果たして米で、製造業の復活はあるのか?
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前回の続きになります。
トランプさんの日本叩きの話から脇道にそれて来ましたので、ちょっと戻します。トランプ氏は日本からの乗用車の輸入を問題にしているようですが、本当に実態が分かっているのでしょうか。疑問に思ったのは台数です。彼は日本からの輸入は数十万台に及ぶと言っていました。(笑)
いえいえ、そんなもんじゃございません。2.5%(乗用車)の関税をものともせず昨年で175万台です。米から日本へは2万台なのでその差は天文学的と言えます。いずれにしても貿易摩擦の頃は300万台を悠に超えていたのですから米自動車産業は大変でした。しかしそのせいで摩擦が起き、円高になり、生産拠点を米へ移して行ったのです。
今やその生産能力は米国だけで400万台に迫り、雇用も外資としてはもちろんトップです。これだけ貢献しても、そんな事は当然だとでも言うのでしょうか。そちらに対する言及は全くありません。因にメキシコやカナダからの輸入も入れると日本車のシェアは米車に迫る40%(昨年は660万台超)近くを維持しています。
私から言わせてもらうと、これらの全てが米に対する貢献以外の何ものでもないのです。輸出で稼いだドルは米国債という紙切れを購入する事によって米に還元していますし、クルマという資産も米に残り生産性の向上や市民生活を豊かにするという点でも大いに役立っています。さらに治安の悪い国で故障しない事は何より有り難い筈です。
豊田章男社長などは攻撃されるとすぐに米への投資を発表したりしていますが、そんな事だから足下を見られるのです。(笑)数々の脅しや意味不明の制裁金、捏造欠陥問題にもめげずに、これまですごく貢献して来たと、なぜ言えないのでしょうか。世界的大企業の経営者として、ウィットに富んだ反論を聞きたいものです。
トランプ大統領はまた、ビッグスリーからそそのかされて、排ガス規制や燃費規制を見直しかねない勢いですが、さすがにそれはまずいと言わざるを得ません。折角技術革新も起きていい流れになっているというのに逆行は返って自国の産業を弱体化させます。
ビッグスリーはアメリカ並に厳しい規制の日本への輸出はハナから諦めているのでしょうか?それとも日本に対しても非関税障壁だから排ガス規制を緩和せよ、と迫るとか。(笑)冗談じゃありません。
私はCO2などによる地球温暖化説をバカ正直に信じている訳ではありませんが、地球そのものを汚し、正常な自然の営みを破壊する大気汚染だけは許せません。どんどんクリーン化して将来に明るい見通しがあるから自動車の存在は許されるので、逆行するなら存在する大義名分が無くなります。
燃費に関しては化石燃料が無くなっても人は死なないので、どちらかと言えばどうでもいいのですが、排ガス、特に窒素酸化物とPMだけはもっと厳しく規制されるべきです。それを逆行させるなんて言語道断と言わざるを得ません。大統領の名を汚します。どうせ理由は「日本車に負けるから」に決まっています。(笑)
ただ私個人の見解に過ぎませんが、どんなにトランプさんが庇おうが、ずるい事をやろうが米車の未来は明るいとは思えません。特にあのバカでかいSUV系がバカ売れしている現状は異常です。とても持続可能とは思えないのですが、石油が無制限にあるからと言って限度っちゅうものがあります。それに頭悪そうだし。。(笑)
米は技術的な面でも製造業として限界があります。今後は電子部品がもっと増えて個別から集中制御、さらに近い将来AIが全てを制御し、不具合すら自動修復をする時代がやって来ますが、ソフトは出来たとしても、それに対応するハードウェアが独自で作れるのでしょうか。緻密なソフトにはそれに見合ったハードが必要になる事は自明です。
それも含めトータルに(グランド)デザインが描けるのは今のところ日本とドイツくらいしかありません。この話は自動運転に繋がっていきますが、前にお約束した話の続きとさせて下さい。エレクトロニクスのプロではないので大した話は出来ませんが、独断と偏見にお付き合いいただければ幸いです。
(ジウジアーロの最高傑作と言われる いすゞ117クーペ 今見ても十分美しいし古さを感じさせない。これが半世紀近く前に作られたのだから、デザイナーは何をやって来たのかと言われても仕方がない/いや、面目ない/笑)
そもそも全ての発端は電子制御技術です。半導体技術と言い換えてもいいのですが、日本がアドバンテージを持って開発して来た半導体技術が世界を変えました。日本で自動車に搭載されたのは1970年の、いすゞ117クーペが最初ですが、この場合はボッシュ製の電子制御燃料噴射装置でした。(笑)
