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2016年6月14日 (火)

貿易黒字は一種のペナルティ(後編)

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---- TPP消費増税 /カジノ解禁に反対します ----

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昨日の続きになりますが、問題を整理します。

一つはマネーストックの問題です。日本の技術力、付加価値アップのポテンシャルとリンクしてマネーの量が増えていたなら、こういう150万円の価値の物を120万円で売るというような、ダンピングまがいのことは起きなかったでしょう。開発のために莫大な予算を使っていますから、デフレでないとすればダンピングと言われても仕方ありません。

もう一つ、その製品開発スピードは諸刃の剣になり得るということです。A国も時間さえかければ曲がりなりに同じ価値に到達するのですが、日本が早すぎる為に国際的に見ればアンフェアに映ります。休暇も取らずに働き過ぎだろう、という事で日本にハンデ(ペナルティ)が課せられるのです。それが為替変動、つまり円高です。

一般論として、貿易収支が黒字になり、流入した外貨を円に替えることで円高になりますが、その時点で外需依存をやめて内需拡大に舵を切れば問題がなかったのです。マネーの量が十分供給されない環境下では、十分な需要が望めないので無理をしてでも外需依存を続けざるを得ません。そして悪循環に陥ります。

創造された価値が正しく評価され、その分のマネーストックがどういう形であれ増えていけば、日本のような先進国は内需で十分食っていけます。海外にまで無理して売る事はありません。その結果輸出入が均衡すれば為替を変動相場制にする意味がなくなるという訳です。

日本は天然資源の大半をを輸入に頼りますが、国内にも全くない訳ではないし都市鉱山というのもあります。つまりリサイクルですが、それや省資源化もあって輸出に頼る天然資源はGDP比で言えば総付加価値生産の4%(2015年)程でしかないのです。と言う事は96%は国内の資源を使っている事になります。

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(日本の輸入品目の内訳2015年度 逆輸入品や日本でも生産出来るものまで輸入しているというのは実にもったいない話です。)

ここでよくある間違いは輸入するのは物で、国内資源は殆どが労働力なので、96%が日本の資源というのはおかしい、という事ですが、そうではありません。輸入するのは確かに天然資源という「物」ですが、それ自体に価値はないのです。

価値は人間が関わる事で発生します。つまり眠っているだけのダイヤモンドには何の価値もないという事です。GDPの算定基準になる付加価値とは人間が働く事によって付加した価値の事ですから、輸入したのは4%の付加価値という事になります。

そう考えると日本は96%の付加価値を自国で生産出来る事になり他国への依存は世界でも最低の部類になるのです。その最低の輸入依存に見合った輸出をすれば貿易収支の均衡が得られます。難しい話ではない事がお分かりでしょう。

ただ、民間だけで収支の均衡を維持する事は困難ですから、政府が規制や関税で調整しなければいけません。主権国家で関税自主権を持つなら当然です。ところが、なぜか今の政権は内需拡大と言いながら外需依存策を採っています。

観光立国構想もインフラ輸出、武器輸出も明らかな外需です。貿易収支の黒字と、それによる投資などで得た所得収支の黒字の累積である対外純資産が溜まりまくっている国のやる事でしょうか。つまりこれ以上溜めて何か使い道でもあるのかと問い正したくなります。

全くもって奇妙な話です。特に買う物がないのにも関わらず外貨を溜める・・その矛盾に気が付かない限り、構造改革だとか規制緩和だとか言って開発のスピードをもっと上げ、さらなるペナルティを食らう事になりかねないのです。国民は不景気は自分たちに問題があると信じ、さらに努力を重ねます。その結果として貧困化が進んで来た事には誰も気付きません。

海外に物を売らずペナルティを食らわなければ、逆に言うと開発のスピードがもの凄いアドバンテージになります。当然A国の倍の経済成長が出来る訳です。その差を継続すると圧倒的な差がついて、いずれA国は追いつけなくなります。

それは軍事力が強くなる事と同義なので、何とかしてそうはさせまいという力がA国から働くと考えるべきです。日本のGDPが足踏みしているのは、強すぎる経済力に対する、あらゆる意味でのペナルティが有効に作用しているからではないでしょうか。

内需拡大と言いながら内需拡大策を採らず外需依存を進め、さらにはTPPなどのグローバル化を押し進めるという事は、自ら陥穽に落ちるために仕掛けられた罠、という穿った見方さえ唐突とは思えません。

そうとも知らずにスピード違反のペナルティである青切符、あるいはイエローカード(対外純資産)を溜めて喜んでいるのですからおめでたい話ではないでしょうか。そのイエローカードはいくら溜めても相手に対して使う訳にはいきません。なぜなら日本には、そんな事をしてまで勝とうというメンタリティがないからです。

