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2012年10月 2日 (火)

技術立国と、資源大国は両立するのか(?)

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当ブログは、消費税の増税と、TPP への参加には断固反対です。

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ある保守系のサイトで、面白い記事を発見しました。国際政治学者の某氏が書かれたそうです。以下抜粋です。

ハードカレンシーの地位を保っている現在の経済力、今なお世界の最先端をゆく技術力、それに加えてEEZに眠る天然資源を日本が輸出できるようになれば、日本の国力は一気に蘇ります。

貿易は超黒字となり、GDPは再び中国を追い抜きアメリカに迫るものとなるでしょう。なにしろ日本のような先進経済大国が同時に世界有数の天然資源保有国になるという事態は人類史上初めて生じる事態なのです。

これが実現すれば、かつてないほど繁栄に満ちた黄金時代が日本に訪れます。もはや社会保障の財源だの増税だのと騒ぐ必要すらなくなるのです。日本はアジアの秩序を維持するスーパーパワーを築き、アジアの平和と安定を牽引する超大国になるでしょう。

確かに面積が世界6位と言われる日本のEEZ 内に眠る天然資源は3京円もあると言われています。事実だとすれば世界有数の資源大国ではないでしょうか。

さらに藻の一種であるオーランチオキトリウムから精製される石油は、無限に生産可能ですから、近い将来、日本にはエネルギー問題は存在しない事になります。資源輸出大国になるというのも、あながちあり得ない話ではありません。

この著者が言われるように、上手くいけば技術と資源で米と並ぶ超大国になり、アジアの平和と安定を牽引するようになるのではないでしょうか。混沌とした現状から見ても、そうなる事を祈らざるを得ません。

ただ、揚げ足取りではありませんが、少し引っかかるところはあるのです。この著者は基本的に保守で、第二次安倍政権待望論を展開していますから言わば同志です。従って、足を引っ張るつもりは毛頭ないのですが、経済のところは少し疑問なのです。

20070828_397984            (第二次安倍内閣の布陣やいかに)

この文を読む限り、外需が日本経済に貢献する事を疑っていない節があります。しかし、技術(製品)も資源も海外に売って経済成長しようというのは現実に可能なのでしょうか。今日は、その点を考えてみます。

まず、現在は震災以降LNG などのエネルギー系輸入が増えて貿易赤字になっていますが、本来は基本的には貿易黒字を続けて来た国です。そのせいで溜まった外貨は膨大になり、それが生み出す配当や利息で構成される所得収支の黒字が月に1兆円を超えます。その貢献が大きく経常収支は常に黒字という訳です。

マスコミや似非経済学者は貿易赤字を見て、さあ大変だと騒ぎますが、簡単な算数も出来ないと見えます。世界一の対外純資産を持つ債権国が、このペースで行って何年後に債務国に転落するかと言えば、予想する事に意味がないくらい先になる事は明らかなのです。

しかしながら、元々世界一経常黒字を溜め込んだ国が、世界一豊かになっているかと言えば、明らかに否ではないでしょうか。むしろ円高になり、デフレ不況に陥っています。

従って、外需は国を豊かにしないという好サンプルを、既に自らが体現している訳です。さらに、資源大国になって輸出を増々促進した場合は、莫大な貿易黒字を溜め込み事になります。

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なぜなら、現在はなんだかんだで25兆円くらいもある資源系輸入が殆どなくなるからです。という事は海外生産している自国ブランドの逆輸入品くらいしか輸入するものがなくなる事になります。プラスマイナスで50〜60兆円くらいの貿易黒字になるのではないでしょうか。

これに所得収支をプラスすれば(サービス収支と経常移転収支は数字が小さいので除外します)対GDP 比15%ものお化け経常黒字国になりかねないのです。これは凄い事ではないでしょうか。

日中独あたりに4%を目安にと釘を刺した米がひっくり返ります。(笑)さらに経常赤字国の赤字は膨らみ、第二のギリシャやスペインが続出するでしょう。

ところが、それだけの犠牲を強いて、日本に大きなメリットがあるのかと言えば甚だ疑問と言わざるを得ません。既に世界一の債権国であるにも関わらず、円高デフレ不況に喘いでいるのですから、そんなに儲かったなら、もっと酷い事になるのではないでしょうか。

つまり、貿易黒字で豊かになる国は、海外依存が大きい輸入大国でもあるのです。国内で調達出来るものが限られる国、すなわち、それは発展途上国を意味します。日本のように、資源系以外に世界から買うものがない国は貿易によるメリットは限定的と言うのが偽らざるところです。

いくら稼いでも、例えば直接投資の場合、海外で得た利益は大半が現地に再投資という形で還元されます。輸出で得た外貨も、例えば米国債を買ったり、何かに投資されますから死に金になる可能性が高く、有効需要には廻って来ません。

輸出企業が外貨を円に替えて国内の支払いに廻した場合は有効需要が望めますが、それなら元々国内で商売すればよかったのです。それだけの生産力、供給力があるなら、国内資金で賄うべきです。外貨である必要はありません。

輸出しかないと錯覚し、円高に対する競争力をつける為に給料を上げられない状況で国内に還元された資金は内部留保に回ります。そのせいで日本の企業は500兆円以上もの内部留保を持つに至りました。

つまり前からしつこく言っていますが、日本のような前例のない超先進国が発展するには、ひたすら国内に国内から投資するしかないのです。つまり内部留保などの眠っている資金を動かし、付加価値の質量を高める、これしかありません。

そこで、国内には需要がないなどと言う詭弁が登場する訳ですが、その件に関してはいつも述べていますし、長くなるので省略します。結論的には昨日と同じになりますが、最善策が沢山あるとも思えません。今の日本には「政府主導の公共投資」が正解ではないでしょうか。

従って、技術立国と資源大国は外需依存を前提にすれば成り立たず、内需に目を向ける限りは両立すると思われます。全盛期の米を見れば分かるというものです。

 

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

> 技術立国と、資源大国は両立するのか(?)

・・・我が国の場合、上記仮題は”YES”であり又将来に向けての唯一の自立自尊の日本という国家の存在意義を成立させる、必要かつ充分条件を満たす要件であります。

・・・がんばれNIPPON・・・

投稿: Carly | 2012年10月 2日 (火) 04時34分

> 技術立国と、資源大国は両立するのか(?)

・・・上記仮題は”YES”である。

・・・国防(外交力)の増強と食糧・水の自給が根底にあっての話。他国は全て敵であることが尖閣(これを契機に沖縄への侵攻が・・・)・竹島への情報戦の次が武力による実効支配

・・・国土増強をメインとした、内需拡大が経済・デフレ対策の肝である。

・・・なので、一日も早く安倍さんに交代して欲しいですね!!!

投稿: Carly | 2012年10月 4日 (木) 03時09分

> 日本のような前例のない超先進国が発展するには、ひたすら国内に国内から投資するしかないのです。つまり内部留保などの眠っている資金を動かし、付加価値の質量を高める、これしかありません。

・・・つまり内部留保などの眠っている資金を動かし、付加価値の質量を高める・・・これに尽きるでしょう。。。

投稿: AZ生 | 2012年10月 4日 (木) 09時46分

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