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2016年6月13日 (月)

貿易黒字は一種のペナルティ(前編)

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前回消費について書きましたが、日本は少子高齢化という事もあって今後国全体としての消費はそう伸びないだろう、というのは間違いではなさそうです。日本全体で見れば人口が減る事は間違いないし、そうなれば労働人口も減ります。供給力そのものに制限を受ける事は確かです。

しかしながら間違ってはいけないのは、国民一人当たりの所得や消費までが伸びないと思い込む事です。さすがにそれは認め難いです。それは今後付加価値を上げる技術力や生産効率を上げる為の工夫が出来ない、つまり頭が悪くなる事を意味するからです。

これまでの日本は付加価値を上げる技術の向上や生産効率を上げるため様々な工夫によって経済成長して来ました。決して人口増やインフレだけで数字を膨らませて来た訳ではないのです。

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(TFP、つまり技術力や生産性の向上が成長率の中でも一番大きいウェイトを占めているという事はまだまだポテンシャルがあるという事です。データがありませんが、2010年以降は2000〜2005の様な形になっている事が推察されます。)

日本人は世界でもトップクラスのIQ (知能指数)を持ち、学業成績も悪くありません。どこで何を競っても学力のトップクラスは揺るがないという厳然たる事実があります。さらに勤勉と来ていますから鬼に金棒と言えるでしょう。

その証拠に、今創造されている製品やサービスのどれをとって見ても確実に進化しています。デザイン含めた外観がよくなっていることはもちろん、性能が上がって使い勝手がよくなり、様々な製品構成要素がバランスよく付加価値アップしているのです。世界のどの国と比べてもトップランナーであることは論を俟ちません。

では、その上がった付加価値はどこに現れているのでしょうか。例えばある製品がモデルチェンジして耐久性が倍になった場合、当然価格は倍になってもいい筈です。二回買うところが一回で済みますから普通に考えて倍の価値があります。ところが現実はそうなっていません。

クルマの場合を例にとります。日本のT社が作る1000ccで4人乗りのセダンの耐用年数が5年だとしましょう。それが5年後にモデルチェンジをして耐久性が8年に延びました。エンジン性能も上がって加速や最高速度も段違いです。

その他乗り心地や静粛性も抜群になり、燃費に至っては50%くらい改良されたとします。この場合100万円だったものが150万円程度になれば文句はないのですが、せいぜい120万円にしかなっていないというのが日本の現状ではないでしょうか。1年で見れば4万円のアップです。いや実際はもっと厳しいかもしれません。

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(マツダデミオの初期型1998年式は140万円程であったが最新型の同排気量車がATとMTの違いはあるが150万円と10万しか差がない。出力は50%増、燃費も10モードで比較すれば2/3程になる。何よりルックスが違い過ぎる。)

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(スポーティで精悍なルックスになった新型、とても旧型と同じ価格帯のクルマに見えない。アルファロメオという名前を付けたら220〜230万円で売れるかもしれない。)

他国に目を向けて、例えばA国の場合、モデルチェンジサイクルが10年だとします。10年でさっきの1000ccのクルマと同じカテゴリーのクルマが50%の進化を遂げました。これを何と円換算で150万円で売り出したのです。1年で見れば5万円のアップは十分納得のいくものではないでしょうか。

T社はチャンス到来とばかり早速A国に輸出をして船賃を加えた130万円で売り出したところ、売れ過ぎてぼろ儲けしました。A国の競合車は瀕死の状態になり、当然貿易収支が大幅黒字になります。その結果円高が進み車両価格がA国通貨換算で150万円になってしまったのです。

そこで船賃分がハンデになったT社は、新しいレートでも20万円分割安感を出すよう下請け企業にコストダウンを要請します。もちろん自社の従業員の給与も削り、コスト削減の血の滲む努力をして目標コストを達成しました。

意気揚々とA国で再度売り出したのですが、また売れ過ぎて円高になりコストダウンをしなければならなくなったのです。A国自動車産業の労働組合も騒ぎます。さすがにこれはバカバカしいと気付いたT社社長は輸出はA国車と直接競合しない高付加価値型のみに切り替え、売れ筋の車種は現地生産に切り替えたという訳です。

その間、国内ではT社社員も下請け企業の社員も皆賃金が下がり120万円のそのクルマが割高に思えるようになります。当然売れませんからディスカウントしたりおまけをつけて売る事になる訳です。ところが、それにより企業の収益が減って増々貧困化が進みました。

前提を変えます。元100万円のクルマのモデルチェンジが完成し、これから発売という時の日本のマネーストックが5年前に比べて50%も増えていたとします。という事は給料も単純計算で50%増になっている訳です。三面等価の原則とマーシャルのKから考えればそういう事になります。

その場合言うまでもなく150万円のクルマに対する購買力があるのです。メーカーとしても、何も120万円にまで落として売る必要はありません。同価格の他社車の付加価値が40%しか増えていなければ十分競争力があって150万円はリーズナブルに見えるのです。

T社は国内で十分な売上、利益を得たのでリスクの多い輸出をしてまで売ろうというモチベーションが湧かず、海外での販売はそこそこにしました。その結果輸出と輸入のバランスが取れて為替の変動はありません。

円安のままで売上が50%も増えるのです。その結果給料も50%増えました。円高になって対外純資産(外貨)だけは増えるが給料が減る場合と比べ、どちらがいいかは自明です。

長くなりますので次回に続きます。。

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