永遠にゼロ(後編)
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前回の続きです。設計者の皆が皆そういう考え方だとは思いませんが、最初に技術ありきと考える人が少なからずいるのは確かなのです。自動車メーカーのような優秀な技術者が集まるところでさえそうなのですから、他は推して知るべしではないでしょうか。
その設計者は優秀ではありますが自説を曲げない事で有名だったので、筆者は反論を呑み込みました。(笑)何を言ってもああ言えばこう言うで絶対に折れない人はどこの世界にもいるのです。ホンダとて例外ではありません。そういう人との議論は時間の無駄という訳です。
話を戻します。ご存知のようにメーカーというところは日頃から基礎技術を磨き系列企業などとコラボして要素技術を開発している訳ですが、何の目標もないのに盲滅法というのでは効率が悪いのです。将来見通しが必要である事は言うまでもありません。
その絵(将来構想)を描く為に幅広い知識や他国、他メーカーの情報が必要です。さらにそれらの情報を元に、将来の姿をイメージする想像力が求められますが、通常その作業はエンジニアが中心になるケースが多いようです。デザイナーの地位が先進国中最低の日本は特にその傾向が強いのです。
(人なつっこい顔とは裏腹に、メチャ怖かったという故本田宗一郎)
ところがホンダは他のメーカーとは違っていました。エンジニアがデザイナーの話を真面目に聞くという、日本では珍しい会社なのです。なぜかと言えば、故本田宗一郎がデザインを非常に重視したからです。
この頑固なべらんめいおじさんはデザイン室に入り浸りでした。自ら形を作ったり決めたりもします。そのセンスは決して悪くなかったのです。尤も、中小企業だった昔はエンジニアとデザイナーの明確な線引きはなかったようです。
皆でワイワイガヤガヤしながらプロトを作り上げていったと言います。その名残が「ワイガヤ」と言う言葉として残っているのですが、筆者がいる時も各専門分野からチーフクラスが集まり、社外でよくワイガヤ(議論)していました。
そういう背景からか、日本企業では珍しくデザイナーとエンジニアの仲は例外的に悪くありませんでした。と言うより、むしろデザイナーがイニシアティブをとるケースも少なくなかったのです。
そのいい例は初代シティや2代目プレリュードです。盛り込むべき技術が特になかった設計屋さんは、デザインに大いに期待したといういきさつがあります。「今回はデザイナーにおんぶにだっこだ」と言っているのをよく聞きました。
あのトールボーイ(初代シティ)は、お父さん(本田宗一郎)に気に入られた事もありますが、デザインパフォーマンス最優先でデザインされたのです。プレリュードの場合はシティの例があったのでなおさらデザイナーは強気になりました。
当時の室長(部長相当)がフルスケールの図面の前でエンジニアに対し黒いテープで目標とするシルエットを示したのですが、それは驚いた事に、数ミリを争う世界で、フロントエンドを従来より100ミリも下げると言う無茶なものだったのです。
これには皆唖然としました。この人はエンジニアに喧嘩でも売っているのだろうか。我々でさえ、その本気度を疑った程です。しかしボディを担当するエンジニアはノーとは言いませんでした。
「ここまでやれば世界は変わる。逆にここまでやらなければ平凡なモデルチェンジに終わるだろう」この言葉にレイアウトの大変更が検討されました。狭いエンジンルーム内の陣取り合戦です。
(フロントエンドを下げた為にヘッドライトがリトラクタブルになった2代目ホンダ・プレリュード 究極のデート車として一世を風靡する。)
しかし、さすが日本人、やれば何とかなるもんです。サスペンションをダブルウィッシュボーンに変え新設計のラジエーターは必要でしたが、見事にそのラインをクリアしました。出来上がった製品はボレロがバックに流れるコマーシャルに乗って大ブレークした事はご存知の通りです。
何が言いたいのかと言いますと、そもそも既存技術を下敷きにしてものを考える、つまり存在そのものが現実路線を尊重せざるを得ない立場の設計者には、ゼロからの発想と言うのは求められません。
手前味噌になりますが、その点デザイナーはフリーです。悪く言えば無責任でしょうか。(笑)しかしながら、そのフリーな視点がなければ新しいコンセプトの製品など生まれ様がないのです。その自由な発想をエンジニアがどうフォローするかで勝負は決まります。
