。それで言えば、日本が強度のデフレであると言うのは難しいかも知れません。どこかで生産は調整されるからです。
日本はデフレと言うより、膨大なデフレギャップが存在する事自体に問題があるのではないでしょうか。供給量が需要を大幅に上回るような事態は人類にとって未体験ゾーンなのです。従って治療方法も確立されていません。
一口にデフレギャップと言いますが、これも定義は色々あります。内閣府は下記計算式で見ているようです。これによって一昨年は30兆円のデフレギャップと言っていました。
なお、デフレギャップ、需給ギャップ、GDPギャップは同義語です。
GDPギャップ=(実際のGDP-潜在GDP)/潜在GDP
しかし、この式も潜在GDP値をどう導くかで大きく変わります。ポテンシャルを正確に見積もるのは難しいのではないでしょうか。いずれにしても内閣府がこれだけ認めるという事は、確実に大きなデフレギャップが存在する事になります。
なぜデフレギャップが存在するかについては、色々議論がありますが、最近評判の本や日銀が言う、生産年齢人口の波で左右されると言うのは分からないのです。言われる程、人口/生産年齢人口が減っていない事もありますが、労働人口が減れば、むしろインフレ圧力になります。デフレ要因にはなり様がないと思うのですが、何か他に理由があるのでしょうか。
名目GDP と、購買力平価で見た一人当たりのGDP では、日本の場合、大きな差がある事が分かります。下の表では、日本は普通なのです。これが名目GDPに反映されないのが問題です。
分かり易く言いますと、一人当たり購買力平価ベースのGDP × 人口 が本来のGDP という事になりますから。上の表 × 人口(名目GDP)との差プラス デフレギャップ分が我々が失った富という事になります。
購買力平価ベースのGDP が他の先進国並みならいいじゃないかと言われるかも知れませんが、だから円高になるのです。お分かりでしょうが、名目GDP との差を埋めるスタビライザーの役目をするのが為替という訳です。
答えは明らかです。給料が何十年も増えない(あるいは減る)などという事は異常以外の何ものでもありません。政府、日銀は国民の給料が増えるような金融政策、財政政策を採るべきである事は明らかではないでしょうか。
それが出来ないと言うのであれば、無能のそしりは免れません。世界一の対外純資産を持ち、国内に素直統合型で世界トップクラスの技術力を持つ産業がひしめいている今こそ、それがリスクなくやれるのです。消費税増税などは、真逆の政策です。とんでもありません。
話は全然変わりますが、11年は輸入車が新車登録台数の10%(外国車は7.7%)を超え、過去最高に売れたそうです。先進国の中では異例に輸入車比率が小さい日本ですが、変わりつつあるのでしょうか。それにしても、日本車との比較で割高感のある外車が円高の今、売れるという理由がよく分かりません。
ドイツ車なども、数年前との比較で30%は円高だと言うのに、価格を下げていないのです。聞けば取引(貿易)は円建てだと言うではありませんか。丸儲けです。日本人の皆さん、不当に高いクルマを買わされているのですよ。(笑)
笑い事じゃなくて、例えば500万のクルマ(BMWの3シリーズあたり?)なら350万円で買えた筈です。150万円はどこに行ってしまったのでしょうか。。。もう一台軽自動車が買えましたね。
為替のスタビライザーが、ここではへたっていて機能していないようです。日本製のスタビライザー(コーナリング時のクルマの挙動を安定させる装置)にしないとひっくり返りますよ。(笑)
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コメント
≫ もう一人、浜矩子同志社大学教授は、いずれにも否定的です。基本的に第二次大戦の原因にもなったブロック経済(ある意味、植民地主義)に参加するべきではないと言うのです・・・
ブロック経済圏、軍事同盟圏・・・ブロックを作ったらブロック対決が永遠に続きますからね、いつまでも紛争が絶えません。人類の英知ってそんな物だったのでしょうか?!残念です。
A国は自国の崩壊を避ける為にお人好しでウブなN国にTPPを迫ったのですが、果てしなくC国、NK国に近寄るM主党へのOバマさんからの意思表示(警告)と、国内向けの雇用向上の人気取りだけの施策だったのに、どじょうさんが思ったよりビュンビュンとシッポを振ってきたのでビックリ・・・ではないのかな!
永世中立の揺ぎ無い国家建設を目指して、経済/防衛/政治も自立自尊の例えばスイスの様な国を目指せば良いのではないのかな。アメリカの家来とか、中国とか韓国、北朝鮮の奴隷にはなりたくない、断じて!
投稿: 心配性君 | 2012年1月15日 (日) 11時08分