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2017年5月24日 (水)

誰がための自由貿易なのか(前編)

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---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

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22日のMXテレビ「ニュース女子」は出演者のレベルが今一で、内容的にもがっかりさせられました。あり得ない発言が続出です。今回はその、あり得ないが意外に突っ込まれない経済の話をネタにさせてもらいます。

その一番手はTVなどでも露出の多いエコノミスト、爽やか系の飯田氏です。トランプ大統領の掲げる保護主義的政策に対し、対極にある自由貿易には大きなメリットがあると言うのです。安倍首相始め政府も同じ考えで、米抜きでも自由貿易が前提であるTPPに前のめりになっているのはご存知の通りです。

飯田氏は、例えば200万円のロレックスを売りたい人が隣にいて、自分がそれを210万円ででも買いたいとすれば、両者にメリットがある、それが例え国が違っても原理は同じだから自由な取引、自由貿易が悪い筈がないと言うのです。

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(女性の多くは家計の論理から一歩も踏み出せないように見える)

一見もっともらしく聞こえますが、本当にそれは正しいのでしょうか。経済に度素人の私に言わせても、大きな間違いだと言わざるを得ません。そんな小難しい話ではなく常識で考えれば分かります。では飯田氏程の人がなぜそういう簡単な間違い、錯覚に陥るのでしょうか。

彼が言う「お互いにメリットがある」は、国内取引の場合に限るのです。その場合日本円で売買が出来るので何の問題もありません。しかしながら、ひとたび国境を越えると、そういう訳にはいかないのです。例えば米国人が相手の場合、ドルで支払ってもらう事になります。

この場合は未だましで、韓国ウォンならどうでしょうか。日本の金融機関は原則としてハードカレンシーではないウォンは受け取りません。従って予めドルか円に替えてもらう事になります。

という事は、相手国が円か基軸通貨であるドルを持っている事が大前提となる訳です。このように通貨には厳然たる価値の差があります。メリットがありそうだからと言って誰とでも気軽に取引が出来る訳ではないのです。

さて、外国人にロレックスを売った人は、国内では使えないドルを銀行で円に交換する必要がある訳ですが、その時の相場で円に替えます。一見問題なさそうですが、その円を誰が用意するか、あるいは価値を担保するかで状況は変わって来ます。

まず、ドルを受け取った銀行は外為市場でドルを売り円と交換しますが、市場に円の量が十分でない場合は中央銀行が円を新たに発行してドルと交換しなければなりません。その出来立ての円が、ドルを円と交換したい銀行の日銀当座預金口座に振り込まれるという訳です。

その場合、日銀当座預金の円の量(マネタリーベース)が増えるので、普通ならインフレを心配しなければなりません。それを防ぐ為には政府が同額の短期証券を発行して金融機関に売ります。そうすると当座預金の円が、増えた分減る事になり円の総量は変化しない訳です。

しかしこの場合、円が増えない代わりに政府の負債が増える事になります。つまり貿易黒字は政府債務を膨らませかねないという訳です。これが国内での取引なら政府の負債が増えることはありません。お金が金融機関を行ったり来たりするだけです。

では政府が短期証券を発行しない場合はどうでしょうか。その場合は非不胎化と言って、入って来たドルと同額の円が増えて正常な為替変動の機能を損ねます。中国がよくやっていたドルペッグと同じです。つまり為替の固定相場制に戻る訳です。そうなると米などから為替操作国と名指しされ、非難される事は免れません。

という事は、経常収支が黒字の場合でも基本的に円は増やせず、外貨であるドルだけが増えて行く事になります。ドルが相対的に多くなればドル安に動くのは必然です。これが円高の理由です。

円高になれば、企業は輸出競争力を維持するためにコスト削減に動かざるを得ません。そのコストとは突き詰めると全て人件費の事です。中間財にしても原材料にしても国内で調達すれば最終的に人件費に行きつくのです。

つまり企業のコスト削減は給料が下がる事を意味します。給料が下がれば消費が伸びません。ところが企業は生産したものを売り尽くしたいので価格を下げるしかなくなります。このパターンで日本は20年間もデフレ不況に苦しみました。

まとめますと、自由取引は個人間ではメリットはあっても、国という単位で見れば、そう単純な話ではなく、決してメリットがあるとは言えないのです。黒字の日本は円高デフレ不況になり、赤字の米は通貨安で米自体の価値が下がり、経常収支の赤字から対外債務国となってしまいます。

という事は、国家間でウィンウィンの関係になるには、200万円のロレックスを売る場合、200万円の他の価値あるものと交換するしかないという事になります。しかし、これでは自由貿易とは言えません。政府がそれを統制すれば共産主義のようです。

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(一度美味しい目にあった国は浪費癖が抜けないので何度でもデフォルトする)

ではEUのように通貨をユーロに統一して為替の変動がない場合はどうでしょうか。ご存知ドイツとギリシャの関係が生まれます。競争力のある商品を持つ国が、持たない国より儲かるのは必然です。その結果大幅黒字国と大幅赤字国が出来ます。ドイツ一人勝ちの構図が出来てしまう訳です。

しかしそれも借金をさせてもらえる間だけの関係で、債務国が利息さえ払えなくなると借金すら出来なくなります。そうなるとデフォルトしかありません。ラッキーな場合は借金棒引きです。(笑)

最悪は97年、アジア通貨危機の時の韓国です。デフォルトして日本やIMFから支援を受け、その代わり財閥解体等の内政干渉を受けます。挙げ句の果ては緊縮財政まで強いられる事になるのです。韓国にとって、これ以上ない屈辱的な出来事でした。

自由貿易の問題点はこれだけでは済まず、安全保障問題にも繋がります。少なくとも、世界貿易がゼロサムである事を考えると、規模を大きくすればする程、お互いにリスクが増えていくのです。

長くなりましたので、続きは次回にします。

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コメント

政府が同額の短期証券を発行して金融機関に売ります。そうすると当座預金の円が、増えた分減る事になり円の総量は変化しない訳です。

田中様このあたりもう少し説明してください。このあたりの説明を聞いたことがありません。

投稿: 八丈島 | 2017年5月24日 (水) 18時38分

>このあたりもう少し説明してください。このあたりの説明を聞いたことがありません。

前にも説明した事がありますが、珍しい話ではありません。

これは為替の円売りドル買い介入と同じ事です。円高が急激に進んだ時に政府はドル買い介入しますが、その資金(円)は政府短期証券を発行して市場から調達します。

そうするとマネタリーベースが一時的に減りますが、ドルを金融機関から買う事によって、その金融機関に円が供給されプラマイゼロになります。

これを不胎化介入と言います。

投稿: 田中 徹 | 2017年5月24日 (水) 21時53分

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