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2016年7月28日 (木)

ヘリコプター・マネーについて考える(続編)

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---- TPP消費増税 /カジノ解禁に反対します ----

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 前回の記事は我ながら面白いところを突いたと自画自賛する自信作だったのですが、思いのほか反響が薄かったです。(笑)ヘリマネの金額が金額だけに荒唐無稽と思われたか、現実的でない話は読んでも意味がないと思われたか、そのあたりは定かではありません。

しかし、この話は日本経済としては根源的なところです。そこを理解しない限り先へは進み様がないので、今日は続きをやる事にしました。まず肝心要の為替の推移を辿ってみます。米ドルが基軸通貨となった戦後のブレトンウッズ体制下では、ドル円は360円の固定でした。

さすがにこれは日本を甘く見過ぎで、当初貿易立国を目指すしかなかった日本は貿易黒字によって外貨を溜め込む事になります。70年代の繊維摩擦を経て80年代には日本の輸出力は鉄鋼や半導体、自動車でさらに強化されました。戦後40年で再び米を脅かすまでに至ったのです。今回は軍事力ではなく経済力です。

そこで米主導により、日本を標的にした国際的合意がなされます。71年のニクソンショック以降、為替は変動相場制に移行していましたが、85年のプラザ合意で米は露骨に牙を剥いて来るのです。さらに無料OSのトロン潰し、当時無敵の半導体に至っては米製の輸入枠を強制し、技術供与まで要求する有様でした。日本政府はなす術なくこれら全てを呑む事になります。(通産省国売り物語り/参照)

当然円高が進み85年当時240円だったドル円レートは2年くらいで倍の1ドル120円台に達するのです。そこに至る前に政府は経済モデルのパラダイムチェンジをし、内需主導型に誘導すれば良かったのですが、米の悲鳴が聞こえない無能な政治主導で外需依存は続きます。

貿易は基本的に物々交換が原則です。この意味は総輸入品と総輸出品が等価であるという事です。それならば無用の貿易摩擦は起きませんし、為替の変動相場制も必要がなくなります。貿易赤字で苦労をする国も無くなるというものです。

ところが国際競争力を維持したい日本の完成品メーカーは、コストダウンをしてでも輸出増にこだわりました。それは必然社員への給料を圧迫する事になり、協力企業に対しては無理な要求が常態化します。その結果はデフレへの坂道を転がり落ちる事になるのです。

しかし、このやり方では貿易摩擦の解決にはならず、際限ない円高を生じさせるだけです。それに気がついたメーカーは海外生産に切り替えて行くのですが、既にデフレで購買力の落ちた内需に対し、てこ入れをしようというモチベーションは湧き難かったと言えるでしょう。追い討ちをかけるようにバブル崩壊後はバランスシート不況に突入します。

こうなると明らかに資金需要が減ります。バブル時に莫大な借金をした企業は、返済に必死にならざるを得ないので銀行の貸し出し残高は減る一方です。つまりマネーストックの伸びが90年以前の平均9%から2%にまで落ち、それとリンクする名目GDPは横這いが精一杯となって行くのです。

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(マネーストックの伸び率と経済成長とは完全にリンクする。バブルの時は、はみ出した部分が資産インフレを起こした。しかしながら、その分が実体経済に及ぼす影響は大きくはない。)

前回もグラフで示しましたが、80年代には名目で平均で6.2%(実質4%)もあった経済成長率はほぼゼロにまで落ち込むのですから尋常ではありません。仕組まれた事とは言え、米の狙いは100%達成されたのです。95年にドル建てで米の73%もあった名目GDPは20年後、3分の1にまで減らされます。米の人口増加を考慮しても異常です。

人のいい日本人は、全ては自らの責任と思わされ納得しているようですが、全くそんな事はありません。その間も実質的な付加価値生産力はむしろ高まっていますから円建てGDPは右肩上がりでなければセオリーに反するのです。人口がほぼ横這いという事は、生産性向上分は上積みされるべきです。ではなぜGDPが横這いなのでしょうか。

経済成長を保証するものは人口要因だけでなく、技術力や合理化、ロボット化等の生産性向上もありますが、一番大きいのは中国を見ても分かるようにマネーの量です。偽札でさえ経済成長に貢献します。日本のような先進国の場合もマネーの量が適切に増えなければデフレを解消する事は出来ないし円高も解決出来ません。頑張れば頑張る程むしろ円高は進むのです。

この悪循環を断たなければ日本再生の道はないのですが、政府や日銀は相変わらず頓珍漢な事をしています。プラマリーバランスの黒字化や、消費税増税はインフレ時に採るべき政策です。日銀に至ってはマネタリーベースのみを増やす事に奔走し、肝心な貸し出しの指導を91年以降銀行に対して行っていません。片手落ちもいいところです。

銀行は銀行で貸し出しより直接金融(投資)に熱心で自らの使命を忘れ去っています。信用創造という特殊能力を持つ公共性の高い金融機関は企業として莫大な利益を生む事が仕事ではありません。

お金を中小企業や個人に回して円滑な経済活動や健康的で豊かな生活を支える事が使命であり、また自らの存在意義を証明する事でもあります。いつの間にかグローバリズムを標榜する市場原理主義の新自由主義経済に染まり道を誤ってしまったと断じざるを得ません。

