新説・デフレの正体
当ブログは、消費税の増税と、TPP への参加には断固反対です。
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アルファブロガーで経済学者でもある池田信夫さんという方は、原子力や慰安婦問題などで参考になる記事を書かれていて尊敬しているのですが、肝心の経済に関してはよく分からない人です。先日、こんな記事を見つけました。
自由貿易は消費者の利益になるのです。これを簡単な例で説明しましょう。と言うのですが、筆者にはとてもそうは思えません。皆さんも考えてみて下さい。
日本では100万トンの米と100万台の携帯電話をつくっており、ベトナムでは米100万トンと携帯電話10万台をつくっているとします。
・日本:米100万トン・携帯電話100万台
・ベトナム:米100万トン・携帯電話10万台
日本では米100万トンに使う資源で100万台の携帯電話を生産できますが、ベトナムでは10万台しかつくれないとします。ここで日本で米の生産をやめて携帯電話をつくり、米を全量をベトナムから輸入したら生産量はどうなるでしょうか?
・日本:米0トン・携帯電話200万台
・ベトナム:米200万トン・携帯電話0台
つまり全体では米の生産量は変わりませんが、携帯電話の生産量は90万台増えます。これを比較優位といいます。お互いに得意な分野に集中して、他国から輸入することでみんなが利益を得られるのです。
(さすがに携帯電話を世界中で、同じような価格で作る事は困難でしょう。)
ベトナムで携帯電話10万台の価格と米100万トンが同じ価格なら、携帯電話製造にかかる資源が日越同じとして、ベトナムの米は日本米の10分の1の価格になります。確かに、それは有り難いと思うのが人情です。ところがそうは問屋が卸すでしょうか。(?)
例えば携帯電話が一機10円として、それを前提に金額ベースで計算します。
・日本: 米1000万円・携帯電話1000万円
・ベトナム:米 100万円・携帯電話100万円
これを両国民に均等に行き渡るように得意分野に特化して生産をすると
・日本: 米 0円・携帯電話2000万円
・ベトナム:米 200万円・携帯電話 0円
となり、貿易をすると
・日本:米(輸入)100万円・携帯電話1000万円+(輸出)1000万円
・ベトナム:米100万円+米輸出100万円ー携帯電話(輸入)1000万円
となります。これを GDP 換算してみると
・日本: GDP1900万円で 貿易黒字が 900万円
・ベトナム:GDP -800万円 貿易赤字が 900万円
となる訳です。。これでいい訳ないでしょう。(笑)これで正常な関係である訳がありません。第一払えませんから日本が電話を差しあげるだけ、という事になりかねないのです。
(米は、どこで作っても同じようなもの、統一価格でもいいかもしれない?そうすれば平和かも。。)
いや、そうではない。購買力平価で評価すべきだとおっしゃる貴方、目のつけどころがシャープ、、ではありません。(笑)では米の価格が日本とベトナムで同じとしましょう。
・日本: 米1000万円・携帯電話1000万円
・ベトナム:米1000万円・携帯電話1000万円(何と一機日本の10倍!)
これを両国民に均等に行き渡るように得意分野に特化して生産をすると(当然ベトナムの携帯電話は生産しません)
・日本: 米 0円・携帯電話2000万円
・ベトナム:米 2000万円・携帯電話 0円
となり、貿易をすると
・日本:米(輸入)1000万円・携帯電話1000万円+(輸出)1000万円
・ベトナム:米1000万円+米輸出1000万円ー携帯電話(輸入)1000万円
となります。これを GDP 換算してみると
・日本: GDP1000万円で 貿易黒字が 0円
・ベトナム: GDP1000万円で 貿易黒字が 0円
こんなバカな話がありますか。安い電話を作る技術のないベトナムの丸儲けです。これでは貿易する意味がありません。それが問題だからこそ為替っちゅうもんがあるのです。では為替で日本がベトナムの倍のレート(円高)とします。
・日本: 米1000万円・携帯電話 1000万円
・ベトナム:米 500万円・携帯電話 500万円
これを両国民に均等に行き渡るように得意分野に特化して生産をすると
・日本: 米 0円・携帯電話2000万円
・ベトナム:米 1000万円・携帯電話 0円
となり、貿易をすると
・日本:米(輸入)500万円・携帯電話1000万円+(輸出)1000万円
・ベトナム:米500万円+米輸出500万円ー携帯電話(輸入)1000万円
となります。これを GDP 換算してみると
・日本: GDP 1500万円で 貿易黒字が 500万円
・ベトナム: GDP 0円で 貿易赤字が 500万円
これって、どうなんでしょうか(?)どう考えても持続可能でないし、そもそも関係として成り立っていません。それにいずれの場合でも、GDPが貿易をしない元の状態より減る事が気になります。
つまり物は増えても収入が減る事を意味するのです。さらに、いくら貿易黒字が増えても、支払ってもらえないのでは貿易をする意味がありません。ベトナムの場合、はなから破綻しているではありませんか。いえ、この仮定の話ですから誤解なきよう。(笑)
これって何かに似ていますね。そうです。今の日本です。デフレの正体はこれだったのか。。日本対世界に置き換えると分かりやすいのですが、日本は貿易をする事によってGDPを減らしています。さらに、日本の対外純資産250兆円は世界の支払不能な赤字の上に成り立っているという訳です。
