海外へ企業を売らなければならない程日本は貧乏なのか?
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シャープの問題が再燃しています。このゴタゴタの着地点がさっぱり見えませんが、このままホンハイに買い叩かれて終わるのだとすれば、日本政府とシャープのアホぶりが世界から物笑いの種になるでしょう。
そもそも産業革新機構の、3000億円プラス銀行の債権放棄、ですら破格の条件でした。実質日本政府がシャープを買い取って終わるシナリオだったと思われます。
その後の3000億円規模の隠れ債務発覚ですが、将来損害賠償請求などの訴訟が起こり債務が発生し得る事は当然考えられた筈です。従って都合の悪い情報の後出しというのも考え難いと言わざるを得ません。
シャープの事業のほとんどは赤字なので、毎年債務が拡大しても不思議は特にないのです。それをホンハイは騙されたと言い出しました。これは言わば中国(系)企業の常套手段です。彼らにとって、競争相手が降りてから何かと言いがかりをつけて値切るのは一種の合理的行動かも知れません。
ところで、この買収劇、私に言わせてもらうなら茶番です。日本企業の海外への叩き売りが疑われます。今回の場合、グローバリズムかナショナリズムかを論ずる以前に、海外への売却自体が著しく合理的とは言えないのです。
(鴻海精密工業の郭台銘会長)
日本企業を海外の企業に売却する意味は、どこからどう見てもありません。今日はシャープ売却の是非より、経済的合理性を検証してみたいと思います。
ホンハイがシャープを買収する金額が最終的にいくらになるかは知りませんが、仮に3000億円とします。ところがホンハイはそんなに沢山の円、あるいは外貨を持っている筈がありません。どこかから融資を受けると考えるのが妥当です。
中国から借りるのか、あるいは台湾の銀行からも融資を受けるのでしょうか。しかし、この場合は円ではなくドルを調達する事が予想されます。つまり貿易などと同じで、交渉成立の暁にはドルが日本の、シャープの取引銀行に送金されて来る訳です。
銀行は当然ですが、そのドルを円に替えてシャープの口座に振り込まなければなりません。ところが一銀行がそんな大金を一時に支払える訳がないので政府に交換を求める事になります。
一般の貿易の場合も最終的には政府に交換してもらわないと円が足りなくなるので、貿易収支が黒字の場合、結局は政府が肩代わりするのです。所得収支の場合も黒字なら同じです。
それが何を意味するのかと言うと、我々国民にしわ寄せが来かねない事になるのですが、政府はそれが分かっているのでしょうか。政府は受け取った外貨を円に替えるために政府短期証券などの国債を発行しなければならないのです。政府に遊んでいるお金などないので当然です。
因に、国債を発行して資金調達する場合は不胎化と言って現金を市場から吸収し、円が増えるのを抑えます。一方、国債を発行しないで、そのドルを担保にし円を発行する場合は為替介入と見なされかねないのです。
中国がやっているドルペッグがこのやり方で、黒字で増えた外貨分の自国通貨を増やせば為替は変動しません。反対に不胎化の場合は自国通貨高になります。日本の場合はこのケースが多く、円高が進みました。
今回の場合の、国債を発行して得た円とドルを交換するという行為は、結果的には政府が一企業に肩入れする事になります。それは全体の予算の関係上、日本国民全体の為の国債発行額が抑制される事を意味するからです。つまりシャープの為に我々は割を食うのかもしれません。
政府はその証券を金融機関に売却し、円を調達して銀行に支払います。その証券を買った銀行は、現金を減らして債権を増やす事になる訳ですが、シャープの取引銀行の場合は政府に交換してもらった円をシャープの口座に振り込む事になり、その分その銀行の資産が増える事になるのです。
もうお分かりかもしれませんが、貿易と同じで政府が負債を膨らませないと、この取引は成立しないのです。通常の、赤字国債を発行し財政政策として使った場合は一般国民に対する恩恵が、ほぼ平等に行き渡るのですが、この場合は関係者だけの利益にしかなりません。
