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2017年3月14日 (火)

未だに欧州メーカーを擁護する自動車評論家

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先日自動車評論家と雑誌記者の対談記事を読んでぶったまげました。まだ欧州車の肩を持っている人がいるのです。(笑)散々これからはクリーンディーセルの時代と言って欧州上げをして来た手前、急に手のひらを返すことが出来ないのでしょうか。EVやPHVでも日本の方が遅れているという発言には唖然と言うより慄然としました。

以下抜粋

記者:1990年代後半にトヨタ、ホンダの日本勢はHVに、欧州勢はクリーンディーゼルに注力するという別々の道を歩みましたが、今振返り、どちらの選択が正しかったとお考えですか。

評論家:結局は両方間違っていたんだと思いますが、ヨーロッパ勢の方が、対処が早かった。ディーゼルをやっていたが故にエンジンの限界みたいなものを彼らは見たのかなと思います。

はあ〜両方とも間違っていた???(笑)呆れてものも言えないのですが、日本のメーカーの方がディーゼルの限界を知っていたのです。だからこそ90年代に無謀とも言えるHV(ハイブリッドカー)に挑戦しました。どちらの選択が正しかったかと言えば日本に決まっています。これ以上明々白々な事はありません。

欧州は米でVWのディーゼル車のインチキがバレたので急にEVだ、PHVだなどと言い出したのです。なんだかんだ言い訳していましたが、結局厳しい規制であるユーロ6をクリアするだけのディーゼルエンジン技術がない事が露呈しました。

そのクルマ史上最悪と言えるインチキのせいで欧州の大都市は悲惨な事になっています。ドイツだけでなくEU圏全滅です。特にフランスのディーゼル車比率は70%にも及ぶのでパリの空は最悪です。北京を笑えません。ボッシュの技術に頼りきりでしたからドイツこけたら皆こけるのです。

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(Nox や PM で汚染されたパリの空/2014年 これを見て、これからはディーゼルの時代と言っていた評論家は何を思う?)

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(お馴染みの北京の街、私の印象だと、これ程の時はそうないように思う。)

いずれにしても、日本のHV技術のお陰で選択の幅が広がり、欧州メーカーにも多大なヒント、恩恵を与えた事は事実です。ディーゼルからの切り替えも素早く出来るというものです。何より最も地球に貢献(汚染が少ないという意味)したのですから先鞭を付けたトヨタは賞賛されてしかるべきです。

日本は90年代以降、ハイブリッドカーに必要な二次電池、特にリチウムイオン電池を材料も含めて実用化し、モーター性能もステップアップして来ました。最近では重希土類を一切使わないネオジム磁石の高性能モーターまで開発されています。PHV、EVに必要な技術は全て日本が先行し、今も継続して圧倒的アドバンテージがあると言って過言ではありません。

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(慌ててPHVの開発に乗り出した欧州車 BENZ C350e PHV /  C200との比較で200万円アップ、290キロ増となるが燃費ではリッター当り3キロ(JC08)程しか伸びない。EV走行は30キロ、存在する意味があるのか?)

尤も、欧州のクリーンディーゼル技術も、はっきり言えば日本のデンソーからパクったものだし、現在乗用車用クリーンディーゼルで一番進んでいるのはマツダです。どの道欧州はこの分野(クリーン&省エネ)では日本に勝てないのです。

悔しいのでHV閉め出しにかかり、これからはEVとPHVだと言い出した、というのは見え見えで子供にも分かります。欧米人は見え方や紳士的な振る舞いに誤摩化されますが、我々が考える以上に子供っぽいのです。

さらにPHVと言いますが、HVがなければPHVもない訳で、HVを飛ばしていきなりPHVに行く事は出来ません。日本のメーカー各社(と言っても実質はトヨタとホンダ)がHVの可能性を限りなく広げたからこそ、その後の展開、例えばマイルドハイブリッドやPHV、さらにシリーズハイブリッド、レンジエクステンダーなどがゾロゾロと出て来たのです。

それに簡単にEV化と言うのも気が知れません。前にも言いましたように電力の供給には大きな問題が立ち塞がるし、それをクリアしたとしても普通乗用車クラス以上での商品としてEV化の見通しは全く立っていません。

テスラ(?)米でしか通用しないモンスターです。1000万円もするEVの需要がどれだけあるか、ちょっと考えれば分かります。考えなくても分かるか。(笑)それでも電池の性能が飛躍的に上がれば可能性があると言われるかも知れませんが、では具体的に何倍の性能になればそれが可能でしょうか。

現状をみてみましょう。30kwhの電池を積むニッサンリーフの性能が、モーター出力109ps で航続距離カタログ値280キロです。最高速度が140キロ程らしいのですが、もちろんこれで巡航は出来ません。車両重量は1480kgにもなります。

その価格が何と400万円ですから、買う人がいるのが不思議なくらいです。どう見ても貧相で、ぱっと見200万円以下のクルマにしか見えないのです。政府からの補助金や減税で実際に払う金額は300万円ちょっとになるそうですが、国からの多額援助がないと買えないようなものは商品として首を傾げざるを得ません。エコカーだからエコヒイキ?

