質の高い生活に必要なもの
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前回の記事では民間の信用創造の仕組みについて解説したかったのですが、なかなか難しいようです。銀行が自己資金を使わずに無から有を生じさせ、それを相手に貸し出せるなどというのは日常生活(家計)からは想像が出来ません。政府でも日銀でもない一金融機関がそんな魔法のような事が出来るというのは理解し難いのでしょう。
この点はウィキペディアデも解説が十分ではなく、銀行は手持ちの資産を貸す事によって信用創造が起きると錯覚させるような記述があります。下段に正しい解釈もありますが、簡単に流していて読み手が十分理解が出来るようなものにはなっていません。
間違ったことを平気で言うエコノミストが後を絶たない筈です。彼らも今一分かっていないのかもしれないのです。そもそも手持ちの資金を貸すのであれば、私にだって出来ます。(笑)信用創造と言うからには、無から有を生じさせなければ話になりません。
尤も、信用創造は、どの金融機関でも出来るというものではありません。政府が認めた一部の金融機関に限られるという事で、街のサラ金にはそんな機能与えられていないのです。そんな事をしたら大変な事になります。(笑)だから彼らは金利を高くするしかないのです。
そういう訳で信用創造が出来るのは、日銀に当座預金の口座を持つ企業の中でも一部の金融機関だけです。日銀によると次の機関や企業が当座預金口座を開設出来るとされています。
(1)資金決済の主要な担い手(銀行、信用金庫、外国銀行支店、協同組織金融機関の中央機関、銀行協会など)
(2)証券決済の主要な担い手(金融商品取引業者<証券会社、外国証券会社>、証券金融会社など)
(3)短期金融市場取引の主要な仲介者(短資会社)
もちろん、これら全てが信用創造の機能を持つ訳ではありません。定義では預金を預かる金融機関となっています。普通預金や定期預金などでお金を預かる事の出来る金融機関ですから、郵貯銀行もその対象という事になるでしょう。
逆に言うと、預金を預かる金融機関として日銀に当座預金口座さえ開設すれば結構エキサイティングな事が出来る事になります。但し返済が滞って不良債券化すれば倒産もあり得ますから、やはり担保が必要という事にならざるを得ないのです。その担保価値を上げる事こそ経済活性化の源泉なのですが、お金は株には廻っても土地の方には廻り難いようです。
さて、本日のテーマに移ります。
経済成長の源泉である現金と預金が増えない、つまり国民の所得が増えない限り成長がおぼつかないという原理は誰にでも分かります。という事は例え生産活動の結果ではなく人為的ではあったとしても、マネーストックさえ伸ばせば成長するのではないでしょうか。それにはやはり金融政策が要となる気がします。
まず、金融と言えば銀行です。銀行のメカニズムから言って、どこかに貸し出さなければ経営が成り立ちません。今でも預金残高の70%は貸し出しに廻っていると言います。という事は残り30%は主に国債や株などの証券投資という事になるのでしょうか。
その70%と言われる貸し出し残高の中身は常に変化していますが、返済と貸し出しが一定割合で続いているからこそ、その数字が維持される訳です。幸いな事に現実を見てもマネーストックは微増しています。これは金融機関が受け取る返済と利息、あるいは手数料、保証料等の合計であるマイナス分をプラス分が上回っている事を意味します。
その増加分が日本国債の新規発行分(償還分と利払い分を除く)を下回る場合は十分とは言えません。貸出量が十分でないという事になります。この場合は民間の力だけでは成長出来ない事を意味するのです。
新規発行の国債は金融機関に買われて現金化され予算として執行されます。その分は真水として、最終的には個人の所得となりマネーストックを増やす訳です。例えばその年の予算が90兆円として税収その他の政府の収入が50兆円だったとします。
その場合40兆円の赤字国債を発行しますが、償還分と利払いの合計額が19兆円とすれば、マネーストックを増やすのはその差額の21兆円という事になるのです。
償還分と利払いの19兆円は主に金融機関に行きますから金融機関も現金資産を増やす事になります。金融機関と個人の金融資産の内、現預金による資産が合計で40兆円増える事になるので次の年の国債発行に対応が可能という訳です。
話がそれましたが、経済成長する為には国債発行の真水分+民間設備投資や住宅投資額が、銀行に吸い取られる分(先ほど言った銀行の資産となる額)を上回る必要があるという事になります。昨年の例で言えばM3は30兆円程増えていますから国債分を除いても約10兆円の貸し越(増加)です。
マーシャルのK(マネーストック÷GDP)が毎年一定だとすれば、その仮説は成り立ちます。すなわち質の高い生活を維持する為の設備投資などの借り入れが活発でなく対前年でマネーストックが減る場合は衰退する(GDPが減る=国民の所得が減る)事を意味するのです。当然ですが、それで質の高い生活を維持出来る筈はありません。
(設備投資額は、左程減った訳ではないのにGDPが伸びないのは?)
という事は、金利が低い今は負債を積極的に増やさなければならないのです。あるいは政府が国債を刷って真水分を増やすかのいずれかです。マイナス金利の今は、固定金利の10年もの国債を刷るビッグチャンスと言えます。
その合計額が前年比で5〜6%、金額にして50兆円以上は伸びないと2〜3%の名目経済成長は期待出来ません。つまり昨年程度(30兆円)の伸びでは未だ足りないのです。
資本主義経済には、経済成長がなくても質の高い生活が出来る、などのまやかしはありません。ひたすら成長の道を走り続けるしかないのです。私はグローバル化によって海外の悪影響をダイレクトに受ける事には否定的ですが、そこが上手く規制、コントロール出来るのであれば、今のやり方自体はそう悪くないと思っています。
成熟した先進国だからこそ、AIやロボット化で生産性を上げ、また現在の付加価値を、さらに高い付加価値製品やサービスに置き換える事により成長を続ける使命を負っているのです。日本がそれをしなくて、どこの国がするのか、ちょっと考えれば分かる事ではないでしょうか。
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