特に政府が持つイエローカードである外貨準備はペナルティの最たる物です。売れない米国債にしてドルを米国に還流させます。米にとっては製品を買って払った筈のドルが紙切れと引き換えに戻って来るのですから笑いが止まりません。

もちろん貿易摩擦や円高に嫌気して現地生産に踏みきった企業も多いのですが、これは日本全体から見れば奉仕活動です。元々価値が作れない国に技術を提供するのですから相手国に取ってはこれ以上美味しい話はありません。しかも感謝されるどころが何かにつけて因縁を付けられたりします。

つまり現地生産というのは体のいい人質なのです。中国を見れば明らかなように自国に有利な契約しかしませんし、その契約でさえ政府の都合で破られます。挙げ句の果ては暴動で恐喝さえされかねないのです。こう見ると、内需拡大策を採らないという事は世界に出ていって魑魅魍魎達の餌食になれ、という意味かもしれません。

世界最速のランナーの前には様々な障害物が仕掛けられ、後からは髪や衣服が引っ張られます。それを避けるには今のようにデフレでスピードを緩めるか、あるいはフィールドを替えるしか方法はありません。誰もいない国内というフィールドで思い切り走ってみたいものです。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

一国の経済運営は本当に難しいものですね

 30年ほど前、順調に行っていた日本経済ですが調子に乗りすぎバブルを起こし、それを突然弾き飛ばし長いデフレ不況に入りました。多くの企業や個人が銀行への返済に追われ次の投資先など見付ける余裕など無く、貸し付けた銀行を恨み、企業家マインドがシボミ続けていました。あの当時経済関係で正論を言い続けていたのは台湾系の経済評論家、リチャードクー氏だけだったと思います。10年がたち、大企業が気を取り戻し始めた頃、資本がどういう訳か中国に向かいます。共産国で法治国家でもない、カントリーリスク最悪の国に投資をするなど愚の骨頂と私は考えていましたが、多くの経営者たちはバスに乗り遅れるなと競って工場やスーパー、デパートを建てのめり込んでいきました。今現在、中国で仕事を始めて、結果として儲かった企業はどのくらいあるのでしょうか?ほとんどの企業が大損こいて、抜けるに抜けられない状況なのではないでしょうか。

 この2日間の田中さんのブログを読んで日本の企業と政府を考えると、日本は他国と違う特殊な国なのだ、内需で十分遣っていける国なのだと悟り、最先端の技術で物造りをやり、外国には欲しかったら売ってあげても好いよ、値段はこれね、嫌なら好いよと言える国になって欲しいですね。これだと国の守りもシッカリと、国民生活もより安寧に暮らせます。

投稿: ナベ | 2016年6月14日 (火) 16時42分

<国民は不景気は自分たちに問題があると信じ、さらに努力を重ねます。その結果として貧困化が進んで来た事には誰も気付きません。>田中様がときあるごとに指摘しているこのあたりのことを論じている人を見たことがありません。私もこのブログ初めて勉強しました。財政問題や移民外国人労働者問題についての正論はたびたび見かけますが、田中様のこの話は他にありませんね。これは拡散すべきです。チャンネル桜にでも出て話してほしいです。すべてはお金を刷ること、内需拡大することで、と言うことはどこかからの圧力でしょうか。

ところでナベ様、リチャードクーさんは何と言ってたのでしょうか?

投稿: 八丈島 | 2016年6月14日 (火) 18時11分

>すべてはお金を刷ること、内需拡大することで、と言うことはどこかからの圧力でしょうか。

八丈島さん

元日銀の客員研究員でドイツ人経済学者のリチャード・ヴェルナーさんは日本経済に関して、80年代から米が裏で操っていると、はっきりそう言っています。

投稿: 田中 徹 | 2016年6月14日 (火) 23時01分

八丈島様

 リチャードクー氏は確か野村総研に属されていたと覚えていますが、若手の溌剌とした氏の論は他を圧倒していた、と私は感じていました。

 クー氏の主張は「バランスシート不況」というものでした。バブル崩壊後、銀行も企業も少しでもバランスシートを好く見せようとして悪足掻きしていました。銀行は企業に新たな貸付をし、古い債権を回収するという、所謂貸し剥がしまで遣ったのです。ここから銀行と企業の相互不信が始まり、現在も企業の社内留保が増え続ける原因の一つに成っています。
 ここでクー氏は、政府はバブル時代には多くの税収を得たのだからその金を銀行に注ぎ込み、無茶な債権回収しなくても好い様に指導するべきだと主張しました。しかし政府はなかなかそうしようとしません。でも結果的にはそうするのですが、多分3-5年後くらいで遅すぎました。

