ボーイング787電池トラブル続編
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【ワシントン=柿内公輔】米航空機大手ボーイングの最新鋭機「787型機」(B787)が機内での発火トラブルなどにより世界で運航停止となっている問題で、米運輸当局の調査が長期化の様相を呈している。
発火した電池の製造などに携わる企業が世界8カ国にまたがるうえ、米議会も近く調査に乗り出すからだ。世界で運航されるB787の約半数を占める日本航空、全日空への運航面の影響が懸念される。
中略
全日空はB787の運航停止に伴い、1月に国内線と国際線で計459便が欠航し、1月の売上高が約14億円減少した。2月も379便の欠航を発表。日航も2月4~17日に国際線計14便を欠航する。欠航が長期化すれば代替機を用意できず、3月末からの新しいダイヤの大幅な見直しは避けられない状況だ。(産経新聞)
最近報道が減って来たボーイング787のトラブルの件ですが、以前お約束した通り、筆者の友人で仕事仲間でもあり、某大手電機メーカー系エンジニア某氏の、筆者の記事「金曜日に作られたボーイングには乗るな(?)」と「濡れ衣は、相手がアメだけに着せられやすい。(?)」に対する見解を紹介致します。
少し修正が入った後、掲載許可が下りました。そこで当人の意志を尊重し、一語一句原文のまま掲載致します。
社長の仰る通り、787の不具合そのものがGSユアサの責任となるのはおかしな話で、最終的にはタレス社とユアサの協議になる可能性はあっても、責任の所在はタレス社ですよね。
それにしても、今回の不具合を鑑みて、やはりバッテリーそのものの不具合というのは考えにくいと思います。過充電の形跡は無かったということで、本格的にバッテリーのせいにされそうな状況ですが、過充電だけが発火の原因と考えるのも乱暴な話です。
リチウムバッテリーは、温度管理も重要なファクターです。でも、航空機の場合、高度から考えるとマイナス40~50℃にはなるはずですし、その温度ではリチウム系バッテリーは動作しません。
となると、バッテリーは常温に近い状態で保存できる環境に置かれていたか、若しくはヒーターなどで、プリヒート(予め動作前に暖めること)されていた可能性が高いと思います。
もしプリヒートしていたのならば、そのための2次バッテリーが必要ですし、それが暴走したら、常温なのに暖められたり、低温なのに作動しなかったりして、バッテリーに大きなダメージを与えることになります。
ましてや、温度変化の要因や範囲が大きい航空機の内部においては、よほどの管理をしていない限り、大きな故障の原因と直結します。たとえば、機体内部の加減圧をするタイミングや、車輪の出し入れ時の機体内の気圧や温度変化、搭乗人数の変化による積載量や消費電力の差異など、考えるだけでも過酷な要素はたくさんあるかと思います。
また、リチウム系バッテリーは、衝撃に弱いという面もあり、繰り返しの飛行テストの際に過激な試験もやるかと思います(かなり乱暴な着陸を意図的にするなど)。バッテリーに対するきちんとした衝撃吸収措置が取られていたかも疑問が残ります。すぐには症状がでなくとも、じわりじわりと効いてくることも多々あります。(疲労骨折のように)
社長が仰られるように、配線ミスというのは重要なファクターだと思います。ただ、唯一気になるとすれば、単純な配線ミスであれば、制御的に色々なアラートが得られる可能性は高いと思いますので、我々の設計の中では、このような時に以下のような点を疑います。
・ 配線(接続)はきちんとできていたのか?
⇒ 一箇所抜けていても、システムとしては動作するものもあります
また、航空機内は複雑で、しかも手が容易に届かないような箇所も多々あります
・ 接続コネクタは、航空機の振動で抜けないような処置をきちんとしてあるか?
⇒ 抜け止めねじなどの対策が講じられていたか?またそれがきちんと締められていたか?
・ 配線が、駆動領域の近くにないか?
⇒ 繰り返し駆動で配線を挟んだり、負荷をかけてしまうような構造になっていないか?
・ メンテナンスの際に、配線を着脱するような部位があるか?あればどのような接続不良の
見落とし対策を取っているか?
⇒ 接続後の通電テストでは、単体は分かってもシステムとしては確認が不十分な場合がある
・ 乗客、乗務員の操作する範囲や、貨物の移動・衝突などで、ダメージを受ける配線部位はないか?
⇒ 直接バッテリーと関係ない部分も、バッテリーの過負荷に影響する場合がある
・ 制御用の信号配線と、電圧配線とが接近していないか?
⇒ 信号線に電圧ケーブルからのノイズが乗りシステムダウンする場合がある
・ 通常動作では発生しない、極端な電力消費が発生するケースはないか?
⇒ 急激な放電によるシステムのエラーやダウンが起こることもある
・ 落雷などのサージに際して、万全な処置は施されているか?
⇒ 落雷を受ける場所によっては、内部に放電(空間を電気が飛ぶ)することがあり、ダメージを与えることがある
・ 急激な気温差による結露などの対策は取られているか?
⇒ 航空機内では、どの場所であっても温度変化は避けられない。結露すればショートすることは十分に考えられる
・ (プリヒートしているものとして)2次バッテリーは温度差をどのように管理しているか?
⇒ プリヒートはバッテリー全体の温度管理するのは難しく、尚且つ急激な変化に対応するのは難しい
・ (プリヒートしているものとして)急激な湿度変化による影響を考慮されているか?
⇒ 温度差の⊿t℃の差は少なかったとしても、土地柄などにより湿度が異なり、結露の度合いは異なる
その他まだまだありますがきりがないので。。。
バッテリーはとても繊細ですが、きちんとした使い方をすれば、たかだか数十台で2台もトラブルが出るわけはありません。燃えたのがバッテリーだからと言って、バッテリーが悪いというのは短絡的過ぎます。
むしろ、他のシステム・構造原因が潜伏しているのだと知る、良いきっかけだったはずです。それをバッテリーに問題を押し付けているようでは、将来もっと大きな解決できない問題を抱えることとなるでしょう。
ですから結論として、私も田中社長と同様に、バッテリーのせいではないと思います。ブログ中では単に「配線ミス」と書かれていますが、上記のようなことも含めて「配線ミス」だと言えると思いますので、繰り返しですが私も田中社長の意見に一票という感じです。
やはりエンジニアらしく、(と言ってもこのエンジニア氏は機械の方が専門です)見ているところが違います。原因究明がいかに大変かということです。こういう、問題をミクロに分析するだけでなく、俯瞰で見られる優秀なエンジニアが日本には5万はいないかもしれませんが、1万人くらいはいるのではないでしょうか。(笑)いずれにしても頼もしい限りです。
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