子供にも分かる財政の話
---- TPP/消費増税 /カジノ解禁に反対します ----
ブログランキングに参加しています。
今日は読者の方からリクエストがありましたので、仁義なき日独戦を一旦お休みし、子供にでも分かるような財政の話をしてみたいと思います。あくまでも子供に対する分かり易い話というのが前提の記事なので、表現が適切でない場合があるかもしれませんが、ご容赦いただきたいと思います。
さて、ご存知のように、元々の通貨の制度は金本位制と言われるものでした。要求があれば金(GOLD)とお金(ドル)を交換しなければいけないという大変な制度です。そのため国家は金を大量に保有する事に腐心しましたが限界というものがあります。
それに悲鳴を上げて、これからはお金と金を交換しない、と40年程前に言い出したのがジャイアンのアメリカです。日本やドイツなどが高度成長でアメリカを追い上げ、貿易赤字が際限なく膨らみ始めたのが大きな要因と考えられます。同時期に、為替が変動制になったのもそれが原因です。あくまでもアメリカが覇権国家としての地位を維持するためのものでした。
それ以降は管理通貨制度になり、政府はその気になればいくらでもお金を印刷する事が出来るようになります。しかし、考えてみれば、それはそれで危険な事です。権力を持つ政府がどんどんお金を刷るようになれば好き勝手が出来るようになってしまうのです。
そこで、その歯止めが必要になりました。法律で制限したり、中央銀行の独立性を強めたりしたのです。中央銀行の主な仕事は、政府の干渉を排除し物価を安定させる事です。つまり、人々が一番恐れたのは政府の暴走と、政府都合で作られかねないインフレだったのです。
お金を無制限に刷れば物価が上がる事は必然です。かつてのジンバブエやアルゼンチンでは恐ろしい程のハイパーインフレが起こり、お金の価値が劇的に下がりました。日本で言うなら毎日の買い物に1000万円の札束を持って行くようなものです。それが次の日にはもっと物価が上がるのですからたまりません。
そこで重要だと考えられたのが財政均衡主義です。これは、政府は予算を税金によってのみ調達するという考え方です。これならインフレは絶対に起きません。日本政府がプライマリーバランスにこだわるのはそこから来ています。古くさい経済学を信奉する頭の硬い経済学者も、そこが大事だと言います。
しかし、よく考えてみればインフレで苦しんだのは生産量に限りのある時代でした。今のように大量生産で自動車のような価値あるものがバンバン産み出される時代とは違います。水平分業で世界から部品や材料が無制限に調達出来る今とは全く条件が異なるのです。
政府は必要に応じてお金を印刷して国民に渡し、その膨れ上がって行く生産活動に協力しなければお金の価値が上がりデフレになってしまいます。お金の量がものの生産量に追いつかなければ物価が下がるのは必然なのです。
その場合、民間企業が活発に設備投資などをしてお金を銀行から借り入れ、政府の代わりにお金の量を増やせばいいのですが、銀行は担保がなければ貸してくれません。バブル崩壊以降、地価の下がった日本では借り入れをするにも限界があるのです。
当然、政府は地価が上昇する政策を採るべきなのですが、これまでの政権は固定資産税を上げたりして、なぜか逆の事をして来ました。それなら代わりに政府が責任を持ってお金を刷らなければ経済が停滞してしまうのは明らかです。
その場合、政府紙幣という、政府が直接お金を刷るやり方と国債を刷って金融機関に買わせる方法がありますが、日本は法律の関係もあって足りない予算は国債を刷って調達しています。国債を刷って銀行などに買わせ、そのお金を公共事業などに使うという訳です。
これは「人は長い目で見れば皆死んでいる」という言葉で有名なケインズさんという偉い経済学者が言い出したやり方でもあり、不況時には正しい経済政策だと言われています。国債を発行する事によって予算をたんまり持った大きい政府が、適正な再分配をして国民の所得格差をなくし国全体に購買力をつけるやり方ですが、なぜか今は格差が開いています。
その原因の大きなものは消費税です。理由は所得が少ない人も多い人も同じ率の税金を払うからで逆進性が問題とされます。消費税を上げる度に経済が落ち込んでいる事を見ても、制度自体に欠陥があるのは明らかではないでしょうか。
横道にそれましたが、国債の話に戻ります。政府が刷った国債は銀行や政府系の金融機関によって買われますが、弊害がない訳ではありません。銀行などが国債などの有価証券を買う事を直接金融と言いますが、それによって間接金融である貸出しが増えない場合があるのです。そういう意味では金融機関からお金を吸い上げてしまう国債の刷り過ぎには問題があります。