「荒唐無稽」と言って拒否してしまえば、それっきりです。デザイナーの斬新なイメージと設計者の柔軟さがホンダという会社を短期間で成功に導きました。こう書いて来るとホンダという会社は何と素晴らしい会社なのかと思われるかもしれませんが、実を言えば短所もいくつか持ち合わせていました。
組織が洗練する速度を上回る勢いで急激に大きくなったせいか、「気合いで何とかしろ」という精神主義的なところもあったのです。筆者が入社した頃は、特にデザイン室には古いタイプの下士官のような上役が何人かいました。なぜか皆強面です。「なんとか方面軍がどうのこうの・・」などと言う会話も聞いた記憶があります。(笑)
その人の部下が雷を落とされているところによく遭遇しましたが、まるで軍隊のようでした。お父さん(本田宗一郎)や旧軍隊のように殴りはしませんでしたが、言葉の暴力の方が場合によっては厳しい事もあります。そのせいかデザイン室の空気はいつもどんよりとして重かったのです。
この話何かに似ていませんか。そうです。筆者には旧日本軍とダブって見えるのです。軍の無茶な要求を設計者が実現させ実戦で勝利を収めるものの、兵站や情報戦を軽んじ、精神主義的押しつけや根拠なき思い込みで人命を軽視する、これでは人命を尊重し、合理的な戦略でずる賢く動く米軍に勝つ可能性は「永遠にゼロ」です。
ホンダも、身内であるデザイナー幹部が部下を粗末に扱ったせいか退職者が後を絶たず一時期低迷しました。90年代からつい最近まで80年代の快進撃が嘘のように製品も冴えなかったのです。安易にワンボックスやミニバンの流行に乗り、持ち味であるスポーツ路線という歌を忘れたカナリアでした。筆者が退職した事も大きかったか。。(爆笑)
(まさかこの人が社長になるとは夢にも思わなかった。あのときもう少し胡麻をすっていれば良かったかも)
冗談はともかく、伊東社長になってからは見違えるようです。スポーツ路線に戻り、3つの異なるハイブリッドシステムで反転大攻勢に出たのです。それは確かな現状分析と夢ある将来ビジョンによります。ようやく悪い意味での中小企業体質を脱したかに見える社内の空気も明るいのではないでしょうか。
エンジニアには珍しくゼロから発想が出来るリーダーを得たホンダから、しばらく目が離せません。商売ではミッドウェイは2度も3度もあるようです。一緒に谷田部に風洞テスト行ってバカ話した事が懐かしく思い出されます。
(レクサスLS600HL 「ハイブリッド・ロングホイールベース」から降りて靖国神社参拝に向かう安倍首相、ぎりぎりで保守派の支持を繋ぎ止めたか)
おまけ:
今の向かうところ敵なしの自動車産業に関して言えば、欧米他が日本に追いつく可能性は「永遠にゼロ」のように思えます。
安倍さん(国のリーダー)が日本の近代史に正しく向き合い、日本のため、またアジアの独立の為に尊い命を捧げた英霊が眠る靖国に参拝し保守街道をまっしぐらに進む事が、その条件である事を付け加えます。(ムリクリか?/笑)
それにしても反日マスゴミの騒ぐ事、騒ぐ事。。
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コメント
いや~、懐かしいですね。20代前半から30台前半までの10年間を浜松市で過ごし、とあるご縁をもってホンダさんをメインとした下請け企業の生産管理室にて図面を睨みつけていた時代を思い出しました(笑)町工場のオヤジさん達に無理をお願いしながら毎日走り回っていたのですよ。ちょうどバブルが弾けた直後で単価の追及が日々厳しくなり、やれ韓国製の金型が安いけど精度がでなくて使えないねぇとか、コスト削減の為に各社のアッシーの共有化とか、我ながら少しずつ時代が息苦しくなってゆく感覚が芽生え始めてきたのを覚えております。
それでも今となってはすべて良い思い出です(笑)
あ!? 売国左翼どもですか? なんかイキイキと妄言と罵詈雑言を垂れ流していますね(爆笑)
ヤツらも開き直って無関心層に必死に訴えかけておりますが段々と通用しなくなってきていることが実のところ一番わかっているのではないでしょうか。だって伝わってくるのは見苦しさだけですので。
それよりも気になったのは局アナの太鼓持ちブリ。恥知らずにの側にいると恥知らずが移ってしまうものですね。お~怖(笑)
乱筆乱文、大変失礼致しました。
投稿: | 2013年12月27日 (金) 15時38分
田中さん
プレリュード!
