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2013年3月 2日 (土)

バカの壁の前にたたずむ経済学者

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「物理学の専門家は、それでも第一級の物理学者たり得るが、経済学者でしかない経済学者は第一級の経済学者どころか、社会に対して迷惑になる」(ハイエク)

経済学程、未来を予測する事が難しい学問はないとよく言われますが、その点で日本の経済学者はメチャクチャではないでしょうか。言う事が人によって全く正反対だったりするからですが、素人が考えても、そりゃあないだろう、という事を平気で言う人が経済学者やエコノミスト、あるいは経済評論家に大勢います。

池田さん、藤巻さん、野口さん、大前さん等々、数え上げればきりがないのですが、昨日見たYouYube で浜矩子さんが妙なことを言っていました。この方も色々やってくれますからブログネタに苦労しません。(笑)

アベノミクスは失敗する、言わば玉手箱で、古い考え方の経済学だと言っているのですが、百歩譲ってそこまでは聞き流せるとしても、話が自動車関係になった時には耳がダンボになり目が点になったのです。

円安効果の話の中で、日本の基幹産業である自動車などの製造業と言えどもグローバル化の中、世界中から部品を買っているので、円安になれば完成品は売れるかもしれないが、部品の調達コストが上がるので、いい事ばかりではないというものです。そう言えば、この人は1ドル50円になるとか言ってましたっけ。。

知らない人が聞いたら本当かと思ってしまいます。なぜ世界最強の日本の製造業が、ここまでの苦境に立たされたかという事を知らないのでしょうか。中でも自動車は簡単には真似が出来ない領域なので被害は少ないのですが、比較的簡単に真似が出来るというか、部品さえ揃えば組み立てが出来、一応商品の体をなす電機製品は、ここ数年間続いた円高で大変な事になりました。海外の安い部品を使っていたなら、ここまでの苦境に立たされる事はなかったのではないでしょうか。

1130sharp4k2k(シャープが商標登録をしてブランド化を進める「IGZO」。高精細で低消費電力が持ち味の高付加価値品だという。)

そのメカニズムに関しては、シャープを例にとります。液晶TVは 米 RCA 社が1968年に発表した時計用表示パネルをベースにシャープで研究開発が行われ、現在のような凄い製品展開になりました。

その過程をみると、初期の段階では、とても現在の製品に至る事がイメージ出来ません。想像を絶する試行錯誤とイノベーションに次ぐイノベーションのプロセスがあった事は想像に難くないのです。

RCA社から、電卓の場合は数十ミリ/秒という応答速度が必要となり液晶では対応出来ないと言われたものを、まずその壁を越えます。そこから大幅に飛躍して、携帯電話用TFT液晶、さらに小型TV用ディスプレイを開発しました。

それだけでも凄い話なのに、さらに視野角の改良、大型化、高精細化の進化を経て現在に至るのですが、最初にこのデバイスの元を発明した人も、ここまでのものになる事は全く予想だにしなかったでしょう。

そのくらい時間と開発費をかけている訳です。従って、あのきれいな画像の大型ディスプレイは日本独自で、殆どがシャープの技術と言って差し支えありません。当然その実った果実は独占されるべきです。ところがご存知のように、横からそのシャープが得るべき果実をかっさらって行った会社があるのですから、たまったものではありません。

韓国のS社とL社です。勿論BKD 的日本人も関与している事は間違いありません。大切な技術が漏洩しました。その後数十件に及ぶ特許係争を経てシャープの事実上の勝訴に終わり40インチ以上のディスプレイはOEMとしてシャープの言い値で S社が買い取る事に、さらに一定の賠償金という和解の結果に至ります。

ところが、その後 S社は資金力にものを言わせ、台湾や米の企業まで巻き込み壮絶な値下げ競争を始めたのです。政府までが加担し為替介入でウォン安誘導します。円高に無関心だった民主党政権下、シャープが狙い撃ちにされたのです。

その結果はS社も一説によると500億円とも言われる大赤字を計上し、液晶部門を切り離す事になります。狙い撃ちされたシャープは大損害を被り、ご存知のような存亡の危機に立たされるという訳です。

