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2016年7月31日 (日)

実は米より成長率が高い日本(ヘリマネシリーズ最終回)

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日本のエコノミストや経済評論家と言われる人達は、二言目には日本の潜在成長率は低いので成長戦略や構造改革が必要だと言います。政府もそういう前提で動いているようです。しかし長年もの造りの現場にいて日本製品の優秀性を嫌という程見て来た私には、彼らが言う事が全くピンと来ません。

マスコミなどが不況だ不況だと煽る割には国民は皆優雅にやっているように見えます。多少ホームレスはいても失業者が街に溢れている事もないし、治安の良さも世界有数です。落とした財布は必ずと言っていい程戻って来ます。

これまで5回くらい置き忘れた私が言っているのですから間違いありません。因に戻って来なかったのはタイだけです。これは置き引きでした・・・横道にそれましたが、日本人は皆小ぎれいなクルマに乗って、着るものもお洒落になり、レジャーを楽しんだりしているではありませんか。

駅や空港、市役所などの公共施設もいつの間にか新しくなり、斬新なデザインのものに変わっていたりします。世界から日本に観光に来た人たちも、日本が不況だとはとても思えないと言っています。一体どういう事でしょうか。

確かに日本円で近年のGDPなどを見て行くと絶望的な気分になります。名目で言えば20年も前の95年当時と変わらないのですからビックリです。2000年と比較すればむしろ減っています。他国は順調に成長しているというのに納得出来ません。何かからくりがある筈です。

そこで基軸通貨であり世界共通の価値を持つドルベースで日本のGDPを調べてみました。為替は遠の昔から変動相場制なので、外貨ベースで見れば基本円高の日本が有利になる事は想像に難くありません。そう思いつつ統計から数字を拾いだして計算をしてみると、やはり面白い事が分かって来ました。そんなに悲観する内容ではなさそうですよ。

まず、為替で大変動のあったプラザ合意の85年を基準として考えて行きます。当時のドル円レートは1ドル239円です。実質GDPは333兆円になります。次に直近で最も円が高かった年を見ると12年の80円のようです。実質GDPは519兆円もあります。という事は円ベースで見れば28年間で56%成長した事になります。

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(ドルベースでのGDP推移、実質実効為替レートを参考にして適正なレートで計算すれば図のような右肩上がりとなる。)

さて、では為替の変動を加味した場合どうなるでしょうか。つまりドルベースならどれくらい成長しているかという事です。239/80だと2.99倍になり円ベースでの成長率(1.56倍)を掛けると何と、4.67になり、367%もの成長になるのです。これは年に4.9%の成長を28年間続けるのとほぼ同じです。驚愕の事実ではないでしょうか。

つまり、例えば日本が米の属国で、ドルを自国通貨として使っていたなら年平均4.9%の実質成長で、GDPは5倍近くになっていたのです。一方の米はと言えば7兆5938億ドル(85年)のGDPが16兆3488億ドル(12年)になったに過ぎませんからたった2.02倍です。日本の367%増に対し102%増でしかないのです。

これにさらに人口の増加率を加味すれば、増加の少ない日本は342%となり、35%も人口が増えた米は53%と増々差が開く訳です。なあんだ、やはり日本は成長しているじゃないですか。(笑)

日本人は経済を当然ながら円でしか判断しませんが、世界の人はドルで評価するのです。しかも、こっちがむしろ常識です。円でいくらかなんて知った事ではないのです。

そう考えた時に、現状を見て悲観ばかりするのは賢明でない事が分かります。客観的に物事を見る事は大切ですが、そう言いながらも主観的にしか見ていない我々がいるのです。

ただ、今は意味のない円安誘導をしているので実質実効レートで見ればかけ離れたレートになっています。それでも1ドル120円である昨年までの31年間を計算しても日本の一人当たりの成長率は198%もあり、米は60%に過ぎません。

問題は日本は低成長の国だと勘違いして企業が国内に投資をせず、あるいは政府が構造改革などの誤った政策を採っている事です。それをやると増々デフレになり、それと連動して円高が進みます。

その場合は必然的に政府負債が積み上がりますから、また増税が必要だという事になりかねません。日本にとって一番望ましいのはヘリマネでも何でもいいので政府が財政出動をしてマネーストックを増やし物価を上げ、結果として円安が進む事です。

ドルベースでの国民一人当たり実質GDP
                日本      米国
85年 1万1545ドル 3万1851ドル
12年 5万2191ドル 5万0836ドル
  

米の要求を呑み、円高を容認した為にデフレになり国民は随分損をして来ました。本来なら円高になった分は成長に廻っていたのです。為替のハンデがなければそこに書いた数字どころではないでしょう。その額は巨大です。政府は無策を恥じ、国民に対し損害賠償をする必要があります。

そういう意味でのヘリマネなら公共投資などという面倒な事をしないで直接国民に渡せばいいのです。年に一人当たり50万円で65兆円です。ベーシックインカムとしてしばらく実施してはどうでしょうか。