よ~く覚えてますとも。2代目でカッコいいなあと思ったら、3代目はさらにボンネットが低くなり、その上フェンダーミラーからドアミラーに変更されたので一段とそれが目立っていたように思います。
その当時、他社のFF車がフロントオーバーハングが長くホイールアーチが広く、いかにも重心が前にありそうなデザインだったのに比べて衝撃的でした。
ホンダの手にかかるとFFであることがデザイン上の弱点にはならないのだ!というかんじでしたね。
ただ、その分サービスマンからは不評もあるみたいですね。手が入らないとか特殊工具が必要とか(笑)
当時の車雑誌でもデートカーとしてはソアラとプレリュードの2台がダントツ人気として取り上げられていましたね。ソアラとは随分価格が違っていたと思いますが、並んでてもまったく見劣りしませんでした。途中でリトラクタブルヘッドライトが廃止になり際立ったボンネットの低さが厚ぼったく見えるようになったのがちょっと残念でした。
安倍首相の靖国神社参拝は勇気を心から讃えたいと思います。
いつかは行くだろうと思ってはいましたが、まさに電光石火!
と思ったら今日27日は石巻に飛んでカキ食ってます(笑)すごい行動力!
Yahoo!ニュース意識調査によると
「安倍首相の靖国神社参拝は妥当?」
実施期間:2013年12月26日~2014年1月5日
12月27日現在
合計:242,300票
妥当 196,969票(81.3%)
妥当でない 45,331票(18.7%)
となってます。
また安倍首相のFBの「いいね!」が27日18:50現在66,250です。
普通の日が10,000~20,000くらいですから大絶賛ですね。
新聞、TVの類は、まあいつも調子で、なんやかんや言ってますが、こうなってくると言えば言うほど逆効果といったところじゃないでしょうか。
投稿: ポール | 2013年12月27日 (金) 19時00分
何度もお邪魔致します。期待していました続編がアップされていました。感謝です。大変興味深く読ませていただきました。前編で田中社長より自衛艦の姿についてコメントいただきました。そこで、他国の展開している艦船よりはと、条件を緩和させてください。自衛艦を含めステルス性を考慮すると「のっぺらぼう」で好きくありません。(根拠なき思い込みです。)
今回の後編ではデザイン・エンジニアリングの視点で航空機技術のリカバー、特に日の丸ホンダジェット、三菱航空機等の現状、将来展望のお話に繋がるのかとも思っていました。また、機会があればよろしくお願いします。
おまけの「0」、海を隔てた大陸国家は「歴史永遠に0」と聞き及びます。皇帝、支配階級、制度、歴史がゼロリセットされてしまう国家に技術者を支え、磨いて行くことなど不可能と思います。パクリエンジニアリングでどこまで行けるのでしょうか? 日本国の2014年は列島強靭化とガラパゴス化(内需=国内雇用)を優先して欲しいと祈念しています。企業はそろそろ観念して内地へ急ぎ撤退です。
投稿: toro | 2013年12月28日 (土) 21時43分
toroさん、私は飛行機は門外漢なのでご期待に添う事は出来そうもありません。自動車もあくまでもデザイナーの視点ですから、エンジニアリングに関しては眉につばをつけて読んで下さい。(笑)
米の呪縛から逃れる事が出来れば自衛艦も、もっと格好よくなりますよ。日本オリジナルデザインの原潜を見たい。。
投稿: 田中 徹 | 2013年12月29日 (日) 00時28分