いや、今や銀行は貸し出しを積極的に行っている、と主張するブログもあるようですが、笑わかしてはいけません。(笑)近年マネーストックの伸びは政府支出(財政出動)や経常収支黒字分を除けばほぼゼロ、あるいは微増で推移しています。これは貸し出しが伸びていない何よりの証拠です。

つまり銀行は、やっているふりはしているのかもしれませんが、実は何もしていないのです。ただ、小泉、竹中時代のように、いざという時に政府の支援が得られそうもない状態では、これもある程度やむを得ないと言えます。確かにペイオフ1000万円なんてふざけたことを言っているようでは見通しが暗いと言わざるを得ません。

ところでおさらいですが、銀行というのは凄い力を持ちます。預金準備率(今は平均で1%)から言えば日銀当座預金に預けている残高の100倍まで貸し出せるのです。今300兆円もありますから、その気にさえなれば3京円も貸し出す事が出来ます。日銀に至っては無限に信用創造出来るのですから正に神ではないでしょうか。

という事は資金供給量さえ適正で、人口や為替などの一定の条件が揃えば、自国通貨建てでは無限に右肩上がりの経済成長を続ける事が可能です。日本のような先進国と言えども下手をしなければ昔の中国のように10%成長も夢ではないのです。但しこの場合供給力を上回るところは物価上昇となりインフレ率に表れます。実質成長が5%なら名目10%成長の場合残り5%がインフレという訳です。

あるいはインフレ分の一部は日本のバブル期のように資産投資に廻って株価や地価を高騰させるケース(上の図のピンク色のゾーン)もありますが、実際は政策次第、つまり規制等によりコントロール可能です。最悪のケース、バブルが起きたとしてもソフトランディングが可能な事は近年何人かのエコノミストによっても指摘されています。日本のバブル醸成と崩壊は明らかに人為的なものでした。

では肝心な、資金の供給方法ですが、今の様に資金需要が民間になければ政府が財政出動によって供給するしかありません。その額は90年以前の水準ならば、M2の9%として年間80~90兆円になります。これなら過去の例を見ても名目で6%程度の成長は可能です。実質成長が4%以下だとすれば2%のインフレターゲットは達成される事になります。

ただ、現在は90年以前と比べ地価が低い状態なので、6%成長に対するマネーストック増は当初80兆円以下でも十分かもしれません。もちろん成長が続くと地価も連動して上がりますから最終的には90兆円くらい必要になる場合も考えられます。残念ながら、そのあたりの数字的精度は素人の悲しさ、資料不足につき保証出来ません。かなりなブレはあり得ます。(笑)

財源は日銀が買いオペを進めている今なら赤字国債で問題ないでしょう。新規国債発行分と同額を買いオペすれば実質的には日銀引き受けと同じです。政府の負担は増えません。もちろん全て政府におんぶにだっこでは虫が良過ぎます。並行して民間銀行による貸出しを増やす政策が必要である事は論を俟ちません。

90兆円の配分は当初政府が100%負担ですが、徐々に銀行からの貸し出しを増やします。あくまでも自律的発展の道を作るのが目的なので、最終的には政府負担はゼロが望ましいです。これで90年以前の状態に戻る訳ですが、全ては政府のやる気次第ではないでしょうか。

ちょっと蛇足になりますが、例えば今現在4%程度の売り上げ増が可能かと問われれば、個人的には十二分に可能と言えます。自分の仕事や廻りを見ても、10%くらいは余裕ではないでしょうか。尤も、10%成長を10年続けられるかと言われれば、イエスとは言い切れません。慢性的人手不足の労働集約型産業も少なからず存在する事実を考慮すれば平均5%前後がいいところでしょうか。

その数字を逆算すればマネーストックの伸び率は過去の例から8〜9%程度という事になります。その場合は連動して為替レートも円安に振れて行きますから何年後かはともかくとして、GDPが前回の話の1200兆円になった局面では、1ドル200円以上の円安もあり得る訳です。

1200兆円というGDPに対する為替レートが、ドル建てで現状並となる240円を上回る円高になるなら、その分が日本の国際競争力という事になります。逆に言えば物価上昇に対するアローアンスとも言える訳です。ちょっと難解かもしれません。

自分の中では論理的整合性は取れているのですが、説明は難しいです。この話は未だ続きます。

 

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コメント

「株式日記と経済展望」ブックマークさせていただきました。 今後、折に触れて読み込みます。

・・・・ですが、思いのほか反響が薄かったです。(笑)・・・・・

 他の皆様のことはわかりませんが、私個人といたしましては、消化吸収(理解すること)に時間が必要ということであり、それ以前にゆっくりと時間をかけて咀嚼をしているのでございますwww

 このブログは多くの読者にとりましては必需品ですので、どうかそれをお忘れなき用お願いいたします(笑)。

その証拠とでもいえるのは、以前の記事に対してもコメント投稿が絶えない部分をみればあきらかです。

投稿: 南国通信 | 2016年7月28日 (木) 19時19分

南国通信さん、反響はランキングにも表れますが、今回全然上がらなかったのが意外でした。凄く上位に行って目立とうという気は安全保障上(笑)も毛頭ないのですが、ブログをやるからには、せめて100位以内くらいはキープしたいです。居心地がいいのは75〜100位の間くらい?

投稿: 田中 徹 | 2016年7月29日 (金) 09時58分

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