この計算での貿易黒字の500万円は日本の貯蓄(対外純資産)を意味します。本来2000万円のGDP だったものが1500万円のGDP と貯蓄500万円に分かれました。
貯蓄はあるものの、GDPが減って給与が減りデフレになるという縮図が、この計算に表されています。しかもこの貯蓄の500万円が戻って来る保証はありません。
日本とドイツのGDP の伸びが今一である理由が分かります。それでもかろうじて成長しているのは内需が少しづつ拡大しているからに他なりません。日本の場合は政府負債がマイナス成長をカバーして来ました。
貿易が比較優位で世界を富ませるというのが真っ赤な偽りだという事がお分かりいただけたのではないでしょうか。それは個人の能力と生産性が同じだが得意分野が違う国同士の話であって、今のように、それが歪な世界では公平になり様がないのです。
従って、関税ゼロの自由貿易は先進国にとって有利な事など一つもありません。TPP ?あり得ないでしょう。参加国の中で日本が一番の先進国ですから一番損をします。
追記
分かりやすい参考例を提示していただいた池田信夫氏に感謝致します。
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結局今回の仮説は「我が郷は足日木の垂水のほとり」さんが、いつも書かれている事と同じ結果でした。
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コメント
こんにちは。
私は池田氏をあまり好きくありませんけども、この御仁は経済に関しては政治を甘く見すぎなんですね。
例えば、今記事のベトナムの例ですが、仮に米を全てベトナムに依存したとしましょう。しかし、ベトナムは共産国です。いつ政治の風向きが変わるか分かりませんし、民主化クーデターが起きて政変が起こってしまい、新しい政府がそれまでの共産政府の方針を全てひっくり返してしまったら、日本人は米をどうやって調達すればよいでしょうか?
池田氏は確かTPPも推進派だったと思いますが、TPP推進派も政治をかなり甘く見ています。
『「ABCD包囲陣」を忘れたのか? 君達は歴史を勉強したのか?』
と聞きたくなります。
米国では「リメンバー・パールハーバー」が合言葉のように言われるらしいですが、日本人の私からすれば真珠湾攻撃は大和魂の炸裂であり、『よくぞやった!』と先達に敬意さえ払えども、米国人からしたら
『やられる前にやれ!』
という教訓でもあります。それと同様に、日本にも
『ABCD包囲陣を忘れるな!』
という合言葉が必要でしょう。戦後の自虐教育と平和ボケで「国防」の概念がすっかり欠落した人間は、TPPのような「夢物語」に浸って満足しているのでしょうが、私などからすれば、自由貿易なんざとんでもない話です。
資源がない、食料時給率も低い、国防は他人任せ、こんな日本で貿易に特化したらどうなるか? すでにお隣りの韓国は生殺与奪権を日本と欧米に握られてしまいました。それと同じことになります。
日本からレアガスを輸入できなくなっただけで、韓国の工場はほぼ全て停止し、全財閥が倒産、韓国のGDPの半分が吹っ飛びます。
しかも、日本は「合法的」にレアガスを韓国に輸出停止することができます。WTOの条約の中には
「安全保障に関わる場合」
は、輸出を止めていいことになっていますが、ま、当然ですけど、韓国は竹島を武力で占領したわけですから、すでに禁輸の大義名分は日本にあります。
で、もし、立場が逆ならどうでしょうか?
日本が韓国からのレアガスがなければ工場を動かせないとして、韓国がいわゆる従軍慰安婦問題や竹島問題で
『安全保障に関わるニダ!』
なんて宣って輸出停止したら、日本は終わりです。
幸いにして、日本は世界一の技術を持ち、特定アジア三国とロシア以外に敵対国がない国ですから、“たまたま”、平和に貿易を行えていますが、かつて米国にルーズベルトという反日狂犬大統領が突如出現し、日本を虐め倒したように、世界はどう変わるか分かりません。
それもまたリスクマネジメントであり、大東亜戦争前の当時の日本人もまた、“まさか”、米国と敵対するなどと夢にも思わなかったわけで、だからこそ、資源の80%を米国に依存していたのです。
「歴史は繰り返す」とは言いますが、反日クリントン政権が突如出現したように、日本人もまた変わっていません。
貿易は日本の宿命でもあります。だからこそ、大東亜戦争の過ちを繰り返さぬよう、生殺与奪権を決して他国に渡してはいけません。しかし、多少の生殺与奪権は譲渡しなければ貿易は成立しませんから、例えば、日本からのボタン一つで使用不能にできる兵器を輸出するなど、相手の生殺与奪権もまた握らなければなりません。
それこそが「Win & Win」の関係であり、対等であります。
申し訳ないけども、池田氏の理論は稚拙だと言わざるを得ません。
貿易は常に「交換」ですから、生殺与奪権もまた「交換」しないと貿易は成立しません。
私はそう思います。
投稿: 硫黄島 | 2013年2月27日 (水) 02時20分
比較優位なんていつの話だということです。
池田氏は、人を都市に集めれば経済成長するなどという順序が逆になったようなことを言っていますし、安倍さんより橋下のほうが頭が良いともいっています。
本質を見ることがまったくできない人です。
また安全保障についてもまったく関心のない人です。
ブロゴスに集う人は、全員左翼かこういった世界標準から外れた人ばっかりです。昔はそうでもなかったのに。
日本では世界標準の人は抹殺されるようですね。
投稿: 八目山人 | 2013年2月27日 (水) 08時52分