 いつも思うのですが、何か問題が生じたり生じようとしたとき、正論もしくはその状況に合致したことを言う人が必ずいます。しかしそれを見抜いて実行できる政治家がいないのが国民の不幸なのかも知れません。ただ政治家を選ぶのは国民ですからね。2年前の消費税増税もそう感じます。
 今回の都知事騒動を見ていると、付くづく健全な野党とマスコミが必要だと感じます。舛添さんの金の問題は昔から言われていたし、人間性にも問題ありといわれていたにも関らず200万票以上を集めました。選挙前にこの問題を掘り下げるマスコミはいなかったのです。それを知らない都民は大恥かかされました。

投稿: ナベ | 2016年6月15日 (水) 09時01分

貿易黒字は一種のペナルティ

・・・非常に重要な切り口→分析→将来展望へのヒント・・・新聞TVマスコミが目先のことばかりの愚民洗脳(じ自分もその中の一部だったりして…)的情報操作とは大違い、素晴らしい内容ですね!
ナベさん…八丈島さんの援護射撃も凄いですね。  

投稿: AZ生 | 2016年6月15日 (水) 16時10分

こんにちは

石原莞爾は東京裁判において、『戦争責任を問うなら、ペリーをここに連れて来い!我々は江戸時代で満足していたんだ!』と言ったそうです。

全くその通りですが、ところで、なぜ世界は日本を放っておいてくれないのでしょうか?

私はここに欧米の「内部抗争」があると思っています。かつての植民地主義が欧米の国間の覇権争いが元凶であったのですが、明治以降の日本はこれに巻き込まれています。

米国の「西進=マニフェストディスティニー」も、英国から覇権を奪い取るための性質が根本にありましたが、日英同盟を破壊させてて日英双方を孤立させ、米国の野望の前に立ちはだかった日本を叩き潰し、ヤルタ会談ではスターリンと談合して英国を覇権の座から引きずり降ろしました。ソ連は米国から多額の支援を受けてやっとこさ対独戦に勝利したくらいの弱小国でしたから、この時点で米国の覇権が確定したわけです。

このように、外国は何かと他国をコントロールしたがるものですが、昨今の急速なグローバル化により、国よりもむしろ企業が主体となっています。

その欧米グローバル企業にとって、超先進技術を持つ日本企業は脅威であると同時に金の卵を産む「鶏」でもあります。ですから、日本政府や日本企業をコントロール下に置くことが、脅威を芽を断つことと錬金術を手に入れることの一石二鳥なわけです。

対抗手段は色々とあろうかと思いますが、まずは「軍事的独立」が必要だと思います。

投稿: 硫黄島 | 2016年6月17日 (金) 19時21分

対抗手段は色々とあろうかと思いますが、まずは「軍事的独立」が必要だと思います。
・・・硫黄島さまのコメントでありますが正にそのとうり。その昔おばかさん(失礼)かもしれないと言われたジョージ・W・ブッシュ(ご子息の方の大統領)は我が国日本の事を”腰抜けだー”と発言されたとかしていないとか・・・その理由としては日本海の対岸に位置する半島の某国に何十人以上も拉致されても何ら軍事的反撃をしていないからだそうです。身代金としてうん十億以上とかの身代金を出したらしき。なので全く蛇慰安にコズかれっぱなしの”のび太”そのもの。70年に亘るお花畑洗脳を外国とか反日マスコミにさらされっぱなしの現状打破がまず第一目標であるべきでしょう。

投稿: AZ生 | 2016年6月18日 (土) 19時42分

AZ生 様

90年代のことですが、米国務省の高官が河野洋平の支那への隷属姿勢を指して『奴はクレイジーだ』と、メディアで公に批判したそうです。自分とこのキッシンジャーを棚上げするところがいかにも米国らしいのですけども、それはともかく、河野はクレイジーの名に恥じず、人道支援と称して北朝鮮に大量の「日本産高級米」を送っています。しかも、『責任は私が取る』と言って独断で送っています。

このコメは結局、というか当然ながら北朝鮮の飢えた人民の胃袋には入らず、多くが韓国に転売されて北朝鮮政府の収入に化け、核開発などの軍資金となりました。責任を取ると言った河野は、当然の如く知らん顔しています。石原慎太郎はこのコメ支援に大手商社が絡んでおり、証拠も揃っていると言っていました。

このクレイジーマン河野は、保守を自負する自民党の総裁にまでなっています。「チキン=腰抜け」どころのレベルではありません。ブッシュはまだ自民党の良心に期待していたからこそ、チキンという表現に留め、自民党の再起を訴えたのでしょうが、私はクレイジーのほうが的を射た表現だと思います。