さらに現実はそんなに甘いものではなく、カタログ値の航続距離280キロはメチャクチャいい条件が揃わないと達成出来ないのです。フラットな道、無風、気温20度くらいでエアコンが必要ない環境、ラジオ等の電装品も使わないなどの条件が揃ってやっとその数字です。

実際はその6掛けくらいで見るのが妥当でしょうか。そうすると170キロくらいです。ちょっと遠目のゴルフ場往復に黄信号が灯ります。(笑)真夏や真冬は赤信号! 特に暖房は危険レベルで、つけないで走る人が多いと聞きます。そうすると窓が曇るので真冬でも開けて走るとか。。

やはり余裕は必要です。HV並とは言わないまでもガソリン車の最低レベルは欲しい、となると実質で400キロは走ってもらわなければいけません。因に今のガソリン車は600〜700キロ走るのがざらです。

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(これを達成するのはかなり厳しいと思われるが・・)

実質400キロを逆算するとカタログ値は666キロになります。リーフで言えば電池の量が今の2.4倍必要です。しかしこれだと2トン近くにもなります。とても重過ぎて666キロは走れないので、性能を2.4倍にして重量を維持するしかありません。それでも1480kgの車両重量は変わらずで、どうも釈然としないのです。(笑)

人間と同じで、重くていい事など何もありません。部品の摩耗も早まるし、糖尿病も怖いです。(笑)そもそも安全とは言い難い電池を床下に300kgも積むなんて、電池運搬車じゃあるまいし、あり得ない考え方です。感電の恐れさえあります。大雨の時などは正に命がけです。

せめて電池の量を減らして重さを半分くらいにはしたいのですが、それだと150kgくらいダイエットしなければなりません。車両重量で言えば1330kg、これでもこのサイズのガソリン車より100kgは重いです。投影面積がほぼ同じで同じ出力のエンジンを搭載するニッサン・ウィングロードが1220kgですから、それに人間二人分の重量追加は痛いです。でもこの際我慢しましょう。(笑)

という事はトータルで電池の性能が5倍以上にならない事には最も走らないガソリン車と同等の性能が達成出来ないのです。さらにそれでも最高速での巡航は数分しか出来ません。ドイツでは欠陥商品だと言って怒られます。(笑)

毎日の充電も面倒だし、乗らなければ放電します。リーフの場合、経年劣化も激しいようで3年も乗れば新車の時に比べ、航続距離が半分くらいまで落ちるという話もあります。それらのハンデを克服してまで買おうというのは、高性能HVが存在する今、よく分からないのです。

ところで肝心な価格ですが、電池の性能が5倍なら価格も5倍でしょうか。技術革新や量産効果を考えると3~4倍くらいかもしれません。そうすると車両価格が800~1000万円(?) テスラのモデルSに肉薄します。とても普通の人が買えるような代物でない事はお分かりいただけるのではないでしょうか。

つまり電池の性能が例え5倍になったとしてもかなり微妙な商品でしかないという事です。いや〜ないなあ。(笑)当然同時にHVやPHVも電池の性能アップの恩恵を受けます。別にそれでいいじゃないですか。

そんなものがこれからの主流だ、と言っているような前科者メーカーや恥知らずの評論家は一体何を見て何を考えているのか? それより、ちゃんと地に足をつけて着々と進化している日本のメーカー(一部除く)を見習え、と言いたいです。

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コメント

最近、更新が早くてついていけません

 田中さん、さすが車の専門家大いに勉強させていただいております。
 今回の記事の最終部分で(一部除く)と有りますが、もしかしてそれは「ニッサン」でしょうか?ニッサンはゴン太郎の代になって、ニッサンの技術を欧州に流すパイプ役になったようで好きになれません。それで10億円の年報とは呆れます。
 日産の躓きは労組が経営に参加できるようになってからの事、日本人経営者の中途半端なやり方が問題を隠し、大きくさせたのです。シャープや東芝と似ています。いかにも日本人らしい「ヤワ」な大企業の経営者は迷惑の源です。
 40年ほど前にセドリックに乗っていましたが好い車でした。特にブレーキが気に入っていました。大年増のようにジュワ、ギューとしまるのです。正に乗り心地が好かったのを覚えています。

投稿: ナベ | 2017年3月15日 (水) 12時48分

すみません。最近暇なもので、つい書いてしまいます。
一部とはもちろんニッサンの事です。(笑)

投稿: 田中 徹 | 2017年3月15日 (水) 13時30分

先日長谷川慶太郎氏の新刊本にちょと目を通したら、これからはEVの時代で、三菱が先行していて三菱を買収した日産がトヨタより有利だと書いてありました。えーと思って読んでいたのですが、田中様の明快な解説でよくわかりました。長谷川さんももうお年ですかね。

投稿: 八丈島 | 2017年3月15日 (水) 15時03分

EVは米のZEV規制があるから皆作っているだけです。それがなければ手を出しません。コミューターとしてはあり得ますが普通車では記事にも書いたように商品にはなりません。

これは自動運転と同じで、我々の目が黒い内は無理だと思われます。遠い将来の事は分かりません。

ニッサンがトヨタより有利というのはビックリです。自動車評論家レベルの発言です。(笑)

投稿: 田中 徹 | 2017年3月15日 (水) 15時17分

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