日本人にはポルシェは造れない。(後編)
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よく考えれば昨日の記事で、ポルシェが日本人に造れるかどうかの結論を書いていませんでした。(笑)聡明なる読者諸氏には再確認すべくもないでしょうが、物理的に言えば、勿論出来ます。ハイテク満載でもっと凄いものが出来る事は間違いないでしょう。
では商品として開発するメンタリティがあるかと言えば、「ない」と言わざるを得ません。但し、それは採算上の都合として片付けるような単純なものではないのです。日本人とドイツ人の、もの作りに対する考え方の基本的なところに根ざすのではないでしょうか。
いかん。また大上段に振りかぶってしまった。(笑)一デザイナーに過ぎない筆者に、大した話は出来ませんので、気軽に読んで下さい。あくまでも個人的感想に過ぎません。
日本人にポルシェを造る気がないのと同じように、ドイツ人にハイブリッドカーを造るメンタリティがあったかと言えば、ノーだったのです。過去形で表現したのは、最近になって完全に日本のハイブリッドカー技術の軍門に下ったからですが、あの、プライドの高い傲岸不遜なドイツ民族にとっては屈辱以外の何ものでもないのではないでしょうか。
BMW がトヨタからハイブリッドカーの技術供与を受けると聞いて、我が耳を疑った自動車関係者は多い筈です。それくらい、この技術はドイツ人にとってはあり得ない事だったのです。
エンジニアの常識で、スペースや重量、またコストに限界のある一台のクルマに、二つの異なった動力を搭載する事なんてあり得ません。はなから除外されるべき選択肢であった事は疑い樣がないのです。
全てに合理性を優先するドイツ民族なら当然の事と言えます。ではなぜ、トヨタはそのような冒険をしたのでしょうか。結論から言いますと、動機は「好奇心」ではないかと思われます。
日本人の精神年齢は十何歳などとよくからかわれますが、好奇心だけは世界一旺盛なのです。新しいものや珍しいものが大好きなのは、皆さんよくご存知の事と思います。特にエンジニアは人一倍、その好奇心が旺盛なのです。
さらに、トヨタ程のゆとりのある会社だからこそ、その研究も許されました。試作の段階では社内も大いに揺れたのではないでしょうか。物笑いの種になるか、喝采を浴びるか、その判断が微妙なところだった事は想像に難くありません。
それを、あえて踏み切ったのは販売側の力です。フルラインアップに加えて、際物も欲しいというのは、欲張った販売側からすれば当然と言えば当然です。しかし、それも含めて、全てはゆとりのなせる技でした。
そんなゆとりある日本メーカーでも、さすがにポルシェには手を出しません。(笑)好奇心には訴えても、日本人の合理性にはミートしないからです。
乗った事がある人にはお分かりでしょうが、あのクルマは、本格的スポーツカーであるにも関わらず2プラス2です。乗れもしない後席の為にエンジンが後ろに行った事で、重量バランスは、かなりおかしな事になります。
そこから来る特異な操縦性は、スリル満点のマニアックなものではありますが、素人ドライバーが、手軽に乗りこなせるものではありません。箱根ターンパイクの下りでひっくり返っているのは、ポルシェが断トツに多い事からも分かります。
通常、こういうクルマを造る場合は、フェラーリやランボルギーニのように、真ん中にエンジンを置き、リアホイールで駆動させるのが王道と言えます。
それが一番、四輪で走るクルマとして理にかなっているからですが、それが出来ない大衆車は、挙動に無理のあるFF(フロントエンジン/フロント駆動)方式を選択せざるを得ません。
従って、アウディTTのような、スポーツカーにFF というのは、あり得ない選択という事になります。そのネガを隠す為に4輪駆動にしたりしますが、本来邪道です。では、後にエンジンを持って行くのはどうでしょうか。スペース効率は最善とはいえないものの、スポーツカーとしての面目は最低限立ちます。
パワーユニットとしてはコンパクトになり、挙動も回頭性含め、センシティブになるからですが、それは常に危険と隣り合わせなのです。それを打ち消す為に、こちらも四輪駆動にしたりしますが、軽快さが信条のスポーツカーにとって、それも正道とは言えません。
つまり、冒険とリスクをバーターするようなマニアックな世界には、いくら好奇心が旺盛でも気持ちは動かないのではないでしょうか。ドイツ人の価値観、合理性には叶っても、日本人の合理性からは逸脱するのです。
では日本人が造る本格的スーパースポーツカーとは何でしょうか。あえて言うならホンダのNSX です。メチャクチャ速いスポーツカーとしてアメリカでは人気を博しました。
しかし、開発初期にアドバンスで少しだけ関わった筆者は、実をいうと不満です。それは軽量化と価格をトレードしているからです。ボディをアルミにした恩恵はライバル車を見る限り、限定的と言わざるを得ません。その為のコストは、日本車でも800万円を超すものになりました。
安価な材料を使っての軽量化に成功しなかったツケを消費者が払う謂れはありません。ボディ以外の軽量化で成功し、加えてアルミ等によるボディの軽量化であれば、誰もが納得するのではないでしょうか。
さて、次のNSXはハイブリッドカーだと言いますが、大向こうをうならせるスポーツカーに出来上がっているかどうか、ホンダの将来を占う意味でも楽しみです。
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コメント
> 日本人にはポルシェは造れない。(後編)
・・・それは正解。又はその必要は無いのかも知れません。
・・・日本(世界各国それぞれ)のクリエーターは日本(各国)発の際立った個性の車を創って世の中に問えば良いのでしょう。
例えば大昔、Toyota S800にガスタービンエンジンを搭載したハイブリッド車両を試作した事がありましたっけ。
HondaはNSXの動力系をハイブリッドに進化して、開発していますね、こういう奴が望ましい進歩の証なのでしょう。
・・・願わくば超個性的な、車好きが泣いて喜ぶスーパーカッコいい車が登場して欲しいですね、無いなら自分で作っちゃおうかな?・・・これって、ランボルギニが登場したインテンション・・・と聞いています。イタリアのトラクター屋さんのランボルギニさんがフェラリ屋さんを訪れてアレコレ注文をつけたら”旦那、それって無理ざんす!”と言われて腹を立てて”それなら自分で作っちゃうぜ~!”
投稿: AZ生 | 2012年10月 8日 (月) 05時41分