緩やかに衰退していく成熟の国、日本(後編)
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前回の続きですが、焦点がボケて来ましたので軌道修正します。前回も言いましたように国の政策がまずいので日本は緩やかに衰退していくのかと問われれば、イエスと答えるしかありません。今のような間違った政策を継続して国が栄える訳がないのです。外需依存を続けて来た結果として世界一の対外純資産を持つに至った国が未だにデフレ不況に喘いでいます。これが何よりの失政の証拠です。
ここで唐突ですが数字を見てみましょう。日本は生産年齢人口がピーク時に比べて900万人も減り、さらに減っていく中、実質的には確実に経済成長して来ました。給料が減ったではないかと言われるかも知れませんが、それは確かです。(笑)しかし身の回りをよく見て下さい。
30年前と比較して圧倒的に便利で物は使い易く高性能に、しかも省エネになっています。クルマなどもカッコいいかどうかはともかくとして性能や出来映え、質感、あらゆるクオリティは抜群に上がっているのです。つまり量はともかく質は上がったのです。その質が円ベース売買価格に正しく反映されていればGDP倍増でもおかしくありません。
(購買力平価で見た日本の GDP推移/ドルベース これが一番実態を表しているかもしれない。85年当時との比較で3倍強に増えている。日本は成長しないというのはプロパガンダに過ぎない。資料/世界経済のネタ帳)
(購買力平価で見た米国の GDP推移/ドルベース 85年との比較で4.3倍に増えているが人口も31%も増えた事を考慮すれば、一人当たりの成長率は日本とほぼ同じになる。資料/世界経済のネタ帳)
前によくメディアに登場する著名エコノミストが、「これからの日本は成長より質だ、欧州を見習え」と言っていましたが、質を上げる事が成長そのものだという事に気付いていないのには驚きます。量だけ増やせばいいというのでは進歩は何もない訳です。進歩のない成長って、資源が有限である地球にいれば自滅への道でしかありません。当然日本はとっくの昔から質を上げて成長しているのです。
そこでまた為替の話です。日本の場合のデフレとは? 円高によってその増えた価値が相殺されてしまった事を意味するのです。逆に言えば円安のままならすごく給料も増えていた事になります。その場合でも海外から見れば何も変わりません。つまりドル換算すればいずれのケースも同じ値なのです。どちらが日本にとってメリットがあるかは明らかでしょう。
という事は乱暴に言えば、為替を固定すればいいという事になります。中国のようなドルペッグでしょうか。相手がトランプさんでは出来っこないじゃないかと言われるあなた、あまいです。簡単に出来ます。
輸出額と輸入額を同じにすればいいだけです。これで為替の影響は受けなくなります。尤も、今は所得収支の黒字の方が圧倒的に多いので経常収支をとんとんにしない限り固定化は望めません。つまり貿易収支は大幅赤字でも問題ないのです。
もし経常収支がとんとんになり、国際収支がプラスマイナスゼロになったら上がった付加価値は必ず物価に反映されていくようになります。ん? そう言えば、さっき言った数字はどこに行ったのかって? 失礼しました。これから出て来ます。(笑)
ところで日本は労働生産性が悪いなどとよく言われます。先日もテレ東のWBSで、あまり見かけないコメンテーターが日本はOECD加盟35カ国中で22位だ。ギリシャより低い、なんて残念そうに言っていました。本当なの?と首を捻る人も多いのではないでしょうか。これに関しては全く意味のない比較だと言わざるを得ません。参考にするだけアホらしいと言えます。
(産業によって労働生産性は大きく違うというのが分かるグラフ、従って順位を上げたければ生産性の高い産業にシフトすればいいのだが、それでは国の形、バランスが狂う、今の日本は一国で何でも完結出来るのが強みなので、そのバランスを変える意味はない。グラフの作成、本田康博氏/証券アナリスト)
失業率が20%以上とメチャ高い、しかも簡単にクビを切る国と比べてどうするのでしょうか。産業構造も違うでしょう。計算のベースである購買力平価も一国で見れば参考になるところは多々ありますが、多国間での比較の場合は適当とは言えません。途上国程通貨高になり、日本のような先進国は通貨安に修正されます。
