円の信認
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黒田総裁が次のように言いました。「日銀は通貨発行益を享受することができるので、日銀の信認が損なわれることはない」と。
もし、それが正しいとするならば、独自の通貨を発行している国は、どこも財政破綻する訳はないし、過去、日本だって財政破綻が起きることなどあり得なかったのです。でも、実際には破綻しているでしょう?
どんなに通貨発行益を得ることが理論的に可能でも、国民が自国通貨を見向きもしなくなれば…すなわちインフレが酷くなれば、やはり中央銀行の信認は毀損したということになるのです。
(就任以来金融緩和路線をひた走る黒田総裁、あまり賢明な策だとは思えませんが、それ以外させてもらえないのかもしれない)
先日の財政の話の続きのようになりますが、こういう極端な話で相変わらず危機を煽るタチの悪い人がいます。どんだけ危機が好きなんでしょうか。嬉々として危機を煽っている様に見えます。(笑)これで元大蔵省の官僚ですから驚かざるを得ません。
その結果、それを信じた人がどういう行動を起こすかという事には考えが及ばないようです。そんな事は知った事ではないとでも言うのでしょうか? かなり無責任です。
私は思わず自問自答してしまいました。日本の財政破綻? ニクソンショックで金本位制が終わり、管理通貨制度に移行してからあったかなあ? ある訳がありませんね。国民が円を見放すというのも妙な話です。ドルでスーパーに買い物に行くと言っても相手が受け取りません。どう考えても根拠のない煽り記事としか思えないのです。
金本位制の時代なら分かりますよ。沢山の人が札束を持ち、金(GOLD)との交換を要求して押し寄せたならパニックになります。1946年のように預金封鎖もあり得るというものです。でも今は金(GOLD)なんて関係ないし、戦争直後の物のない時代でもありません。
これまでの財政破綻の例で言うと、管理通貨制度に移行して以来、国が破綻するのは韓国やギリシャを見ても分かるように外貨不足が原因です。海外から厳しく返済を迫られデフォルトするというのはよくあります。
ところがそういう状態でもなく、単に自国通貨の発行し過ぎで財政破綻したというのは聞いた事がありません。まさかジンバブエがあるじゃないか、なんて言わないでしょうね。(笑)
供給力も技術力もない国と一緒にする意味はありません。ではかつて世界第4位の経済大国であったアルゼンチンはどうでしょうか。2000年頃破綻しています。最近もまた危険水域に入っていて凄いインフレになっているようです。
この国はジンバブエよりははるかにまともと言うか、資源や産業もあってしっかりした国に見えますが、こちらは90年代に自国通貨を発行し過ぎて数千%という大変なインフレに見舞われたようです。フォークランド紛争も影響したのでしょうか。
(アルゼンチンの経常収支の推移、破綻後通貨安、IMF融資などで持ち直したが、リーマンショック後また落ち込んでハゲタカに狙われる)
この数字だけを見ても日本のケースとは全く異なる事が分かります。日本は自国通貨発行をむしろ抑制しているのです。デフレが続いている事がその証拠です。さらにアルゼンチンの借金(国債)はドル建てで、しかも海外に買われています。そのため通貨高を維持しなければならず中国などとは逆の意味でのドルペッグを続けました。
その結果は輸出競争力をなくし増々外貨建て負債が広がっていきます。そこを禿鷹ファンドに狙われた訳です。そもそも外需依存の国が輸出競争力をなくし、外貨建て借金に頼らざるを得なくなったのですから、日本とは真逆です。グローバリズムの犠牲者とも言えます。
常識的に考えて、普通は多少インフレになっても目先の破綻を避けて政府は通貨を発行します。財政ファイナンスと言って均衡財政派は嫌いますが、日本はそれすらしていないのです。日銀が金融緩和で金融機関から日本国債を買っているのは今のところ、その財政ファイナンスにはなっていません。
なぜなら日銀の当座預金にいくらお金が溜まっても、肝心の借り入れが増えなければマネーストックも増えないからです。ここが分からない人が多いので難儀します。ちょっと考えれば分かりますが、円が増えない状態では消費も増えようがないのです。過去のデータもそれを証明しています。
その国民の財布とも言えるマネーストックを手っ取り早く増やすのが財政出動です。政府が建設国債等を刷って資金を調達し、公共事業などでお金を大量に使う事で新たな有効需要が生まれます。これは世界の通説です。と言うか経済の常識です。
あるいは民間が設備投資や住宅ローンなどで負債を増やしてもいいのですが、不動産の担保価値が下がったままの今は銀行が貸しません。従って民間の借り入れ残高はややじり貧と言ってもいい状態なのです。その場合政府が負債を増やさなければ経済成長はあり得ないのですが、なぜかそこは皆スルーします。政府も公共投資を半減させたまま増やす気配がありません。
それどころか、言うに事欠いて金曜日に早く仕事を切り上げれば消費が増えるなどと間抜けな事を言い出す始末です。頭は大丈夫かと言いたくなります。使えるお金の総額が変わらなければ金曜日に使った分は土日に節約するしかありません。(笑)
構造改革や規制緩和もこの類いのもので、いくらやっても消費は増えません。それどころか供給側を刺激してしまうのでデフレが進みかねないのです。日本が採るべき政策と真逆と言えます。残念な事に今までの政権は皆これをやって来ました。アベノミクス然りです。
(日本の経常収支推移 経常収支が万年黒字の優等生国家日本、これが続く限り円の信認は損なわれない=日銀の信認、従って黒田総裁の言う事は正しい。)
万年経常黒字国の優等生国家日本の場合は、まだまだ自国通貨を増やす余地があるのです。つまり自国通貨の円に対する信認が他国に比べ圧倒的なので、その円を発行出来る日銀の信認が揺らぐ事はない、と黒田さんは言いたかったのです。
円増刷の場合は必然的に円安に振れますが、円安だと増々経常黒字は増える事になります。所得収支の黒字の方が貿易黒字より多い今はそういう構造と言って差し支えありません。円安による輸入額増加分を所得収支の黒字が補って余りある構図です。
そうなるといくら通貨(円)を発行しても円安に歯止めがかかるので円高下でのインフレ(成長)という経済の一般常識とは逆の事が起こり得ます。つまり、これこそが現資本主義経済下での最強の図式なのです。
その状態に日本が達する事を恐れる国が日本を押さえつけているので、間違ってもインフレにはならず、財政破綻もせず、なんか中途半端な状態が続く訳です。(笑)この状態が持続可能かと言われれば・・・答えたくもありません。
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コメント
安倍首相やその周辺の人はこのことを理解しているのかなあー、と思います。責任は財務省なのか、それとも国際金融筋のようなところからの指示なのか。
また安倍さんの移民政策も外国メディアのインタビューで「乞うご期待」と言ったのが誰に向けて言っているのか気になります。田中様はどう思います。
投稿: 八丈島 | 2017年3月 1日 (水) 21時53分
八丈島さん
政府の上の方の人が知らない筈はありません。優秀なブレーンがついています。思うように出来ないのは某国からの圧力があるからです。トップは代わっても油断は出来ないのでしょう。
結局、何かとバーターでなければ何も得られないのだと思います。中韓に強く出るときは移民を引き受けるとか・・だからいつまで経っても歴史認識と同じでスッキリしないのです。
海外メディアのインタビューは当然ご主人様に対する発言でしょう。間違っても日本国民に対してではありません。
投稿: 田中 徹 | 2017年3月 1日 (水) 22時10分