そこで日銀の出番になるという訳です。そうです。金融緩和です。銀行などが持っている国債を買うのです。これを買いオペと言いますが、今は年間80兆円のペースで買っています。これはかつて例がないので異次元の金融緩和などと言われているのです。
ところで日銀がその国債を買う資金はどこから来るのでしょうか? 答え・・どこからも来ません。日銀は国債を受け取る代わりに銀行などが日銀に持つ当座預金口座に、どこにもなかったお金を振り込む事が出来るのです。不思議ですねえ。私も長い間この理屈が分かりませんでした。家計の論理ではとても理解が出来ません。
しかし、現実にはどこの国の中央銀行もこのやり方でマネタリーベースと言われる資金を増やしています。これによって銀行には潤沢に資金が供給されるのです。逆に国債を売る時には、買う銀行が日銀に持つ当座預金口座から引き去られます。
だからここを見れば今現在、政府が国債を発行している額と、日銀が国債を買っている額の差が分かる訳で、当座預金残高が増えていれば買い越していると言えるのです。この理屈はお分かりいただけるでしょうか。
銀行が民間企業に対する貸出しを増やせば当座預金残高が減るのでは?と思われるかもしれませんが、銀行間でやり取りがあるだけ、つまりお金はA銀行の当座預金口座からB銀行の当座預金口座に移動するだけですから、その行為だけでは全体の当座預金残高に増減はありません。
ともあれ、日銀が国債を銀行などから買う事によって現金が増えた金融機関は投資に使ったり貸出しに廻したりします。つまり経済が活性化するという訳です。もちろん例外はあります。今の日本ではその効果を打ち消す政策を政府が採っているので効果は限定的です。
これでお分かりいただけるように、日本の様に供給力に余裕があってデフレになっているような先進国は、多少政府の負債が増えても、それが海外からでなく、しかも自国通貨建ての場合は問題がないという事になります。
日銀が買いオペをする事によって銀行に対する返済は一応完了するからですが、政府の一機関である日銀が政府に対し、買った国債を高利貸しのように、すぐ払ってくれなどと強引に迫ったりする事もありません。(笑)
そうしたところで、政府から受け取ったお金は営利団体でない日銀が持っていても仕方がないので結局国庫に戻す事になります。という事は、日銀が買った時点で事実上の負債は消滅しているのです。帳簿上は残っていますが、それも期日が来れば償還されて行きます。
お金には、それ自体に価値がある訳ではなく、人が産み出す付加価値にこそ価値があります。だからこそ、供給量に見合ったお金の量を政府や日銀は市場に供給しなければいけないのです。それが足りないからインフレにならないし、景気も良くならない訳です。
少しインフレになるだけで日本の財政問題は雲散霧消するのですが、それを妨げているのが、何度も言いますが消費税や外需依存策です。貿易や投資で儲かれば儲かる程、円高になりインフレになる機会が失われます。いくらドルを稼いでも、それでメシは食えないのです。
そのドルは米国債と交換されて米に還流し、米の経済活動に貢献します。一方の基軸通貨を持たない日本は、ひたすら内需を活性化し国民の所得を増やすしか経済成長の道はありません。その為にやるべき事は、
1)固定資産税の廃止
2)金融の自由化、貿易の自由化を制限(海外投資の制限等)
3)消費税率の引き下げ、あるいは廃止
4)観光立国を日本人による国内観光立国に改める
5)逆輸入品に対する関税を高くする
6)海外からの移民推進政策をやめる
7)日銀による窓口指導を復活させる
8)財務省による嘘の財政破綻プロパガンダをやめさせる
このように政府の出来る仕事は沢山あります。今はなぜかその逆をやっているので景気が良くなる訳はありませんね。
今回、これ以上易しい表現にするのは反って分かり難くなり、表現的にも困難だという事が分かりました。
さらに、この記事だけで財政の全てを理解する事は大学生にだって出来ません。(笑)従って、もし分からないところがあれば遠慮なく質問して下さい。共に考えて行きましょう。
昨日は「ご理解いただけたでしょうか?」というフレーズで締めましたが、よく考えたら無茶な話なので最後のところを訂正させていただきました。(訂正箇所黄色)
| 固定リンク
「経済・政治・国際」カテゴリの記事
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしてるのか?(最終回)(2024.08.30)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(5)(2024.08.29)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その4)(2024.08.26)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その3)(2024.02.07)