このように、アンフェアな勢力が介入する事で知的財産に対する正当な富の分配を乱し、技術の正常進化を妨げる事は明らかです。その問題を解決しない限り日本の将来の暗雲は払拭されません。

話が思い切り横道にそれましたが、(笑)シャープがこだわっていたものは何でしょうか。製品のコストが多少高くついても、品質の維持や技術の漏洩を防ぐ、あるいは関係各社の利益確保の為に垂直統合型の産業構造にこだわっていたのです。

そこに開発費が殆どゼロの会社に、超安値で殴り込まれれば世界市場はあっという間に席巻されます。世界の一般人レベルでは、S社のクオリティで十分だからです。ところが、品質にうるさい日本の市場だけは席巻出来ませんでした。

日本の特殊性とよく言われますが、電機だけでなく自動車もその特殊性故、日本市場は国産の天下です。先進国でここまで外車比率(5%)が低い国はありません。それは単に愛国心などと言うより、日本人に適合したマーケッティングと品質にあります。

その自動車産業が強い秘訣は、電機などと同じで垂直統合型にこだわっているからです。系列という言葉が生まれたくらいで、高いレベルでの開発意識が共有出来る協力企業とのコラボが、より高い品質を生むという考え方です。

そこはコスト主体の合理性に徹する米や、裾野のない韓国などの国際水平分業型とは全く違うところです。そこを理解しないで経済学者が務まるとは思えないのですが、知らないのだとすれば、是非現場を勉強して下さい。

とは言っても、超円高時代に日本の何社かは韓国辺りからの部品調達を検討していました。日本製品のアドバンテージがどこにあるかを理解していた先人の教訓が生きていないようです。さらに買い叩かれ続けた日本の部品メーカーの立場がありません。ここもモラルハザードという暗雲がたれ込めています。

外国人経営者のニッサンなどは特に日本製部品にこだわらないようです。安い部品を調達し利益率を上げる事が至上命題に見えます。何と言っても経営者のバカ高い報酬が経営姿勢を物語るのですが、典型的な欧米型格差社会です。

しつこいようですが、もう一件、浜氏は「日本は成熟しきった国だから経済成長などというものは望めない、質を上げる事に道を求めるべき」と言っていました。これには目だけでなく、顔中の部品が点になったのです。あばたか(!)(笑)

経済の基本である付加価値をご存じないのでしょうか。これは不思議です。GDP は年間における付加価値の総生産量を表します。その付加価値とは、原材料に対し、人間が手を加えたもの、すなわち労力です。労力の総量をお金に換算したものをGDP(国内総生産)と言うのです。

Phuket01 (こんな極楽にいれば、あくせく働こうなどという気にはならないだろう)

という事は、労働時間や労働人口に質の要素が乗ぜられます。例えばタイで一人の労働者が1時間働くと時給が100円だとします。日本人は?仮に1000円だとすれば、計算が合いませんね。同じ人間だというのに。。その10倍という差はどこからくるのでしょうか。

(因に、実際は一人当たりのGDP がタイの5400ドルに対し、日本の4万6千ドルですから、約9倍なので、タイが100円なら、日本は900円になります)

そうです。質なのです。労働の質(付加価値)が違うのです。日本人は10倍の価値を生むから10倍時給が高いという事になります。では、タイの人が頑張って200円を勝ち取ったとしましょう。なせ勝ち取れたか、それは2倍価値ある仕事が出来るようになったからです。労働の質が上がったのです。

例えば同じ部品数で同じ大きさの車があったとします。方や失礼ですが中国製で、方や日本製のクラウンとしましょう。値段が同じなら、あなたはどちらを買いますか。当然クラウンです。なぜなら質が圧倒的に高いからです。

007_o (顔のデザインには賛否両論あるものの、内容はどんどん良くなっているクラウン/その静粛性は天下一品)

ではその中国製の2倍の価格ならどうしますか。それでも当然クラウンですよね。なぜなら質が2倍以上高いからです。これをトヨタが努力して3倍の価値にしたとしましょう。部品は増やさずにです。難しい問題です。一見何も変わりません。