景気が良くなってベアが実施されれば、その分をベーシクインカムからマイナスして調整して行けばいいのです。そうすれば過度なインフレにはなりません。ベアが増えてベーシクインカムがゼロになる頃には日本経済は逞しく成長軌道に乗っている筈です。

4回に渡ったヘリマネシリーズは今回で一旦終わりにしたいと思います。拙い文章、記事にお付き合いいただき大変有り難うございました。

 

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

田中様、大変勉強になりました。おもしろかったです。でも少し難しい部分もありました。

今でも米に比べ成長しているのにこの上政府がお金をばら撒けば、日本は高度成長してとんでもないことになりますね。GDPが拡大することは最大の安全保障にもなりますし。

投稿: 八丈島 | 2016年7月31日 (日) 19時22分

八丈島さん
おっしゃる通りです。日本が復活する事を望まない連中が寄ってたかって奸計を巡らし足を引っ張ります。その中で一番大きい要素が円高です。

それを避けるには物価を上げるしかありませんが、その綱引きの中で85年以降日本は負け続けているのです。

難しい部分があったとおっしゃいましたが、経済問題は私にとっても難しい事が山ほどあります。疑問点があれば何でも質問して下さい。正解が出せるかどうかはともかくとして、一緒に考えて行きましょう。

投稿: 田中 徹 | 2016年8月 1日 (月) 09時41分

実は米より成長率が高い日本(ヘリマネシリーズ 大作四部作)を読み終わって・・・

うーん、普段使ったことの無い脳髄部分への入力過多・・・ゆっくり読み直してみますね。金融緩和を日銀とかが行っても、一般家庭・個人の財布は暖かくならなかったねー・・・なのでヘリコプターマネーがいいんじゃないかい?・・・あ、クリスマスプレゼントとかお年玉名目で10万づつ配っちゃう。あ オシャレですねー。

投稿: AZ生 | 2016年8月 1日 (月) 18時26分

 たとえばですが「現金配布」と「長期に渡る税負担の免除」とでは、経済効果としてはどちらがより良い結果を生むのでしょうか。

 目先の5万円も短期的にはかなり魅力的ですが(笑)一年間以上の市県民税免除であればなんとなく心がゆったりとしそうな気がいたします。

 それよりも私の本音は「税とは増え続ける物だ!と思い込まされている皆さんの意識が変わるほうが重要」なのですが・・・・(笑)
それを本気でやったら政治屋は命がいくつあっても足りませんねぇ~

 ところで都知事選挙にて各候補の演説を拝聴させていただきましたが、一番心に響いたのはドロンパ氏でしたね。あれだけ配慮もクソもないど真ん中の演説には引き込まれました(笑)。そういえば彼も昔にCH桜の代表と袂を別ち合った一人ですね。
 トリ越やパペットを阻む為に小池氏へ流れた票がどれほど戻ってくるのか? 次の都議会選挙が非情に楽しみになりました。

 追記です。今年はいままで表へ出てこなかった「裏事情」や「疑惑」が随分と知られるようになりました。ノビテルが都議会とズルズルだった事もバレちゃいましたし、今回でトリとノビは終わりでしょう。その都議会の裏ボスも名前と怪しい経歴が表へでてしまいましたし。
 私はえらそうに情勢を俯瞰してみています!などとはゆめゆめ思ってはいませんが、日本から離れた場所で情報を見ていますので、多少は渦中にいらっしゃる日本の方とは違う感想を持つ時がございます。
単にヘソ曲がりかも?イヤ、絶対そうだ(笑)。

 
 

投稿: 南国通信 | 2016年8月 2日 (火) 22時29分

>たとえばですが「現金配布」と「長期に渡る税負担の免除」とでは、経済効果としてはどちらがより良い結果を生むのでしょうか。

南国通信さん、いつも有り難うございます。

この問題は結局財源の問題でしょう。現金配布が赤字国債などによる財政出動であれば効果は絶大です。5万円の給付金として、限界消費性向にもよりますが乗数効果を考慮すればGDPを1%以上アップさせます。

さらに結果として6兆円程マネーストックを増やしますから、翌年の給与にも反映されます。乗数効果の次年度分もあり、効果は長く続きます。さらに翌年も5万円給付するなら効果の大きさは想像出来るでしょう。アバウトですみません。(笑)その辺の詳細な計算はプロに任せたいです。

減税の場合は、その分の再分配による所得の移転がないだけで、減税分を補正か何かを組んで補わない限りプラスマイナスゼロとなり効果は殆どありません。マネーストックも増やさないので翌年の給与アップにも繋がらない訳です。減税分の一部が貯蓄に廻れば返って経済は悪くなります。

こんなもんでよろしいでしょうか。

投稿: 田中 徹 | 2016年8月 3日 (水) 10時26分

田中さん(様)
ストンと腑に落ちるご解答に感謝いたしております。
ありがとうございました。

投稿: 南国通信 | 2016年8月 3日 (水) 20時04分

なにやら 黒田さんがヘリマネを実施しそうな気配がチラホラしてきました今日この頃・・・少しは期待しちゃおうかな~!

投稿: AZ生 | 2016年9月17日 (土) 05時58分

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