間違いだらけの経済認識(金融篇)
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前回に続く形で今回も日本国債の話です。
その前に、日本は世界一の債権国とよく言われますが、対外純資産が339兆円(15年末時点)もある事がその根拠のようです。では海外に証券投資や直接投資などで貸している額と、海外から日本へ投資をされている額の差が339兆円かというと、実は全く関係ありません。
対外純資産の339兆円は資本の貸し借りの結果、記録ではなく、累積経常収支にキャピタルゲイン、ロスを加えたものに過ぎないのです。投資をしているかどうかは直接関係ありません。
ここがよく混乱するところですが、例えばある日本の企業が米国企業に対し1000万円株式投資をするとして、その為にはドルが必要になります。つまり1000万円の円と9万ドルを外為市場で交換し、そのドルで株を買う訳です。
この場合、海外債権が株券の9万ドルとなりますが、その会社の円資本が1000万円マイナスになり資本収支はゼロとなります。日本に居住している誰が海外に投資をしても、その分国内の資本が減るのでトータルで見ればプラスマイナスゼロにしかならないという訳です。
従って世界一の債権国という表現は適切ではなく、誤解を招き易いと言えます。対外債権が世界で一番多いのは言うまでもなくダントツで米国ですが、債務もまた世界一です。尤も、そんな事を競う意味はありません。(笑)
次に円建て国債と外貨建て国債の違いについて考えます。日本政府がなぜ円建ての国債しか発行しないのかと言うと、円しか必要がないからです。対外純資産が339兆円で外貨準備が1兆ドル以上もあるという事は外貨が余っている事を意味し、あえて国債を刷ってまで外貨を調達する必要はありません。
ではなぜ海外に円建て国債を売るのでしょうか。円以外は国内で流通出来ない、つまり外貨は無価値の国で、わざわざ円建て国債を海外に売って外貨を得るのはナンセンスです。
その外貨と円を交換して使うと言うならもっとバカげています。それならさっさと国内で売ればいいのです。金利が低いのは需要がある証拠です。本当に財務省が何を考えているのかさっぱり分かりません。
さてその日本国債、専門家でも勘違いされている人が多いのですが、前回も言いましたように日本国債は国内に売る限り借金と呼ぶのは間違いです。国債は言わば将来のお金ですから、準通貨と呼ぶのが相応しいでしょう。
帳簿上負債の側に計上するので、それを見て借金だと強弁する人がいますが、確信犯でないとすれば極度の経済音痴だと言わざるを得ません。誰に対する借金かを考えれば分かりますが、最終的に日銀が買ってしまえば返済の対象が消滅するのですから、返す相手がいないものを借金と呼ぶなんてどうかしています。
従って一番いい方法は日銀が国債を買った時点で政府の負債と帳消しにする事ですが、それだと日銀単独のバランスシートが債務超過になる、という理由で残すのでしょうか。だとすれば実に下らない理由です。日銀も政府と同じく営利団体ではないので、バランスシートの健全性を云々する意味は全くありません。
インフレ時の売りオペ用にとっておきたいというのであれば分からないでもありませんが、それにしたってまず引き締める程のインフレにする事が先決です。2%のインタゲも達成出来ない段階で、その必要はありません。
法律上政府と日銀間で国債の帳消しが出来ないと言うのであれば、その法律を変えればいいだけではないでしょうか。供給力に限りがあり、しかも金本位制だった時代に作られた法律に縛られる意味はありません。
(今年の2月末現在でマネタリーベースは436兆円、日銀当座預金残高は329兆円と増え続けている。反対に銀行の持つ国債資産の残高は減り続けている。)
通貨発行権を有する主権国家が、わざわざ国債を発行する事の意味は、ひとつはマネタリーベースが増え過ぎるのを嫌うからです。例えば100兆円のマネタリーベースがあるとして、10兆円の政府紙幣を発行すればたちどころに110兆となり、大幅金融緩和になります。インフレ時であればちょっと警戒しなければなりません。
それを嫌うならば、マネタリーベースを増やさない国債発行が無難と言えます。10兆円の国債発行によって、まずマネタリーベースが10兆円減の90兆となり、政府がその10兆円を予算執行などで民間に対し使う事で100兆円に戻ります。
民間企業の預金と、その取引銀行の日銀当座預金残高が10兆円づつ増えてバランスするからです。この方法(不胎化)だと円安にもならないので、為替操作の濡れ衣を着る事もない訳です。しかし、デフレ時のやり方として、これが正しいかと言えば、否というしかありません。
そもそも、政府は国民経済の規模に応じて十分なマネーを用意しなければならないのです。その意味はデフレなどもっての他という事です。やはり2~3%程度のゆるやかなインフレに持っていくのが健全と言えます。それが継続されるなら過度な円高もないし、土地などの資産価値が下がる事も防げます。
そう考えた時にアベノミクスの正体が見えて来るのですが、非不胎化という金融緩和の手段を使ってマネタリーベースを増やすなら、同時にそれに見合っただけの財政出動をしなければ意味がありません。さらに資産価値が上がるような政策を採る事ですが、規制緩和などで逆行しています。
その証拠に物価は上がっていませんし、給料はむしろ下がっています。これだと折角の通貨安が生きず、ドルベースで見た場合のGDPが下がってしまいます。それは国際的地位や影響力を低下させ、周辺国との経済格差を縮小させるので安全保障上も好ましくありません。
やるべき事は外需依存を改め、規制緩和や構造改革にも手をつけず、消費税や固定資産税の減税と巨額財政出動なのですが、子供手当を国債の発行なしでやると言ったり、未だに米抜きでのTPPをやるなどと言っているようでは見通しが暗いです。そこは森友問題などよりはるかに深刻です。
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