政府に反旗を翻す事の意味は
---- TPP/消費増税 /カジノ解禁に反対します ----
ブログランキングに参加しています。
舛添氏辞任劇に隠れて埋没し、既に旧聞には属しますが、三菱東京UFJ銀行がプライマリー・ディーラー(国債市場特別参加者)の資格を国に返上するという報道があり関係者に衝撃が走りました。早速メディアは日銀のマイナス金利政策のせいだと囃し立てています。しかし、それはどうでしょうか。
国債は最終引き取り手が日銀であるという安心感がなければ今のように高い価格(低金利)で取引される事はありません。日銀が買わなくなったら国債価格は下がり当然金利が上がります。しかしながら黒田総裁は無限に国債を買い入れる事が可能だと言っているのです。
という事は今保有している国債を全て売りつくしても損はしないという事になります。それならば肝心な貸出しが伸びない現状、マイナス金利で日銀当座預金に預けている資金を原資に、出来る限り国債を買い入れた方が得策ではないでしょうか。国債が品薄と言われている現在、三菱東京UFJが何を考えているのか理解に苦しみます。
メディアの報道からも日銀がマイナス金利が付いた国債を強制的に市中銀行に買わせているような印象を受けますが、それは全く違います。それではまるで恐怖政治です。中国じゃあるまいし、いくら何でもそれは出来ないでしょう。
一般論ですが、三菱東京UFJ銀行などが買っている新規国債の金利は市場が決めると言って過言ではありません。例えば額面1万円の10年もの既発国債の金利が1%だとして、売り出されてすぐに市場で売買された場合に1万1000円で買い手がついたなら金利はゼロ%という事になります。
金利1%は10年で1000円の利息を生みますから償還日まで持てば11000円が戻って来る訳です。それと同価格で売れたなら買った人が満期まで持っても利益がないので金利で言えばゼロ%と同じです。
反対に人気がなくて9000円でしか売れない場合は満期まで持てば2000円儲かる事になり 2000÷10年÷9000=金利2.22% という事になるのです。その場合新規発行国債はそれ以上の金利でないと売り難いので、とてもマイナス金利はつけられません。
今、日本国債はご存知のように市場でマイナス金利がつく(高く売買される)程人気があります。つまり先ほどの例で言えば1万円の国債が1万1000円以上で売買されているという事なのです。という事は手持ちの国債を売っても損はない筈です。
それで得た資金でまた国債を買えば、さらに利益がでるという循環に入るのです。そもそも銀行の場合、国債の売り買いは日常茶飯事なので満期まで持つケースは少ないと言います。
それで何が心配なのか分かりません。三菱東京UFJ銀行が何を思ったのかは知りませんが、全く買わないという事でもないようなので単純にノルマを嫌っただけでしょうか。
あるいは銀行と言えども財政再建派のエコノミストがいて本気で日銀の出口戦略を心配しているのかも知れません。日銀に突然はしごを外されて右往左往する姿を本気でイメージしているのだとすれば、かなり愚かな話ではないでしょうか。国債が市場から尽きるまで、あるいは安倍政権が続く限り、その心配は杞憂に思えます。
(最新の日銀バランスシート)
今、日銀当座預金に285兆円もの資金が積み上がっているという事は、新規国債を発行しても買い入れ余力が十二分にある事を意味します。国債を200兆円くらい刷っても屁のカッパで銀行は消化出来るでしょう。
その場合の資金の流れですが、銀行が国債を買うと同時に当座預金から同額が引き去られます。同時に政府の日銀口座に移動する訳です。その資金が財政出動に使われれば日銀が異次元緩和で信用創造した資金が活きて来ます。すなわちマネーストックの真水が増えて経済成長に貢献するのです。
問題は政府に財政出動をする気があるのかないのか、さっぱり煮え切らない事です。2020年までのプライマリーバランス黒字化などという下らない決めごとが足枷になっているのだとすれば、何のための異次元緩和だったのかという事になります。
そもそも日銀がマイナス金利を設定したのは300兆円近くある日銀当座預金の一部だけです。本来金利ゼロのはずの当座預金に、これまで定期預金並みの0.1%の金利をつけていましたが、買いオペにより金額が大きくなり過ぎました。そこで法定準備預金を含む250兆円以上の分に関してまでは面倒みれないという意味でマイナス金利を設定したのでしょう。
それはつまり、マイナス金利を嫌うなら国債を買うなり日銀券に替えるなりして当座預金残高を減らせと言っている事になります。それでも当座預金全体で平均すれば金利は0.08%以上もあるのです。金利は決して低いとは言えません。
この日銀当座預金金利と市場での売買価格によって決まる国債の金利を混同している人が大勢いるようです。そこで話がややこしくなるのですが、いずれにしても買いオペで札割れが少ないのは日銀が高く買っている証拠です。銀行は決して損はしていません。
そうでなければ平均で1000万円以上の給料を払い続ける事など出来ないでしょう。いずれにせよ我々と違って銀行は優遇されている事は確かです。
今、日銀は単独行動とは言い難く、政府の方針と一体となって動いています。その政府の方針に対し公然と反旗を翻すメガバンクとは何ものなのか、また何を目指しているのか、本来業務である貸出しに積極的とは言えない銀行の、その存在意義が問われるべき時期が来ているのかも知れません。
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしてるのか?(最終回)(2024.08.30)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(5)(2024.08.29)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その4)(2024.08.26)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その3)(2024.02.07)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その2)(2024.01.29)
コメント
先日虎ノ門で上念司さんが、UFJが資格を返上したのはたくさん国債を買うとマイナス金利部分に引っかかるからと言ってました。マイナス金利は日銀当座預金から義務である部分を引いて、そのほかの部分にだけにかかるはすでしたね。上念さんの言うことがよくわかりません。とにかくこのことについてよくわかっている経済学者は少ないように思えます。その中でこのブログはよくわかります。
投稿: 八丈島 | 2016年6月19日 (日) 21時18分
あの時の「虎ノ門」ですが、私の記憶では
1.このまま資格を保持していると割り当て分(強制)は買わなくてはいけない・・・資格があると優先的に買うことができるんだ~、と判断。
2.しかしいずれマイナス金利の領域に到達してしまう。・・・たくさん買い続けているんだ~、融資するのが本業だろ!と言いたくなる。
3.やめても買いたいときには買うことが出来る・・・多少の不便さは我慢するということかい?と解釈。
4.メリットとデメリットを計算してやめることにした。・・・さすが銀行屋。自分の懐具合に関しては一銭たりとも抜け目がない。租税回避なぞせずにキッチリ税金納めんかい!と腹が立った。
と脳内簡略理解をしていました。ただしこれはあくまでも一度観ただけの記憶ですので、後ほど改めて観てみます。
投稿: 南国通信 | 2016年6月20日 (月) 01時18分