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2016年12月 1日 (木)

日銀の窓口指導によって蘇る日本

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 いつの間にか師走も迫り、忙しくなりつつある今日この頃、ブログの更新もままならず、お約束の回答記事が遅くなってしまいました。なぜ日銀が窓口指導をすれば景気が良くなりデフレ脱却も出来るかというテーマです。

このお金にまつわる話、そもそも論から始めなければなりません。まず、お金はどうやって作られるのかを考えます。例えばいきなり新しい国が出来たとして、その国の通貨を誰が何の権利で、何を担保に発行するかを明快に答えられる人は少ないのではないでしょうか。明快に答えられるなら、日本が今のような状況になる事は考え難いです。

自立した主権国家である場合、普通に考えればその国の政府がお金を発行する事になります。それは政府自身かもしれないし、政府の代役をその国の中央銀行が務めるかもしれません。いずれにしても民間が勝手にお金を作る事は出来ないのです。

それは主権国家に認められた大きな権利と言えます。では何が担保になるかですが、金本位制でない今は、その国の付加価値供給力を担保にするしかありません。付加価値供給とは国民が売る事を前提にして何か価値あるものを生み出す事です。サービスにせよ物造りにせよ、何かを生産する行為が付加価値生産力で、物や材料そのものを指す事ではありません。

原材料には何の価値もないというのがこの考え方の基本になります。そりゃそうです。何もせず地中に眠っている物には何の価値もないのです。人間が掘り出して加工したりする事で価値がそれに付加される訳です。つまり付加された価値=付加価値です。

という事は、その国に天然資源があるかないかは経済とは直接関係ない事になります。どこから買おうが、人間が加工すれば付加価値生産としては同じ値になるのです。ただ資源を輸入するためのお金、すなわち外貨は別途必要です。

その場合は資源を買うために、その輸入に必要な外貨分の自国製品を売ればいい訳で、そうすれば物々交換と同じ事になり外貨が必要でなくなります。ご存知のように日本の場合、輸出の方が多い時代が長かったので無駄に外貨がたまっている訳です。これに累積した所得収支分を加えたものを対外純資産と言います。

前置きが長くなりましたが、これまでの経緯を見る限り日本の場合は外貨ではなく日本国内で使える円を増やす事が経済を良くするのは間違いありません。その為には政府が、使えるお金を出し惜しみしてはいけないのです。出し惜しみをすると必ずデフレになります。

日本の場合は抜群の付加価値創造力、生産力がありますから、それに見合った、いやそれ以上のお金を供給しなければならないのです。そこで今の金融システムですが、政府が直接発行する事が出来るのは硬貨のみと法律で定められています。1万円札等の日銀券(お札)は日銀でしか発行出来ません。

さらに日銀は金融緩和によって民間銀行が日銀内に持つ当座預金残高を増やすことが出来ます。その担保は有価証券でさえあれば何でもいいようです。コマーシャルペーパーでも社債、株券、国債でも構いません。とにかくそれらと引き換えに現金を作り出す魔法の力を持っているのです。

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(これを見ると日本がいかに出し惜しみをして来たかが分かる)

これにより通帳に印字された当座預金残高(現金)と日銀券の事をマネタリーベースと言います。ハイパワードマネーとも言いますが、これらが本当の日本のお金と言えるものです。これがどれだけあるかによって民間の貸出し限度、つまり金融資産総額が決まります。今は当座預金残高が300兆円以上もありますから理論上、預金準備率から見て3京円まで日本の金融資産を増やす事が出来るのです。

つまり政府の義務としてのマネタリーベースは既に十分確保されていると言えます。後は民間銀行次第という事になるのですが、経済が活性化しないのは民間銀行が貸し渋っているからだと言うのはここから来ています。

ところで日銀や政府にしても、いくらお金を持っていても使わなければ民間に行き渡りません。そこで財政出動の出番になります。例えば政府が国債を刷って銀行に買わせ、得た現金で公共投資をすると、買った銀行の日銀当座預金から国債購入で出て行った筈の資金が、どこかの当座預金に戻り、その銀行の預金残高を同時に増やします。

銀行にとって当座預金残高は資産に当り、預金残高が負債になりますから、銀行全体で見ればこれでバランスが取れる訳です。という事は財政出動は民間金融機関の預金残高のみを増やす事になるのです。他はプラスマイナスゼロなので、例えば10兆円の国債を財源とした財政出動は真水としての10兆円預金(現金)が増える事になります。

だから貸出しが増えない不況時には公共投資が必要という訳です。それによって整備されたインフラなどはおまけに過ぎません。マクロ経済ではそこは大して重要ではないのです。もちろん、この場合民間の金融資産が増えるという事は逆に政府の債務が増える事を意味するので、例の国の借金が~というバカ騒ぎに繋がっていく訳ですね。

では政府が負債を増やしたくない場合はどうすればいいでしょうか。その場合は民間が自ら負債を増やすしかありません。設備投資や個人で言えばローンを組む住宅購入です。銀行は無から預金残高を作る機能(信用創造)を有しますから、土地代以外は経済に直接貢献する事になります。つまりそれらの借入金が支払われる事によって有効需要に結びついていく訳です。