その後30年近く、大した進化はなかったのですが、97年にエポックメーキングなパラダイムチェンジが行われます。何だと思われますか? えっ、そうです。世界初のハイブリッドカーであるプリウスの誕生です。
ガソリンエンジンとモーターを積み、モーター駆動用に搭載した二次電池に充電しながら最適な燃費環境を作り出すという複雑な機構を制御するのはバイワイヤしかありません。すなわち電子制御です。クルマのポテンシャルを一気に広げました。
何しろ機械式で確立されている「走る、止まる、曲がる」を全て電子制御にしてしまうのですからさぞ勇気がいった事でしょう。何かあった場合の保障を考えると大トヨタでさえ清水の舞台から飛び降りるくらいの覚悟が必要でした。しかしながらこれによって自動運転への道が開けたと言っても過言ではないのです。
このハイブリッド制御システムにハッキングする形で最初に自動運転を実現したのがグーグルですが、グーグルが使っていたクルマがトヨタのプリウスやレクサスハイブリッドだった事を見てもハイブリッドカーとの相性は悪くなかったようです。
(おいおい、マジかよ、と言いたくなるようなグーグルのテスト車、やはり人間の手がなければ事故は避けられないケースが多発しているらしい。)
しかしながらグーグルはクルマには素人なので、各々のデバイスの制御がどういう設計要件、思想、あるいはコンセプトで出来ているのかは知る由もありません。ハードの品質、スペックも含め、それらのポテンシャル、重要性がよく分からないままに手探りで試行錯誤を繰り返し現在に至っているのがグーグルの自動運転技術なのです。
生走行で集められた膨大なデータと蓄積された経験値の価値は認めますが、まともな自動車メーカーなら、真面目に相手をしたくない代物かもしれません。と言うのも、ITやコンピューター産業の分野では安全性というのは商品としての重要ファクターになり様がないのです。
従ってプライオリティは低いと言うか、余り考えた事も無いのではないでしょうか。実際、グーグルはテスト走行中に何度も事故を起こしています。それらから推測するに、決して自動車メーカーが涎を垂らすような段階に来ているとは思えません。
一方の自動車メーカーにとっての最優先項目は言うまでもなく安全性です。それも人が運転する場合には運転者の責任が大半を占めるケースが多いので、まだ無難なのですが、完全自動運転車となるとそうはいきません。
他のデバイスと違いプログラムを完璧にしてプログラムミスゼロ、つまり事故ゼロを目指す必要があるのです。そうでなければユーザーは納得しません。さすがにこれはハードルが高いです。
考えても見て下さい。半自動とは言え自分がハンドルを握っている場合の事故は、法的にも常識的に見ても運転者に責任があります。何かあったとしても100%メーカーの責任だという人は少ないでしょう。ところが完全自動でハンドルも無いクルマでの事故は全てメーカーの責任となります。
という事はソフトはもちろんハードだって他人任せには出来ないのです。しかも10年15年のスパンでその性能を維持する必要があるのですから厄介です。新車の間だけちゃんと作動すればいいというものではありません。
激しい運動を繰り返しながら夏の暑さ、冬の寒さに耐え、土砂降りの雨や雪にだって微動だにする訳にはいかないのです。そう思ったら正直やりたくないというのがメーカーの本音ではないでしょうか。(笑)
そういう自動車の経験がない IT 産業が完全自動運転のクルマを作る?? 私には寝言にしか聞こえません。怪我する前にすっこんでろって感じです。尤も要素技術のサプライヤーとして残る分には問題ないのでメーカーと組んで色々試みる事はよろしいのではないでしょうか。実際、グーグルもそういう方針に転換したと聞きます。
また長くなりました。次回この続きをやります。
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コメント
ジウジアーロの最高傑作と言われる いすゞ117クーペ 今見ても十分美しいし古さを感じさせない。
・・・ウン十年前、東京モーターショウ〔TMS〕にて117クーペを初めて見た時の私のビックリ度合いは凄く、眼の鱗x10枚位は落っこちました。ウーン、Gジウジアーロって人は若しかすると現代のミケランジェロではなかろうか!って思いました。実家に近かったので自由が丘のISUZUのディーラーとか環8の外車屋さん達、Porscheのミツワ・HondaのSF・Toyota等の目黒道り・・・を一周するのが習慣(週間)になっておりましたっけ。。。
投稿: AZ生 | 2017年1月27日 (金) 14時30分
果たして米で、製造業の復活はあるのか?
