仁義なき日独戦(EVの時代は来るのか編)
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前回の続きです。これまでハイブリッドカーというと、燃費ばかりが注目されて来ました。JC08でリッター当り30キロ走るとか40キロ走るとかです。確かに数字だけを見ると凄い時代になった、と思わざるを得ません。
ところが実燃費となるとせいぜいその半分がいいところだったりします。条件のいい環境で凄く上手い人が運転すれば70%くらいいくかもしれませんが、その逆だと30%程度だったりもするのです。
問題は一般車よりも高いハイブリッドカーの価格を考えた時に、果たしてトータルでみて得なのかどうなのか、黎明期の、一般車より80万円は高いという時代は過ぎ、大衆車クラスなら30~50万のアップでストロングハイブリッドカーが選べるようにはなりました。
しかしながら、公的支援、助成金などがないと仮定した場合に、そのハイブリッド分を年間1万キロも乗らない普通のドライバーが取り返せるのかと言えば、ガソリン代が安くなった昨今、やや疑問と言わざるを得ません。環境に対するアドバンテージをどう見るかですが、経済的には微妙な線上にあるのは確かではないでしょうか。
一方のガソリン車も燃費の向上は目覚ましく、今や普通に走って実燃費10キロ以上なんてクルマはざらなのです。欧州のダウンサイジング+ターボ車も然りです。御三家と言われる高級ブランドのドイツ車でさえ例外ではなく、正に隔世の感があります。
(新型のメルセデスベンツCクラスはJC08で17.3km/l も走る)
しかしながら先進国のメーカー、特に日本はハイブリッドカーの開発に血道を上げています。なぜでしょうか。その解のひとつは、今後増々厳しくなる排ガス規制や燃費規制があります。もう一つは先進国の役割を自覚したクルマ屋の矜持、飽く事のない探究心でしょうか。
今や全世界での自動車生産台数は1億台/年に迫ろうとしています。その30%が日本ブランドで、残りの大半もドイツなどの先進国製なのですが、その先進国でさえ未だに地球を汚し続けるクルマしか造れていません。これが問題です。クルマによる大気汚染は排ガス偽装ディーゼル車だけの問題ではないのです。
では現時点で地球を直接汚さないクルマと言えば、そうです。EV、電気自動車しかありません。(FCVは現時点ではお話しにならないので無視)。高かったリチウムイオン電池も最近では10万円/kWh を切るところまで来ているようです。爆発的普及は目前のようにも思えます。
ところがこのEVでさえ化石燃料を燃やした電力を使ったのではエネルギー効率でもWell to Wheel で見ればPHVと大差無くなるのです。大気汚染然りです。かと言って再生可能エネルギーで賄えるかと言えば、極々少数ならという事になってしまいます。
つまり大量のEVが走る時代は、世界で言えば数百、いや全てEVという事にでもなれば千基以上もの原発が必要になるという事を覚悟しなければならないのです。
日本で言えば、7000万台のクルマが全てEVに置き換わったなら100万kW級の原発が最低でも後20基は必要だと言われています。原発の稼働率を考えたなら倍の40基は必要かもしれません。同時間帯集中を考慮すればさらにその倍か?
クルマによる大気汚染と原発事故による大気汚染リスクを比較するくらいバカバカしく空しい話もありません。答えは明らかではないでしょうか。そうすると、どうも発電所に頼らないクルマ作りをするしかなさそうです。
という事は、クルマを減らして行く選択肢がないなら、内燃機関をベースに一台一台を、よりクリーンにして行くしかないという事になります。いずれにしてもEVの時代は、少なくとも向こう半世紀くらいは来そうもない、というのが現実なのではないでしょうか。
ただ、前回も言及しましたレンジエクステンダーEVなら500キロくらいの航続距離が望めそうだし、上手くすれば連休のサービスエリアで途方に暮れる事もないかもしれません。全体の何%なのかは知りませんが、一定数は確保出来る可能性はあります。
想像してみて下さい。そこら中が電気自動車で充電スタンドが街中に出来たとしても急速充電に20分前後(80%充電)もかかるのです。連休の高速道路のサービスエリアに長蛇の充電待ちのクルマを並べたいでしょうか。高価な急速充電器を何個も並べるコストは誰が負担するのかという問題も解決されません。
家庭で充電するにしても毎日乗る人にとっては毎日の作業になります。集合住宅の人はクルマを持てなくさえなりかねないのです。それにしても、夜一斉に数百万台が充電を始めたと想像すれば恐ろしくて身震いしてしまいます。一体どういう事が起きるのか想像もつきません。
一回ガソリンを満タンにすれば何もせずに1000キロも走れる今のハイブリッドカーとは比較するまでもありませんね。(笑)尤も、それをわざわざ面倒で、しかもかなり高価なプラグインにする意味はよく分からないのです。無理矢理形式燃費を良くして諸規制に対応するため?としか考えられません。
(ソーラーパネル付きが選べるプリウスPHV これだけで、条件が良ければ年間1000キロも走れるというからビックリです。但しオプション価格として30万円くらいアップか?)
いずれにしても、無限とも言える可能性を持つハイブリッドカーにメーカー各社が血道を上げる事は理にかなっています。クルマが生き残るには当面それしかないのですから。
その場合、レンジエクステンダーEVやシリーズハイブリッドをその仲間に加える事が適当であるかどうかですが、過渡期としてはある程度認めざるを得ないのではないでしょうか。
尤も、シリーズハイブリッドと言っても、いまやホンダがアコードやオデッセイで採用している変則型がいい結果を出しているので、そういう進化は今後もあるのかもしれません。こちらは明らかにハイブリッドの仲間です。
ホンダは低速に強く、高速域では今一であるモーターの特性をみて70キロ以上の高速域は発電用としても積んでいるエンジンをギアボックスなしでフロント駆動輪に直結して走らせています。しかもそのエンジンが高回転用に改良されたアトキンソンサイクルエンジンと来ていますから念が入っているのです。正にいいとこ取りと言えます。
但しこれはある程度大きなクルマでないと難しいです。100kWを超える大出力モーターに加えて2000ccのエンジンと、それなりのバッテリーを積む訳ですから重量とコストの点でハンデとなります。サイズから言えばラグジュアリーカーに属するアコードで400万円前後のプライスを高いととるか安いととるか・・それはあなた次第です。
まあでも、毎回引き合いに出して申し訳ないのですが、BMW i3 のレンジエクステンダー付きが511万円である事を考えれば、それよりははるかに価値があるのではないでしょうか。あくまでも個人の感想です。日本車は総じて安い。。
結論として、途上国はダウンサイジングのガソリンエンジンや、せいぜい簡単な構造のマイルドハイブリッドが主流とならざるを得ないので、先進国は各種本格ハイブリッドを深化させて行くのが当面平和でリーズナブルと言えます。先進国に関しては未だ奥の手もありますが、それは次回に述べたいと思います。
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