その貸出し総額が返済総額を上回ればマネーストックを増やす事になります。マネーストックとは国民の財布のようなものです。例えば年収500万円の一家の金融資産(貯蓄)が1000万円もあれば年間500万円の支出は何の抵抗もないでしょう。安心して使えます。

ところが貯蓄額が半分の500万円しかなければ、いくら年収が500万円でも全て使う気にはなりません。そこで450万円くらいにしとこうかという事になる訳です。これが消費性向として表れます。

しかし基本的に、GDPの対マネーストック比率は大きく変化しません。何か不測の事態が起きた場合は政府が補うからです。従ってGDPとマネーストックの関係、これをマーシャルのKと言いますが、ほぼ一定と言っても差し支えないのではないでしょうか。

だからという訳でもありませんが、今の資本主義システムでは企業も個人も積極的に借金(投資)をしてマネーストックを増やさなければいけないのです。よく無借金を自慢する人がいますが、誰かの借金によってそれが出来ている事を知るべきです。

確かに借金もせずに一生懸命働いて得たお金を貯めて行く事は素晴らしい事のように思えます。しかし皆がそれをやると誰が借金をするのか、つまり誰がマネーを増やすのかという事になるのです。借金は現資本主義の宿命と言えるのですが、それを認識している人(政治家)がいるとは思えません。

例えば、誰も借金をしなければ返済だけが進みますからマネーストックが減り始めます。それは先ほどの話からも分かるようにGDPを減らす事になるので結果として所得が減り、それが不安でさらに貯蓄をするとさらに所得が減って行くという悪循環に陥るのです。最後にはマネーストックが消えてしまうという恐怖を想像して下さい。

しかしながら、現実には借金をしようにも実際には持っている不動産の担保価値が下がってしまったので銀行はお金を貸してくれない、というケースは多いのではないでしょうか。物価だけでなく資産デフレが長く続いて手持ちの不動産価格は下がりっぱなしです。

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     (青線と黄線の差が土地の総額)

バブルの頃との比較では日本全体で1000兆円以上も下がっているのですから、これで銀行に貸せと言う方が無理です。おまけに不当に固定資産税まで取られるのですから地価は上がりようがありません。

さて、お待たせいたしました。(笑)そこで有効なのが日銀の窓口指導です。民間銀行は日銀に睨まれるのが怖いので何でも言う事を聞きます。バブルの前は日銀の窓口指導によって地価が不当に吊り上げられました。すなわちノルマ達成のためには少々ヤバそうなところでも貸しまくったのです。

バブル崩壊後は高金利を維持して窓口指導廃止ですから、企業はバタバタ倒産しました。91年から銀行の貸出し残高が激減し、マネーストックの伸びも80年代の9%から2%台まで激減したのです。

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(90年以降激減したMSの伸び/赤線M2 青線M3/犯罪の爪痕と言えるかもしれない)

そりゃそうです。思い切り地価が下がった状態で銀行も貸し出せる訳がありません。回収に走っても咎める事は出来ないのです。企業の方も資産価値が下がったのでバランスシートを良くするため返済に必死になります。これがバランスシート不況と言われた、失われた20年の正体です。

話は簡単です。80年代にやっていたような窓口指導を再開して貸し出しにノルマを課せば、あっという間にマネーストックが増えて名目GDPも上がりデフレは脱却出来るのです。それを知っている日銀は知らんふりです。アメリカ様のために低金利を維持し金融緩和を進めます。

残念ではありますが、安倍さんだけでなく、日銀も米のポチ、日本国民の敵と言えます。恐らくこれが事実です。

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コメント

ありがとうございます。でも難しいです。よく読んで後でコメントします。

投稿: 八丈島 | 2016年12月 3日 (土) 00時01分

 なんとなく理解できたような気がしますが、対外純資産とマネタリーベースから考えたら、スイスのように金融が活性化しないとこのデフレは脱却せず、日銀は銀行と金融を締め付けているのでデフレは脱却できないという印象を抱いています。
どう考えるのか受け取り方に自信がありませんが・・・。
今までの中では一番理解できたかもしれないように思います(私の思い込みかな?笑)。

投稿: nao | 2016年12月 4日 (日) 20時06分

naoさん、思い込みではありません。正しい解釈です。そこまで理解している人は少ないと思いますよ。政府や日銀が銀行を締め付けるので間接金融(貸出し)比率が減っているのです。数字が何よりの証拠です。

直接金融(証券投資等)ではマネーストックは増えません。つまり経済的貢献は殆どないのです。

投稿: 田中 徹 | 2016年12月 5日 (月) 09時55分

この内容は難しいところもあるので何回も読み返しています。肯定して貰ったことが嬉しかった事もありますが、ふと2・30年か40年長いと60年位で景気の波が上下していると思います。
 間違っているかもしれませんが、要は銀行の貸し出しが上がれば好景気となり、もしも銀行がこれ以上潰れるのであればアベノミクスは徹底的に失敗だと烙印を押されるのか興味があります。w(゚o゚)w。

投稿: nao | 2016年12月13日 (火) 22時45分

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