輸出は一種の公共事業か
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今回の軍艦島などでの強制労働問題、危惧した通り世界各国の反応、報道は日本が強制労働を認めた、というものになってしまいました。奴隷とさえ表現されたケースもあるようです。最悪の結果です。
安倍さんが世界遺産に認定されて良かった、と喜んでいるのを見て疑問符が頭に浮かんだ人も多かったのではないでしょうか。この人は本当に保守なのか?ひょっとして日本人でもないかもしれない、と私は感じました。
日本人なら何を最も優先すべきかは明らかです。これでは血の問題はともかく、心が日本人とは言えません。また我々は騙されていたのでしょうか。誰かの指示で保守を演じていただけかもしれません。日本の闇は深い。。
さて、気を取り直して今日のテーマ
マクロ経済の基本は供給力であるという事を分かっていない人が意外に多い事に驚きます。TVなどに出て来るエコノミストでさえです。習っている筈ですが忘れてしまったのでしょうか。(笑)
つまり、国民が自らの労力と国内にある資源を使い物を生産すると、それが価値のある物(使える物)である場合、世の中が便利になり生活が豊かになる訳です。そこにこそ真の価値はあります。
ところが折角物を作っても物々交換では流通がスムーズにいきません。そこで流通をスムーズにするために貨幣が考えられました。ところが金本位制でない現在は貨幣自体には価値がありません。それでも貨幣と物が交換出来るのはなぜでしょうか。
それはその貨幣を発行した国に信用があるからです。国が貨幣の価値を保証するから国民は安心して物と交換します。私がここで言うまでもありません。(笑)
しかし、実際には、そこがよく分かっていないから話が噛み合わないのです。例えば円もドルも元も、為替という尺度はあるものの、同じように価値があると思っている人がいます。大きな勘違いだと言わざるを得ません。
本当は通貨によって価値は天と地程も差があるのです。しかし実際に流通している通貨にはそれ程の差は設定されません。ややこしい話ですが、このグローバル化時代、各々の国が作る製品自体に色々な国の付加価値がデリバティブ金融商品の様に混ざりあっているからでしょうか。
例えば中国が生産するクルマには日本やドイツの技術が山ほど入っています。具体的な部品だって相当潜り込んでいるのです。一部はコピーかもしれませんが、それにしても何%かは先進国の価値です。(笑)
そこで、その製品の価値は生産国の通貨で決定されますが、輸出するとなると中国の場合、ドルなどのハードカレンシーの価値に換算しなければなりません。勿論酔狂な国があって元建てで取引するところもあるかもしれませんが、まともな国ならあり得ないのです。
従って、いやでも円やドルやユーロを獲得して、仕入れも含め、それらの国際通貨を基準として動く事になります。その場合、先進国並の価格設定では売れないので、相応の価値で落ち着く事になるのです。例えば日本で200万円のクラス、装備でも100万円のプライスが精一杯かもしれません。買う人がいなければ輸出する意味もないからです。
(ホンダ・アコードと同クラスの中国/長安汽車の高級セダン RAETON 価格は12〜15万元、つまり240万〜300万円/外観はそれなりだが、中身は??)
(日本のアコード・ハイブリッド 370万円、3万ドルから買える。素晴らしいクルマですが、社長が代わり公用語を英語とするようなので、今後ホンダは緩やかに衰退していくでしょう。日本にとって非常に残念な事です。本田宗一郎氏が聞いたらさぞ怒るだろうな/笑)
(GM シボレーのEV BOLT どう見てもコミューターが3万ドルもする/いずれも自国内での価格)
100万円と言うと中国では5万元ですが、年収が都市部で100万円くらいの国ですから、日本人の感覚だと500万円くらいの製品という事になります。貨幣の差が少なく見積もられてもこれくらいにはなる訳です。
つまり、まともな200万円の日本製品(例えばクルマ)だと1000万円も支払わなければならないのです。仕入れにも相応の負担を強いられます。そのためには凄い額の外貨を得なければなりません。従って輸出産業は必須という事になります。
逆に日本のような工業先進国の場合はどうでしょうか。勿論中国と同じように輸出の場合はドル建てが多いので、その製品の価値はドルに換算されます。つまり日本の場合も自動車等の完成品を生産して輸出すれば、相手国から外貨(主にドル)が入る訳です。
その輸出で得た外貨を輸出企業は円に替えます。当たり前の話ですが、ドルのままでは国内で何も買えません。その結果、国内だけで見れば、企業は何も作らないのに政府から円をもらったのと同じ事になるのです。。
つまりそこで働く労働者から見れば、ケインズの「穴を掘って埋める」式作業の対価をもらったのと何ら変わらない事になるのではないでしょうか。国内に何も残らないのですから、そう考えられても仕方がありません。一種の公共事業が行われたのと同じ事なのです。