ところが、その為には時間と費用が莫大にかかります。繰り返し実験もし、車を何十台も潰したりするからです。その結果、滑らかさに拍車がかかり、えも言われぬ恍惚の世界を演出してくれたとしましょう。

あなたはそれに対して3倍の価格は不当であると言うでしょうか。言いませんよね。つまり、質(付加価値)を上げる事は立派な生産行為なのです。これを理解しない経済学者とは一体なんでしょうか。理解に苦しまざるを得ません。

従って、日本が成熟社会だから経済成長出来ないなどと言うのは、とんだ大ボラという事になります。これだけの付加価値創造力があるのに、賃金が上がらないデフレという事は、代わりに円が上がるだけなのです。逆に円が上がるからデフレになるとも言えます。

結論として、何もいい事がなかった世界との関わりを限定的にすれば、後は日銀次第で無限に成長出来るという訳です。そこに気付いた安倍、麻生コンビが日銀の総裁に積極緩和派を推しているのです。黒田さんで決まり(?)さて、どうなるでしょうか。いずれにしても楽しみです。

 

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コメント

こんにちは。

いつも勉強させて頂いております。工業などの専門的なことに関してはまるで分からない凡才の私ですが、そんな私にでも分かる(つもり)記事をいつもありがとうございます。

本来は、凡才無知の私が勉強して田中様の知識に付いて行こうと努力しなければいけないのですが、なにぶん、堕学生時分の出遅れがあらゆる分野で大変な差異となっています。ご容赦下さいませ。

さて、浜某氏でありますが、一昨年、たまたまテレビを見ておりまして、確かTBSのサンデーモーニングだっと思いますが、民主党政権が為替介入を行ったときに、某は

『いつ紙屑になるかも分からないドル(米国債のこと?)を10兆も買い込んでどうする?』

と為替介入に文句を言うておりました。ま、意味のない為替介入には、確かに文句言われても仕方ないでしょうが、米国債を『いつ紙屑になるかも分からん』とは、一体全体何を根拠に言っているのかと、田中様同様に目が点でございました。

もし、現在の世界のパワーバランスの中で米国債がデフォルトするようなことがあれば、世界中が大混乱に陥ります。

中東では未だに共産主義者が返り咲きを狙い、支那から援助をひそかに受けて再起の時を狙っておりますし、ドイツは中道保守の与党キリスト同盟さえもかつての自民党のように左傾化しており、独社会民主党は典型的な左翼ですし、アフリカは今や第二の中東として、自由主義陣営と共産主義陣営が激しく覇権争いをしています。

米共和党は、この世界の覇権争いを鎮静化できる唯一の勢力として日本の再軍備を求めています。

つまり、米共和党は仏国や独国に何等期待しておらず、日米英豪のシーパワーによる共産陣営+αとのパワーバランスを考えています。

米国債のデフォルトは、この反共陣営が劇的に退化することを意味します。

それを易々と言ってのける某氏には、まさにお口あんぐり状態です。

そこまで言うなら、証拠を出せと。

確かに、これから先、米国のパワーは弱くなります。

1945年に世界のGDPの半分は米国が稼いでいましたが、IMFによると現在は約18%です。

これは、衰退と見るよりも、新興国の台頭と見る方が正解かと思います。相対的に見れば、衰退ともとれますが。

ならば米国の力が弱まったのかと言えば、それは違います。格差問題や貯蓄不足の問題もありますが、経済成長はしています。単に、他が強くなっただけなのであり、これまでの米国一国による覇権が、多国間によるパワーバランスに転換するだけであります。

世界基軸通貨である米ドルは、世界の金融市場で40%の占有率がありますし、いくら外国人保有率が高いといっても自国通貨建て国債です。簡単にデフォルトするはずがありません。

米国債を保有する外国人については、それこそ、米国の伝家の宝刀である紛争で、例えば、尖閣での日米支の武力衝突を理由に、支那が持つ米国債を大統領の一声で紙屑にしてやればよいのです。そのくらいのことは、米国ならいくらでもやります。律義な日本人とは違いますから。

