銀行のバランスシート
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先日ある人が、日本の未来を心配して、「日本国債が海外に買われる額が増大しているのは問題だ」と言っていました。さらに「今は80兆円程だがこれが200兆円にならない保証はない、今だってヘッジファンドに80兆円を売り浴びせられたなら、日本国債は大暴落するだろう」と言うのです。
テレビなどでも異口同音に、こういう事を言う人がいるのですが、本当なのでしょうか? 私は専門外なので80兆円もの国債を短期間に売り浴びせる事が可能かどうか、というようなテクニック論に関しては全く分かりません。
空売りなどを考慮すると出来るかもしれないと思ったりもします。しかしながら、この場合、大暴落を煽る人達は相手がある事を忘れているのではないでしょうか。しかもその相手は強大です。日本の名だたる金融機関に最後は日銀です。大半の日本国債の保有者であるこれらの機関が黙っているとは思えません。個人投資家が多い株の場合とは違うのです。
常識的に考えて、売り浴びせられて損をし困るのは自分たちです。当然防戦に入るでしょう。問題は防戦する資金があるかどうかです。日本の金融機関は貸し出しより国債を買う事に熱心なので余剰資金があるかというと日銀以外は心もとないと言わざるを得ません。
ところが忘れてはいけない事があります。そうです。日銀の当座預金です。(笑)ブタ積みと言われる当座預金残高が先月末時点で254兆円も溜まっているのです。引き出すことが出来ないマクロ加算残高を除いても220兆円超です。これだけあれば80兆円程度の売り浴びせなど、なんていう事ありません。だからこそ仕掛けて来ないのではないでしょうか。
ではその220兆円について、貸し出しが活発になった結果、80兆円以下になったり、海外勢の買い入れが220を超えればダメじゃないかと言われるかも知れませんが、金融機関からの貸出額の増加と日銀当座預金残高との間に相関関係は特にありません。
現在の準備預金率からすると貸し出しは、基本的には預金残高の99%近く出来、さらに需要さえあれば無限にバランスシートを拡大出来るので、日銀当座預金に手をつける必要はないのです。理論上、日本の金融機関は当座預金残高の98倍以上の額を貸し出す事が出来ます。つまり2京円以上の信用創造が出来るという訳です。(笑)
極端な例ですが、例えば預金残高が100億円の銀行があったとします。準備預金率を1%として1億円を日銀の当座預金に預けています。残りの99億円の内40億円は国債を買いました。という事は手元現金は59億円です。(自己資本率は無視させてもらいます)
その銀行に99億円を融資してくれという会社(A社)が表れました。審査の結果オーケーとなったのですが、今回も日銀に1億円程預けなければなりません。そこで国債を1億円売りました。当然日銀の当座預金残高が2億円になります。これは理論上200億円までの貸し出しが可能である事を意味します。
銀行はそのA社の要求通り、99億円をA社が持つその銀行の口座に振込み(印字)、反対側(資産の側)に貸付金99億円を加算してバランスを取ります。あら不思議、その銀行の資産と負債が199億円に膨れ上がったのです。(下)
ところが、A社はその資金を設備投資の為に使うので一度に99億円引き出すと言い出しました。銀行は99億円の現金を用意しなければなりません。そこで手元現金が59億円しかないので国債を全て売り払い、日銀からも1億円引き出して対応しました。その表が以下の通りです。
これで貸付金が戻って来なければ銀行は倒産します。(笑)これを見れば、審査に慎重になるのも分からないでもありません。実際には預金者からの引き出しに応じられない程、手元現金を減らす事はあり得ないので、貸し付けはその範囲内で行われます。
ただ日本全体で見れば一時的に99億円程マネーストックが拡大したのは確かで、返済を上回るペースで貸し付けが増えればマネーストックも増え続けます。銀行にとっての債務者からの返済は貸し付け残高が減り手元現金が増える事を意味するのです。利息分は純資産となり負債側の一番下に計上されます。
例えばA社が10億円を返済したとします。利息も含め11億円が資産側に手元現金として計上され貸し付け残高も10億円減りました。バランスシートは資産と負債両側で101億円となる訳です。これを見れば銀行が貸し付けに努力をせず国債を買う意味が分かります。国債なら安全だし現金化も簡単だからです。
このあたりの仕組みを私も誤解していまして、先日の記事「吉兆か」では正しいとは言えない記述がありました。次の箇所です。
よく日銀当座預金がブタ積みになったままで貸し出しに廻らなければ意味がないと言う人がいます。私も最初そう思っていましたが、それは少し違うかもしれません。銀行にとって貸し出しの為の資金なんて何とでもなるのです。銀行間の貸し借りがあるからですが、これによって銀行はほぼ無限にバランスシートを拡大出来ます。
(別に銀行間の貸し借りをしなくてもバランスシートを拡大する事は可能なようです。訂正してお詫びいたします。)
という事は、銀行は0.1%の金利がつく美味しい基礎的残高の220兆円に手を出す必要がないという事になるのです。それ以上の額を海外が保有し売り浴びせるというのも考え難いのですが、百歩譲ってそうなったとして、そういう時こそ日銀の出番です。バンバン買えばいいのです。放置した時と買った時の、その後の影響の大きさを考れば自明です。
日銀は日本国債を担保に円を発行出来ますから全く問題ありません。さらに付け加えるなら政府は日銀の親会社です。連結決算では行って来いの関係になります。つまりプラスマイナスゼロです。
という事は、日銀による国債買い入れは無限に可能と言って差し支えないでしょう。日本の財政問題がいかにいい加減かという事が分かりますね。これが有事の円買いの理由です。世界一安全な通貨が円(日本国債)という事になります。
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コメント
銀行のバランスシート → 現行官僚君達の名称のバランスシート
・・・財務省 → 材無省 又は在無省
・・・外務省 → 害霧症 又は外務小
・・・は~ 言いたいこと思いっきり言っちゃってスッキリ。。
投稿: かかし君 | 2016年3月 3日 (木) 12時32分