しかし、ここには大きな落とし穴があります。日本は間違いなく損をするのです。なぜなら自動車の生産に必要な国内の資源、富が海外に流れるからです。穴掘って埋める行為と決定的に違うのは海外を富ませてしまう事です。これを繰り返していると必ず国は衰退します。逆に、高付加価値製品が作れない海外は繁栄する事になります。
尤も、日本も輸出で得た外貨で何か価値のあるものが買えればいいのですが、天然資源以外にこれと言って買うものがない日本にとっては外貨が積み上がる事にしかなりません。それが今日の対外純資産367兆円という形になりました。
そこで積み上がる外貨を有効利用するために、海外の債券を買ったり、現地に直接投資をしたりしますが、それはよくよく考えてみると輸出で得た外貨を海外に還流させるだけの事ではないでしょうか。
日本が海外から欲しい物がもっとあって外貨が貯まらない、あるいは減るのであれば輸出で外貨を得る事に価値はあります。ところが今の様に貯まる一方では差し上げているのと同じ事になってしまうのです。しかもレベルの高い完成品まで提供して。。(笑)
という事は、使えない紙くず(外貨)を得るために日本人は汗水たらして働いて製品を作り、送り届けている事になります。円と外貨の間には天と地程の差がある事が分かるというものです。それなら、何も苦労せずに国から、ただ円をもらえばいいという事になります。
勿論貧乏性の日本人は働きたいと言うでしょう。その場合、その余った労働力を国内の人手が足りない産業に振り替えれば内需拡大に繋がって良い筈ですが、なぜか政府にそういうアイデアはなさそうです。
相変わらず貿易黒字に固執して、インフラ輸出や武器輸出まで推進して海外を強国化しようとし、観光立国でサービスの質を落としてまで使えない外貨を貯めようとしています。
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コメント
戦後のあの貧しかった時代の残滓でしょう
戦後の日本の生き方は、海外から材料を輸入し、それを加工し輸出して外貨を稼ぎ、成長していくのが基本戦略でした。それが、今や世界の先端を走る製品が出てきました。しかし意識は昔のまま、例えば車、世界では500万円で通用するのに、低価格で輸出します。もったいない話です。その他、精密工作機械、鉄道車両やその運営方式、静粛で超深度運用可能な潜水艦、高性能戦車、高速で精密誘導できるミサイルなど、日本でしか作れない製品はそれなりの値段を付け、日本の付加価値を安売りせず、国内の人件費や部品調達に金を払って、豊かな日本にするのが理想です。
韓国のように、海外で安売りするために、国内で高く売る、これ最悪の政策です、国民が不幸になるだけ。日本は内需で遣っていける国、防衛、食糧、エナジー安保に最大限気を付けて遣っていって欲しいです。
投稿: ナベ | 2015年7月 8日 (水) 19時59分
追加させてください
なお、武器輸出に関しては、ブラックボックス化、または日本でしか製造出来ないような高度化された技術に限るべきは勿論です。
投稿: ナベ | 2015年7月 8日 (水) 20時07分
安倍さんが世界遺産に認定されて良かった、と喜んでいるのを見て疑
問符が頭に浮かんだ人も多かったのではないでしょうか。この人は本
当に保守なのか?ひょっとして日本人でもないかもしれない、と私は
感じました。
安倍首相は、保守かどうかという以前に、頭が非常に悪い。
その上、虚栄心が異常に強い。
安倍総理「成長戦略第2弾スピーチ」(日本アカデメイア)
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/0517speech.html
スピーチ全体が、小学生レベル。
「世界」「世界」「世界」「世界」と、50回近く連呼。
世界遺産登録も、こういった外国を有難がる思考の延長。
「国際」「グローバル」「英語」「外国」「世界」
「クールジャパン」「観光立国」「インフラ輸出」「TPP」
こんな用語ばかりが、恥ずかしげもなく並んでいます。
とにかく外国人に認められたいという願望が強い。
日本を外国に売り込むことに執着し、日本国内を
豊かにするという発想は、微塵もない。
2ヶ月前にも、ほとんど同じようなことを書きましたが、
5月の国際収支状況では
所得収支 2兆0130億円(3ヶ月連続2兆円超)
経常収支 1兆8809億円
対外純資産のみ膨張、国内は実質賃金低下と
最悪のパターンです。田中さんも御指摘のように
結局、外国に富を流出させ、日本を貧しくさせているだけ。
外需は、所得収支一本で良く、あとは財政出動を通じて
内需拡大に、集中すべきですが、グローバル馬鹿で経済音痴の
安倍首相では無理でしょう。
投稿: インテグラル | 2015年7月 9日 (木) 13時47分
相変わらず貿易黒字に固執して、インフラ輸出や武器輸出まで推進して海外を強国化しようとし、観光立国でサービスの質を落としてまで使えない外貨を貯めようとしています。
…これら上記の項目は極力やってはいけません。内需の経済拡大をやりましょう。
エネルギーは自前で行きましょう。近海に有望なメタンハイドレードとか、藻から石油とか有望な資源や技術が日本にあります。この辺に力を入れれば良いのです。
投稿: Carly | 2015年7月11日 (土) 09時51分