- 日本人はどこからやって来て、どこへ行こうとしているのか?(その2)(2024.01.29)
コメント
早速ありがとうございます。
今咀嚼中なのでまた改めてじっくり考えコメントを入れたいです。
投稿: nao | 2016年10月 3日 (月) 21時59分
今のところ先進国と呼ばれる国がインフレになることはほとんど不可能なのだと理解しています。それと最後のほうの内需の活性化にのためにやるべきことの①と③と⑤は自民党はやりそうに無いなと感じています。
もう少し気の利いたことを言いたいのですが、残念ながら今の理解度はこれぐらいです。
投稿: nao | 2016年10月 5日 (水) 20時52分
こんにちは
>お金はA銀行の当座預金口座からB銀行の当座預金口座に移動するだけですから、その行為だけでは全体の当座預金残高に増減はありません
信用創造ですね。この原理を理解できると、いわゆる国の借金プロパガンダとか全部消し飛んでしまうくらい大事な基礎教養なのですが、これが意外と分かりにくいようです。
「使ったカネは消える」という一種の妄想が世間に蔓延しています。もちろん私の財布から出て行った1万円札は、誠に残念ながら消えます(笑)が、誰かの財布の中に納まるだけの話で、こうやってカネが移動する度に消費税などの税金が発生するわけですから、税率を上げるよりも財布からカネが出ていくペースを上げるほうが、より効率良くかつ庶民に負担を強いずに税収を増やす最善の手段だと理解できるようになるのも、信用創造の原理を理解しているからです。
そのためにも、花咲か爺さんじゃないですが、政府が『カネまくど~』と国債を刷って公共事業などに投資する、いわゆるヘリマネを宣言すれば、カネを使ってもまた入ってくるという未来の安心感を国民に与えられます。
余談ですが、銀行が貸し出せるカネの総額は実質的に無限大だという話を友人にしたら、目を丸くされました。そこで信用創造の話をしたら、一応は納得してもらいましたが、同時に銀行は錬金術師であり利権の巣窟だというような印象を持ったらしく、銀行システムそのものを敵視するようになりました。
こういうルサンチマンは深層心理に植え付けられたものであり、テレビや新聞などのメディア、映画やドラマ、アニメなどの娯楽においても、しばしば銀行は悪者として描かれます。たいていは担保目当ての貸し剥がしや、困っている人への返済猶予拒否や融資の拒否などで、信用創造とは全く関係ないのですが、財産が有限である一般人と資本がほぼ無限の銀行との違いが妬みの根源なんでしょうけども、これらを一緒くたにしてしまうと事実が見えなくなります。
私は『信用創造がなければ銀行は低金利融資ができず、従って、借りる側は闇金のような篦棒な金利でしかカネを借りれない。当然、ローンなんか組んでも返せるわけがないから、マイホームやマイカーも全てキャッシュで買わねばならず、やっとマイホームを買えたと思ったら、すでに棺桶に片足突っ込んでた、というようなオチになる。あるいは自分で建てるか。いずれにせよ骨折り損の苦労になる。信用創造により庶民に至るまでが多大な恩恵を受けており、これを否定すれば原始時代の生活を余儀なくされるだろう』と言い、友人はハッと気付いたようですが、もとより頭の良い奴だったので理解も早かったのですけども、テレビなどにかじりついている人たちはどうでしょうか。
投稿: 硫黄島 | 2016年10月 5日 (水) 23時56分
「子供でも分からる」、という観点ならば「金本位制」と「管理通貨制度」の違い、そして中央銀行(日本では政府と日銀)以外、お金の交換はモノやサービスを作って売る(お金の獲得)、もしくはそれを買うしかない(お金の消費)、という事から「お金」を通じて「モノやサービス」の品質・量ともに向上することを目的としているという事を簡潔且つ明確に説明したほうが良いように思います。だからこそ経済が大きくなればなるほど、お金の量は多くしなければならないことも分かるはずです。
結局、それ以外の事柄は融通性や安定性、もしくは「搾取」を目的としているものなので、本質ではないので分かり難くしてしまうと思います。
投稿: Sura | 2016年10月 6日 (木) 00時46分
田中徹さんの『子供にも分かる財政の話』の本文に対して硫黄島さん、Suraさんの”援護射撃又は援軍補強”としてのコメントが投稿され、凄く充実したシリーズに成りましたね。素晴らしいです。
投稿: AZ生 | 2016年10月 7日 (金) 12時31分