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2017年5月29日 (月)

誰がための自由貿易なのか(後編)

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---日米 FTA消費増税 /カジノ解禁に反対します ---

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 【タオルミーナ(イタリア南部)大久保渉】
主要7カ国(G7)首脳会議(サミット)は27日、最大の焦点だった貿易について「保護主義と闘う」と明記した首脳宣言を採択し閉幕した。米国第一主義を掲げるトランプ大統領は保護主義に関する文言を盛り込むことに難色を示し、調整は難航したが、最終的には容認に転じた。一方、地球温暖化対策の新たな国際的枠組み「パリ協定」を巡っては、離脱を検討中の米国を除く各国が推進を表明し、意見の一致はみられなかった。


 保護主義と戦う、という意味はもちろん自由貿易を推進する、です。G7に名を連ねる先進国が揃いも揃って、なぜそういう愚かな事を言うのでしょうか。前回も言いましたように自由貿易は、その国の主権を侵害しかねません。やり過ぎると国境のない世界になるのです。

だというのに国境が存在する事で、その恩恵を最も受けている先進国が、なぜそんな矛盾する事を言うのか、本気で言っているとすれば気が狂っているとしか言いようがありません。

G7

(人を押しのけて前にしゃしゃり出て来るトランプ大統領、イメージ通りのヤンキーぶりと言える)

G7で唯一、トランプさんだけが主張する保護主義とは、自国の産業を守りたい、雇用を支えたい、という当たり前の考えによります。それがなぜ否定されるのか私には分かりません。

国際的には弱い産業でも必要な産業は山ほどあります。それが価格競争力がない、あるいは労働生産性が低いという理由だけで消えてしまったら、国として成立しません。

もちろんメリットを受ける人達はいます。そうです。世界を股にかけてビジネスをしている多国籍企業です。彼らにとっては国によって法律が違う、あるいは生活習慣が違うなどというのは邪魔以外の何ものでもないのです。

従って世界から国境がなくなり、法律が統一され生活様式まで同じになるのが望ましい事は言うまでもありません。通貨も統一される事がベストです。ユーロを統一通貨としたEUが上手くいっていないようにみえるのは国境があるからに他なりません。

つまり、何もかも自由と言いながら決算が国単位では上手くいく筈がないのです。ある意味一番悪い形かもしれません。総合的な国力で一番競争力のあるドイツが美味しい目に遭うのは必然です。

EU共通の通貨ユーロの為替レートはEU平均の競争力を表します。そうなるとドイツにとって実力以下のレートである状態が日常となるのです。それはEU圏だけでなく、世界が相手の場合でも輸出競争力において有利である事は言うまでもありません。

一方、EU圏以外からの輸入にはブロック経済の必然で制限がかかります。ドイツの輸入の8割がEU圏からである事がその証拠です。正にいいとこ取りなのです。貿易黒字が世界一になっても何の不思議もありません。

おまけに利益の大半は自国通貨とも言えるユーロですから、日本のように外貨が溜まり過ぎて困るという問題はありません。これはEU加盟国以外から見れば、とてもアンフェアに映ります。

しかしこのシステムが持続可能でない事は、ギリシャの破綻やブレグジットで露見してしまいました。では今後どう修正されて行くのでしょうか。EU解散か、あるいは国境の消滅か・・私は遠い将来的には国境消滅の方向に向かうのではないかと危惧しています。

その方がグローバリズムを推進する企業、勢力にとっては都合がいいからです。その勢力は決して表には出て来ません。G7で各国首脳が何かを決めているように見えるのは、代理人が仕事をしているだけの事です。彼らが国際的に何か重要な事を決めるなんてあり得ないのです。

日頃から保護主義を主張し、メディアからも総すかんを食っているトランプさんだけは代理人でない可能性があります。ロシア絡みなどのスキャンダルが色々出て来るのはその証かもしれません。

ところで話は変わって、前回の続きになりますが、世界に5000万台の自動車を供給する方法として一番合理的で無理がなく摩擦も生まないのは現地生産です。今の2000万台を倍にする事は不可能ではありません。

直接投資で生産拠点を世界中にちりばめれば、世界への貢献は計り知れない事になります。直接投資は株式などの間接投資と違って現地に根付きます。利益が出てもその大半は再投資となるのです。

現地生産をするという事は、現地に継続的にメリットを生まなければ意味がないからで、部品の現地調達率などにもチェックが入ります。という事は、現地にサプライヤーを育てる事になるのです。もちろん技術も移転させます。

Bangkok

   (日本人専用の店が多いタイの歓楽街)

そうすると、その周辺に新たな産業がコバンザメのように、どこからともなく現れて、くっついて来るのです。どんどん付加価値の生産量が上がって来るという訳です。日本企業が現地で産み出す付加価値がGDPの半分にも達するタイなどにその構図が如実に表れています

その結果は目覚ましい経済発展を遂げました。すなわち日本などの先進国が途上国へ投資をすると経済発展の速度が加速し、先進国を目指して大きな回転を始める訳です。昔の植民地主義とは大きな違いで、宗主国が奉仕をするのですから変わったものです。

しかし、これによって先進国の相対的貧困化、途上国の富裕化が促進され経済格差が縮小されます。昔はタイ人の観光客なんて見た事もなかったのですが、最近テレビを見ていても結構目につくようになったのはその表れなのです。

日本の直接投資で輸出競争力がつき、物々交換レベルでしかなかった貿易が変貌、ドルや円などの外貨を大量に得るようになります。その外貨で日本製品を買ったり日本に観光に来る訳です。

言うなれば日本という大ダコが自分の足を食べさせて大きくなった小ダコが、今度は自分の足を食べさせに日本に来る、と言ったら不謹慎でしょうか。(笑)元々は我々の足が廻り廻って戻って来るだけの事で、それを有り難がるというのも、ちょっと複雑です。

長くなりました。また次回に続きます。

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