拉致を金正日が公式に認めてから風向きが変わり、90年代と比べれば幾らかマトモになったとはいえ、河野や野中、加藤といった極左寄生虫を体内で何十年も培養し続けた自民党の膿はそう簡単に排出できる代物ではありません。

自民党を本来の「中道右派」に立ち直らせ、新たに真正保守政党と政権を争うくらいになるには、まだまだ時間がかかりますが、全ては国民の不断の努力次第です。諦めたらそこで終わりです。

投稿: 硫黄島 | 2016年6月22日 (水) 17時59分

硫黄島様
 
 詳しく自民党内に生息する反日勢力の解説、ありがとうございます。マネジメント社の「マキャベリ兵法」の君主論では「他国が強くなるのを助ける国は自滅する」
という言葉があると解説されているそうです。河野家は3代にわたって反日勢力・・・全く気の遠くなる様な間抜けぶりと理解しております。日本の有権者さんは本当にお人よしですね!それでも民進党、社民党などの化けの皮が剥がれてきたのは幸いです。

 又、希望の持てる話題としては実務家で民間シンクタンクの独立総合研究所代表取締役社長、近畿大学経済学部総合経済政策学科客員教授(国際関係論)、東京大学教養学部講師で夫人は水産学研究者・水産学博士で、同研究所取締役自然科学部長の青山千春氏(国産エネルギーとして有望なメタンハイドレード開発の第一人者)、長男は同研究所研究員の青山大樹氏でいらっしゃる 青山繁治さんが自民党から参議院議員選挙に出馬されるそうです。「日本を今一度洗濯いたし申し候」・・・坂本龍馬と同じ心境と推察いたします。 がんばれ日本・頑張る日本。

投稿: AZ生 | 2016年6月22日 (水) 23時16分

AZ生 様

マキャベリは中世の血にまみれた時代の欧州に生きた人ですから、隣国を助ければ寝首を刈かれる現実を嫌というほど体感しています。

現在の世界では少し情勢が違います。日本の隣国である台湾が、蒋介石の徹底した反日洗脳教育にも関わらず、国民(台湾人)が極めて親日的であるように、価値観を共有できる隣国が存在します。尤も、誠実を絵に描いたような日本人だからこそですが。日本政府が支那と国交を回復するにあたって台湾との断交を決めたとき、石原慎太郎ら自民党右派が抗議の血判書を日本政府に叩きつけました。しかも、なんとあの古賀誠が血判書に参加しています。アジアの赤化防止のため、アジアの友を植民地支配から救うため孤軍奮闘した大日本帝国の面影がまだ残っていたのですね。

こういう日本のような国が、残念ながら世界にはありません。マキャベリは当然ながら日本という国の存在を知らず、他国に対して服従や過大な見返りを求めない、愚直に平和と友好を願う民族が世界に存在する事実を知らないのです。もしマキャベリが日本を知れば、考え方が変わったでしょう。かのルソーは、理想国家とは君主と国民の間に利害対立がなく、固い絆で結ばれた国だと言いました。しかし、そんな国は存在しないから、消去法で民主主義を選択するしかないと言っています。ところが、そんな国が実際にあったのです。それが日本です。

問題なのは、支那・朝鮮という古代に時の流れが止まってしまった野蛮民族の国が、日本の隣に存在するという現実です。

彼らには友好の概念がそもそもありません。河野洋平にせよ、全体主義(共産主義)への羨望が根底にあったのは事実だけど、支那や北朝鮮に対して愚直に友好を求める姿勢は、日本人のDNAがそうさせるのでしょう。しかし、どれだけ友好を求めても、彼らにはそもそも友好の価値観がないのだから、貢ぐ君は奴隷だと思っています。チヤホヤするのは利用価値がある間だけです。嗚呼、なんと憐れなことか。

とにかく、支那人・朝鮮人とは価値観を共有できないことを、日本人は認めるべきですね。神武天皇は八紘一宇だとおっしゃいましたが、一方で野蛮人とは分かり合えないとおっしゃっています。つまり、八紘一宇に野蛮人は「含まない」ということです。自称保守政治家はそのことをちゃんと理解しているのでしょうか、甚だ疑問です。

投稿: 硫黄島 | 2016年6月23日 (木) 07時17分

硫黄島 様

素晴らしい『支那・朝鮮人と我が国日本との価値観の相違・・・近代社会学的考察』講義 ありがとう御座います。本日読み直してみて革めて内容の濃さと明快さを実感致します。

投稿: AZ生 | 2016年7月 4日 (月) 05時22分

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