・・・十数年前、ロサンゼルスから真北へ1時間位ドライブした事がありました。30~50位の結構大きな各種工場群がありましたが、煙突から煙が出ている所は少なく、不気味な気配がしていましたっけ。もしかしてデトロイトもこの様な有様では心配です・・・なんて感じました。このままでは兄貴分のイギリス同様に工業国から金融とか保険とか観光立国へと脱皮(実体経済の衰退)するのかもしれない?!
まあ トランプさんの大統領就任を転機に、我が国日本も100年先までの国家建設(国柄を保ち、生き残る)を賭けて、経済活動・国防・外交・教育などの見直しを図る最後のチャンスなのでしょう・・・本ブログ提唱のTPP/消費増税 /カジノ解禁に反対します にプラスして個人的にはアメぽち・移民難民受け入れ反対を追加する提案を致します。いかがでしょうか。
投稿: AZ生 | 2017年1月27日 (金) 16時15分
AZ生さん
117クーペは私も乗っていましたが、人から振り返られるという点ではポルシェ以上でした。(笑)
米はエンタメをメインとした観光立国が向いていると思います。製造業はやめた方がいいでしょうね。
投稿: 田中 徹 | 2017年1月27日 (金) 19時47分
グーグルの自動車の覇権について友人と議論になったのですが、田中様から決定打をしていだいてこれで決まりです。ありがとうございます。
実は117クーペ弟が昔乗っていて私も運転したことがあります。車にキーを挿しエンジンをかけたときのその音が忘れられません。
投稿: 八丈島 | 2017年1月27日 (金) 20時05分
八丈島さん、私もこれまで40台近いクルマにオーナーとして乗って来ましたが、117の納車の時が一番感動しました。ああいうときめきが最近薄くなりました。
歳を取ったのか、クルマに魅力が無くなって来たのか・・・両方かもしれません。(笑)いずれにしてもデザインの力は大きいです。
投稿: 田中 徹 | 2017年1月28日 (土) 08時53分
Gジュジアーロって人(現世のミケランジェロ!?)がウン十年前の東京モーターショウにて、あるメーカーの展示ブースに飾ってある車両を見て、腕を組んで考え込んでいました。
その車両とは初代CITY(シティ)でした・・・へーッ ホンダって言う会社、オートバイでは世界ナンバー1だけど、クルマにも挑戦してきているなー。ギンギン高性能エンジンのS500とか世界初の無公害エンジンCVCC搭載のCIVICとかデザイン・コンセプト・メカはキチッとして100点満点なので目が離せないけれど、今回のHONDA車は背高ノッポで出してきている・・・うーん俺様でも凄いショックだな!未来のクルマはどう在るべきなのかな!ホントにショックだぜー・・・状態だったのでしょうね。
CIVICが国内で再登場するらしいですが、結構日本でもウケルかもしれません。スタイルがカッコ好いのに5人乗れて、ちょっと未来的。米国でも爆発的に増えて来ています。
投稿: AZ生 | 2017年1月28日 (土) 17時42分