そもそも一物一価と言っても日本の場合は丁寧さが違います。つまり同じ米を作るにも、かける時間や情熱が違うのですから、それを結果だけを見て同じ価値と評価する見方は乱暴過ぎます。等々言いたい事は山程ありますが、そこは前にもやりましたし横道なので今回はこれくらいにしておきます。
さてお待たせ致しました。本題に戻ります。(笑)余り知られていませんが、日本は、生産年齢人口一人当たりの実質成長率は2000年からの10年で平均1.5%もアップして来ました。先進国中トップクラスです。
だから何?と言われるかもしれませんが、それが意味するのは例え生産年齢人口が内閣府の言うように、このまま減り続けたとしても2055年には実質GDP588兆円に達し、国民一人当たりで言えば637万円にもなるという事です。
2015年が一人当たりで422万円なので約1.5倍です。その時の生産年齢人口一人当たりの付加価値生産量が1262万円に達します。立派に成長しているではありませんか。これなら言われているような社会保障問題はあり得ませんし、財政問題はもっとないと言えます。
因に内閣府によると2055年の日本の人口は9231万人、生産年齢人口4661万人です。総務省26年版のデータ(2055年の生産年齢人口4706万人)をベースにすれば、GDP600兆円/国民1人当たり652万円になります。
安倍さんがGDPを600兆円にすると言っている事は決して夢物語ではないのです。もちろんインフレにすればもっと早く達成出来る事は言うまでもありません。デフレがいかにアホらしく恐ろしいかという事が分かっていただけると思います。
(マネーストックの伸びを表したグラフ、90年を境に大きく減っている。オレンジ色がM2 青がM3 資料/日銀HP)
但し、これにはマネーストックの伸びが現状並みという条件がつきます。つまり現状並の2%くらいの伸びさえ継続すれば達成出来るのですから3%になればもっと成長出来るという事も言えるのです。
その場合伸びた分が物価上昇分になるのか実質成長分になるのかは、その状態にならなければ分かりませんが、日本の力を考えれば実質の方ではないでしょうか。ただ、ここを伸ばすのは政府の政策次第だという事を付け加えておきます。
このように冷静に計算をしてみれば、日本の問題は今言われているような構造問題や岩盤規制、?の付く労働生産性、あるいは人口減少ではないという事が分かります。ひとえに経済政策、金融政策の問題です。アメリカの方ばかり見ずに独自で内需拡大策を進めれば数年で解決するような問題なのです。
ついでにもっと言うなら、例えば人口が半分になれば国民一人当たりの富は単純計算で倍になります。そりゃそうでしょう。日本の国土が減る事は考え難いし、資源その他も今並とすれば取り分は倍です。という事は今の2軒分の土地建物に住み、クルマは一家に2台以上が当たり前の時代が来るのです。
生産量が今後も維持出来るのかと言われれば、先ほどの試算に加えてさらに今後はAI化、ロボット化が進みます。その結果、生産性が今以上に上がって来る事は自明です。つまり未来は間違いなく明るいのです。むしろ悪い材料が見当たりません。
人口が減っていくから日本が衰退する、などと訳知り顔でステレオタイプに言うくらい、くだらない話はないという事がお分かりいただけたでしょうか。何度も言うようですが、まともな政策さえ打ち出せば全くの逆の結果が生まれます。
「日本には何でもあるが希望がない」などと平気な顔で言うような政治家に政治を任せていると本当に衰退しかねません。人口減少はむしろチャンスなのです。安易に移民を入れれば生産性向上のインセンティブが働かず、そのチャンスを逸する事になります。
人口が減って一人一人が豊かになれば、また自然に人口も増えていくのではないでしょうか。将来に希望がないと言われて子供を作る訳がありません。まずは将来の希望を語れる人を政治家にするところから日本は出直しです。
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コメント
「日本には何でもあるが希望がない」・・・X
「日本には何でもあるがマトモな政治家・国際的な財務戦略・国防意識のある国民が極めて少ない」・・・◎
投稿: AZ | 2017年2月17日 (金) 20時09分