「国家と貿易」が抱える矛盾(後編)
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石原伸晃氏が「尖閣諸島には誰も攻めて来ない。だって人が住んでいないのだから」と言った言葉が波紋を広げています。本人は、至極現実的な話をしたつもりなのでしょう。話をした場所(放送局)がまずかっただけです。(笑)
しかし人類の歴史を見る限り、国境付近での小競り合いは枚挙にいとまがありません。という事は国という単位がある限り、紛争は尽きないのではないでしょうか。宗教や習慣が違う国同士が自主や独自性を主張すればする程、その境が安全な訳はないのです。
幸い日本は周りを海に囲まれていますから、本土にまで問題が及ぶケースは滅多にありません。あるとすれば、それこそ大規模な戦闘になり、離れ小島の奪い合いどころではなくなります。だからこそ、遠く離れた無人島が重要な意味を持つのです。
さて、そこで昨日の続きになりますが、国という単位がある限り、貿易も一種の戦いになります。少しでも自国のものを多く売り、他国のものを少なく買うのが勝利の方程式で、外貨(国際決済通貨)を多く溜め込んだ国が勝利者となるのです。
内需の小さい発展途上国は、それを目標に先進国から支援を受け、産業を振興して来ました。2008年のリーマンショックまでは世界経済が大きなトラブルもなく発展して来たと言えます。
なぜそれが出来たのかと言えば、米のような超大国が借金をしてでも物を買う構図があったからです。極論すれば、米対世界という経済パラダイムが半世紀以上も続きました。
その間、日本を先頭に、ドイツ、中国が外貨を溜め込みます。他の途上国も輸出さえ頑張れば何とかなる世界はあったのです。しかし、その米対世界の甘い蜜月時代はリーマンショックと共に終焉を迎えます。米が借金をする余裕がなくなったのです。
という事は、米のマイナス分をどこかの国が引き受けなければなりません。日中独も、これまでのように経常収支の大幅な黒字を続ける訳にはいかないのです。そこに未だ気がついていない国が、相変わらずの輸出振興、外需獲得に血道を上げます。
その結果はギリシャを生み、スペイン、イタリアへと飛び火して行くのです。これは経常黒字国が対外純資産を全て吐き出すまで続きます。先頃もドイツがギリシャ救済の為に出血を余儀なくされました。
日本の場合はアメリカです。昨年も随分米国債を買わされました。これは毎年8〜9兆円もある対米黒字が日本国内の為には使われず、米救済の為に国債を買って還流させている訳ですから、勝利者の日本がいつまで経っても豊かになる訳はないのです。
日本はとっくの昔から巨大なギリシャを飼っているのです。(笑)
つまり、日本にとって為替は大きなハンデにはなりませんでした。1ドル360円時代から100円くらいまでは大して問題はなかったのです。追いついて来る国がなかったからですが、さすがに70円台は厳しいと見えます。
(シャープのアドバンテージは、長くは続かなかった)
さらに追い討ちをかけるように技術流出があり、ここに来て電機産業などは一気にアドバンテージを失いました。プラザ合意から四半世紀もかかって、日本潰しが成功した訳です。その先兵となったのは皮肉な事に、日本がインフラ整備し、戦後資金と技術援助を惜しまなかった元の被統治国、台湾、韓国でした。
この結果を見れば明らかなように、日本はある時期を境に世界と関わる事がメリットでなくなったのです。筆者はそれを90年代半ばと見ます。破竹の勢いの日本産業は構造改革と新自由主義経済のせいで、勝利の方程式が組めなくなりました。
尤も前述のように勝ち続ける事も問題です。どこかの時点で内需主導に考え方を変えれば良かったのですが、相も変わらず外需依存を続けた為に傷を大きくした点は否めません。
ここで貿易の基本を見直しましょう。二国間貿易の基本は「持たないもの」の補完関係です。例えば日本と発展途上国のケース、日本は工業製品が得意なので、クルマやテレビを輸出し、小麦やトウモロコシを買います。
この場合、価値に大きな差がありますから、日本の大幅黒字とならざるを得ません。しかしそれではお互いが困るので、クルマの総額分だけ穀物を買ってくれという事になります。人が良い日本は国内の小麦やトウモロコシ産業を潰してでも、その願いを聞いたとしましょう。
よく考えたら、そのやり方は効率が良いので、比較優位なものは全て優位国が担当する事になっていきます。つまり二つの国で一国分の産業を分担して受け持つ事になるのです。ならば、いっその事合併した方がより効率が良いと考えても不思議はありません。こうやって国境が消えて行きます。
これを世界規模でやっているのが「グローバリゼーション」です。つまり、グローバリズムの浸透は国境をなくし、民族のアイデンティティを限りなく希薄にしていきます。最終的には政治力、軍事力が強いところが世界をまとめるという訳です。ブッシュさんが言うところの「ニューワールドオーダー」の正体がこれです。
話は元に戻りますが、国境があるから小競り合いがあります。しかし本体のアイデンティティは防衛さえ怠らなければ微妙なバランスの下、保たれるでしょう。逆に経済的理由で国境をなくした場合はどうでしょうか。
(国境があるにも関わらず、アイデンティティを失いたくない勢力と、消したい勢力が、そこら中で小競り合いを繰り広げているシリア)
アイデンティティを失いたくない勢力と、消したい勢力が、そこら中で小競り合いを繰り広げる事になります。正にシリア化です。あなたならどちらを撰びますか。筆者は離島でもめている現在の方が、よっぽど健康的だと思うのですが、違うでしょうか。
従って、下手な妥協だけはすべきでないのです。TPP にしても離島にしても、防衛ラインを下げる事は国境を失う事と同じです。
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コメント
> 従って、下手な妥協だけはすべきでないのです。TPP にしても離島にしても、防衛ラインを下げる事は国境を失う事と同じです。
・・・竹島は恩知らず韓国からの侵略、尖閣諸島へは中国共産党からの露骨な国土略奪が平然と行われていますが(ミンス党は日本を滅ぼしたいんだね!)・・・その先は洗脳された沖縄の独立→中国共産党が乗っ取る事が容易に想像出来ます。
地政学は警告しています。隣の国はすべて”敵国”だという事を。
投稿: AZ生 | 2012年9月14日 (金) 16時55分