結局、私から見ると某氏は典型的な反米主義者の反日左翼なのです。米国にひっくり返ってもらいたい願望の現れだと私は思います。

こう言うと、私のことを親米ポチだと呼ぶ人がたまにいますが、親米でも何でも結構です。親支朝左翼より1億倍は褒め言葉だと思います(笑)

私は日本は憲法改正し自主防衛し、核武装もして、米国の同盟国に相応しい国家になるべきだと思っています。それは、戦後からこれまで日本がなにゆえ米国から冷遇を受けたのかを考えるにあたり、全て自業自得だと思うからであります。

米国の文句を言うのは、まずは自らの襟を正し、真の友情の証を米国に示してからでしょう。戦争や原爆は遠い過去の話です。あくまでそこにこだわるならば、隣の反日国家群と同じでしょう。

現実的に今の日本は資源もないし、反日国家に囲まれた環境にあります。つまり、孤独には生きていけません。よって、友達にするならば、それは、力強くて、反日でない国でありましょう。消去法で米国ということになります。

某氏のように反日支那を溺愛するような者の意見には、何等耳を貸す余地もありません。

投稿: 硫黄島 | 2013年3月 2日 (土) 01時42分

> バカの壁の前にたたずむ経済学者

・・・バカの壁って→ミンス・シャミン・ミライ等のお花畑全員、新聞テレビの大手マスコミの殆ど全て、外務省・財務省・日銀の一部の媚中・米の反日分子、カルト思想の擁護を受けた政党・・・彼等は過去・現在・未来の時間軸の歴史的な思考・分析・論理性・推理力及び”力”のバランス感覚が欠如し、目先の損得感情・雰囲気で羊達を誘導・洗脳しようと活動している悪魔の手下。テレビ、新聞に出てくる経済学者はそのまた手下が大分混ざっている様ですね。電痛は金の亡者の番頭らしい・・・かな?

投稿: かかし君 | 2013年3月 2日 (土) 16時05分

グローバル賛美の馬鹿道化師達への渾身のエントリーですね。拍手です。

それはそうと田中様、個人的に残念なニュースです、個人的に大好きなエネループがパナソニックブランドのパッケージをまとう事になってしまいました。エネループはその思想からロゴまで完璧で我が家に無くてはならない商品でした。パナソニックも野暮な事をするなあと。残念。技術に敬意をはらえない会社ってどうなんでしょう?は米3大自動車でも車種にブランドは残しているというのに。。

投稿: blue | 2013年3月 2日 (土) 18時33分

日本人はブランドを粗末にする癖があります。謙譲精神から、自分たちのものは大した事がないと思うからでしょうか。
まあ、日本自体がブランドという事もありますから。。(笑)三洋を売ったパナソニックとしては致し方ないのかもしれません。
それにしても、ニッサンのセドリックとグロリアが消えたのは許せません。
外人と外様が無粋な事をしました。とんでもない事です。生え抜きがなぜ黙っているのか分かりません。

投稿: 田中 徹 | 2013年3月 2日 (土) 20時47分

三洋は売ってもエネループのロゴを大事にして
欲しかったなあと。セドグロも残念でしたね。
セダン受難とはいえね。セドグロをフーガクオリティ
にすればよかったのに。

投稿: blue | 2013年3月 2日 (土) 21時08分

> 日本人はブランドを粗末にする癖があります。

・・・フーガって風雅→国語辞典によると”高尚で、みやびな趣のあること。また、そのさま”を表現しておりますがセドリックとかグロリアの方が遥かに良い様に思います。フーガの車自体は(フロントグリル以外は)素晴らしいので残念。

サンヨーは斜めドラム式の洗濯機の発明(パナが横取り)とか、昔ではニッカド式の懐中電灯(デザインも秀逸)等素晴らしい商品を世に出したユニークな企業文化があります。折角の良い持ち味なので、パナソニックさんは上手く取り入れてくれれば良いのですが・・・隣国(中・台・韓)の”安さで勝負”に対しては企画のセンス・ハイテクでしかアドバンテージが確保出来ませんからね・・・

投稿: Carly | 2013年3月 3日 (日) 01時48分

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