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2016年10月 8日 (土)

子供には難解すぎる銀行の話

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今日は子供シリーズ第3弾で銀行の話をします。これが一番子供には難しいと思われますので、実際にはまた(経済)初心者向けとさせていただきますが、たまにプロでも間違った解釈をしている人がいるので、分かり難くても安心して読んで下さい。(笑)

ご存知のように銀行は企業や一般市民から預金を集め、その預金を投資したり貸し付けたりして運営をしています。だから一番大切なのは信用です。街でも一際立派な店構えにしているのはこけ脅しだけではありません。ここに預けておけば絶対に安心だと思わせなければならないのです。

さて、子供シリーズ第一回目の記事のコメント蘭で、日銀だけでなく民間銀行でも無限にお金を創れる(信用創造)と書かれていましたが、それは紛れもない事実です。しかし、疑問に思われる方もいるのではないでしょうか。そういう銀行がなぜ取り付け騒ぎを起こしたり潰れたりするのだろうか・・自分でお金を刷れば問題ないではないかと思われても仕方がありません。

しかし、さすがにそれは出来ないのです。以下にその理由を述べます。
銀行は預金残高の1%程度(預金の種類によって違う)の現金を日銀内の当座預金口座に預ければならないとされています。という事は当座預金残高さえ増やせば無限に信用創造をすることが可能だと解釈出来るのです。例えば1兆円預ければ今の預金準備率なら100兆円くらいまで信用創造をする事が出来ます。

預金準備率というのは国によっても違って、経済が過熱気味で引き締めたい国は率が上がります。中国などは20%以上もの高率なのです。いかに中国が引き締めていて、日本が緩めているかが分かります。つまり貸出しを何とかして増やしたい国が日本です。

ところで今は日銀の当座預金残高が300兆円くらいにまで膨れ上がっています。日銀が異次元金融緩和をしているからですが、これで行けば国全体で見れば3京円まで信用創造をする事が理論的には可能だという事です。殆ど無限と言えます。

ここからが肝心なところです。1兆円を日銀当座預金に預けているA銀行を例にとりましょう。その銀行に預けられている預金の残高が10兆円だとすれば、後90兆円貸出しが出来る筈です。

では担保余力も返済能力も十分ある人がやって来て10兆円貸して欲しいと言ったとします。その場合A銀行は「よろこんで~」と言うでしょうか? 否、言えません。おかしいですねえ、90兆円も貸出し余力があるのになぜでしょうか?

その借り入れる人がず~とその銀行に、その借り入れた10兆円を預金しておくならそれでいいかもしれませんが、その人は何かを買うために、あるいは投資をするために借りた訳ですから、誰かに支払わなければならないのです。

という事は銀行側に10兆円の現金がなければ成立しない事になります。もしあるとすれば、その現金は日銀の当座預金を通して、相手側の取引銀行に振り込む事になるのですが、その場合も相手銀行、例えばB銀行の日銀当座預金口座に振り込む訳です。一回目の記事で日銀当座預金残高は銀行間の取引では増減しないと言った理由がお分かりでしょうか。

次にA銀行が10兆円の現金を保有していない現実的なケースでの資金の流れを説明します。A銀行の資産の部の内訳は1兆円の日銀預け金(現金)+9兆円の有価証券その他+今回の貸し出し残高10兆円で計20兆円でした。

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負債の部が従来からの預金10兆円+新規に貸し出した10兆円の預金、計20兆円で、資産と負債がバランスしています。この場合の銀行の資本、純資産はややこしくなるので計算に入れていません。実際には預金残高の8%以上自己資本が必要であるとBIS規制で定められています。(国際決済銀行の場合)

さて、A銀行から借り入れをした人(Cさん)が設備投資のために10兆円丸々引き出してB銀行に振り込みたいと言ってきました。するとA銀行は現金10兆円を準備しなければいけないのですが、さっき言いましたように9兆円は有価証券その他です。

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それらを瞬間的に売る事が出来れば現金10兆円は調達可能ですが、日銀の準備預金にまで手をつける事になります。例え非常に無理してそこまでしたとして、残る資産は貸出し残高の記録10兆円だけです。つまり上の表でも分かるように、現金資産はゼロになってしまうのです。

負債の側に20兆円の預金残高があった筈だと言われるかも知れませんが、実は預金残高というのは印字された記録に過ぎないのです。その銀行に誰かがお金を預けたという記録が預金残高なので、B銀行にA銀行の資産の部から現金を振り込んだ時点でそのCさんの預金残高(記録)も当然ゼロになります。

現金はあくまでも資産の部にあるので、資産の部にないものは貸せないのです。実際にはそういう取引が銀行間で相互に行われるので、A銀行が支払に窮する事はないのかもしれませんが、最悪の場合は上に書いたような事もあり得る訳です。

つまり、理論的には無限に信用創造をして無限に貸し出す事は出来るのですが、ない現金は払えないという話です。その点、日銀は違います。有価証券を預かるだけで現金を何百兆円も創造出来るのですからもの凄いパワーではないでしょうか。

次回は銀行の続きと、お金は支払によって消えない、というのは本当なのか?というテーマで書きます。

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