そうです。ホンハイとシャープだけのメリットになる訳です。ざっと見て、ホンハイ70、シャープ30くらいの率でしょうか。もちろんその数字は人によって解釈が違うかもしれません。中国90、ホンハイ10、シャープゼロと言う人がいるかもしれないのです。(笑)
しかし、どっちに転んでも政府がお金を出すのなら、海外企業の買収を助けるのではなく、最初から政府が直接シャープに対して3000億円出せばいいのです。すなわち産業革新機構の案を通すのが筋と言えます。その場合は海外のメリットがゼロでシャープの受けるメリットが100になります。
万年経常黒字国で世界一の対外純資産を持ち、これ以上の外貨を必要としない先進国である日本の企業が、海外の企業に買収されるというのは売国行為以外の何ものでもないのです。
小泉さんも安倍さんも日本企業を海外に切り売りするのが薮坂でないようですが、そういうミッションを誰かから受けているのでしょうか。そう勘ぐりたくなる買収劇です。
日本国にとって百害あって一利無しは明らかです。
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コメント
>日本国民全体の為の国債発行額が抑制される事を意味するからです。つまりシャープの為に我々は割を食うのかもしれません。
上記、強調したほうがいいでしょう。
安倍が「海外に打って(売って?)勝つ」などと、偉そうにのたまっておりますが、輸出で儲けようが、結局”円”を発行しなければならず、「お金がないから税金を取る」なんて事は、真っ赤なウソであることを白状しているようなものだし、だったら素直に日本および日本人のために、財政出動すればよいだけです。
そしてもう一つ、結局貨幣は実体ではなく信用証書でしかない。という事は、貨幣を利用した売買のルールが変われば、忽ち意味のない紙切れと化すのです。だから、そのルールを守らせる為に、通貨を握っている国家や機関が力をちらつかせているわけです。
要するに、百歩譲って安倍がバータの為米・国際金融資本の言いなりになったとして、その結果得た(米国債のような)日本にとってのアドバンテージが、”ルールを変えられる”だけで泡と化すのです。
はっきり言って、我が国の経済を徹底的に破壊しているばかりではなく、移民を入れで国体を破壊しようとしているし、外交もロシアに接近するように見せかけて何の実績も上がらず、実体ある日本の利益も全く得られていない以上、売国奴と評価せざるを得ません。
それでいて、首相に就任する前から「戦後レジームからの脱却」を騒いでいたわけだから、米が日本を攻撃する口実を与えたのに等しく、”活動的なバカ”か”有能な売国奴”なのです。
それだったら、卑屈なまでの弱腰外交を展開しつつも、経済を維持していたチャイナスクールの連中のほうが、よっぽど有能な政治家なのです。「能ある鷹は爪隠す」なのです。
小泉や安倍の愚かな政によって、我が国の取りうる手段を次々と無くしてきたのです。
投稿: Sura | 2016年3月26日 (土) 00時44分
海外へ企業を売らなければならない程日本は貧乏なのか?
・・・金は塩漬けで企業/銀行にうなっているのでしょうか!?経済産業省とか日銀とか財務省とかに・・・まあ、貧乏なのは応用問題が解けない/解いた事のない官僚および官僚的的に硬直した政治家とか経済界のTopとか日本の教育システム自体にもあるのでしょうが、J民党自体が外国からの圧力に屈している感が強く感じられます(蛇慰安に脅かされているのびた君)・・・今回の田中徹さんの論説と Suraさんのコメントは新聞やTVより遥かに素晴らしいですね。全て”図星”の様です。
投稿: AZ生 | 2016年3月26日 (土) 16時27分
菅義偉という人物を通じた在日支配の完成→ http://this.blog.jp/archives/57919109.html
投稿: 【在日支配の完成】 | 2016年4月 7日 (木) 11時34分